親愛なるお友達(8月エッセイ②)
唐突だけどスパイダーマンが好きだ。
サム・ライミ版からトム・ホランド主演のスパイダーマン、アニメ映画のスパイダーバースも自分にとって大好きな作品になっている。
どのシリーズでも、スパイダーマンたちが最後には前を向いて進んでいくところが好きだ。
特にトム・ホランド主演の3作目ノー・ウェイ・ホームでは、救おうとした敵の裏切りによって大切な人を失い、最終的に決着はついたものの親友と恋人には存在を忘れられてしまう。それでも最後には、事件を聞きつけ、スパイダーマンとして現場に繰り出していく姿が描かれて終わる。
辛いことがあった時、立ち上がることができないこともあるかもしれない。きれいごとに嫌気が差して、ポジティブな落としどころが見つけられずに、塞ぎこんでしまうこともきっとある。
けれども、それでも前に進む人がいるということは心に留めておきたいと思う。
またノー・ウェイ・ホームでは、大学進学の道を断たれたものの、高卒認定を受けようとしている様子が伺える。
大学時代、僕は弁護士を目指して法学部に入学した。でもそのルートを早々に挫折した。コロナ禍もあって、アルバイトもサークルも大学生らしいことを満足に行えずに、ずっと下を向いていた記憶がある。塞ぎ込んで何もしていない時期はほとんどなかったけれど、コロナさえなければと思うことは多々あった。なんか足掻いているけど、前に進んでいる感覚が全然無かった。
そんな時期に高校を中退した友達から、高卒認定を受け、一浪を経て、大学に入ったという報告を受けた。楽観的だけど、人を否定しない良いやつだった。久しぶりに会って飲もうという話になった。2軒目に行くお金はなかったので、下世話な話をしながら川辺を歩いて、喫煙所を見つけたら2、3本タバコを吸うのを繰り返した。
そいつは2年ほどで大学も中退したけど、最近久しぶりに会ったら、前よりもエネルギーに満ちている感じがした。今度USJで働くことになったらしい。話があまりにも急で驚いた。
一緒に飲んだ焼肉屋さんで、店員と一緒に掛け声をしなくてはいけないメニューがあった。そのことにメニューが来てから気づいて、しまったと思った。だけど、彼は笑顔でノリノリで掛け声を出していた。なんなら、手まで振っていた。
最近始めた就活もそれなりに上手くいっていて、有名なホストクラブの2次審査まで通った話もされた。自分からしたら人生の起伏が大きすぎる。でも以前よりも彼が圧倒的に前向きに生きているような気がした。
USJにはもうスパイダーマンのアトラクションはないけど、働き始めたら遊びに行きたいと思っている。
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