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【2年目の勝負 JAPAN CYCLE LEAGUEに参戦 レバンテフジ静岡 チーム代表兼監督 二戸康寛氏】 SURUGA Cycle Journal Vol.64

2020年12月、波乱の初シーズンを終えた二戸さんがスルガ銀行御殿場東支店に併設する御殿場サイクルステーションに遊びに来てくれた。シーズン中は新型コロナウイルス感染症の影響でお会いすることができなかったのでほぼ1年ぶりの再会だが、じつはゆっくりお話しするのもほぼ初めてなので、今回じっくりと近況をお聞きした。

静岡県初のピュアプロサイクリングチーム

2020年1月、二戸さんは富士市内に事務所・合宿所を構えるプロサイクリングチーム「レバンテフジ静岡」の代表兼監督に就任した。静岡県東部・伊豆地域を活動拠点に、国内最高峰の自転車ロードレースに参戦しながら、将来的にはアジア圏で開催される国際大会への出場も視野に入れての船出だ。自転車ロードレースといえばあのフランスでの国際大会が有名だが、昨今では、ヨーロッパ発のメジャースポーツであるロードレースが日本国内でも身近になりつつある。

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▲レバンテフジ静岡のホームページより

「地元にプロスポーツチームができる!」と静岡県内は歓迎ムード。静岡県にはJリーグのチームがいくつかあり、地元の人たちから愛されている。県民は、プロスポーツチームがあることで地元が活気づくことを経験しているので、レバンテフジ静岡に対する期待値は高い。そんな背景もあって、チーム発足後は県内の多くのメディアから取材があり、追い風が吹いていた。まさに「レバンテ=(イタリア語で)東風」だ。

サッカーファンも興味津々

2020年12月20日(日)愛鷹広域公園多目的競技場、J3リーグ第34節「アスルクラロ沼津×カターレ富山」の試合会場で、レバンテフジ静岡の紹介ブースを出展することになった。

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地元に発足したプロサイクリングチームにサッカーファンがどれだけ興味を持ってくれるかのトライアルだった。冬晴れの沼津市、試合開始の3時間前(AM10:00)からアスルクラロサポーターたちが会場に集まり始め、すぐに敷地内はアスルクラロカラーのブルーに染まった。まさにホームゲームの雰囲気である。サポーターのチーム愛にちょっと圧倒されつつも、「ああ、ロードレースもこれくらい人気が出たらいいなあ」と、うらやましく思ったりもした。

この日、レバンテのチームのみなさんには他の用事があり、紹介ブースはスルガ銀行で運営した。紹介ブースには、「そもそもロードレースとは」「チーム紹介」「選手紹介」などのパネルを並べ、レース機材(自転車)も展示。

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始まってみると、紹介ブースには切れ目なくサッカーサポーターたちが訪れてくれた。やはり地元愛が強い方たちなので、スポーツの種目を問わず、新しいプロスポーツチームができたことにとても好意的だった。「レバンテのサポーターになるにはどうしたらいいのか?」「2021年のレース日程を教えてほしい」など、グイグイと具体的な質問もいただいた。また、実際のレース機材の軽さにはみなさんとても驚いていた。ちなみに重さは7kgほど。

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コロナ禍は自転車競技にも影響

さて、2020年シーズンのことに話を戻そう。チーム発足から3か月後、新型コロナウイルス感染症によって国内では緊急事態宣言が発出され、チームが出場する予定だったレースの多くも相次いで延期(または中止)となった。チームの初シーズンなので、ひとつでも多くの経験値を積みチームを成長軌道に乗せたい中で、焦燥感と歯がゆさが交互に押し寄せるシーズンになったのではないだろうか。

初シーズンは、将来有望な若手を中心とした選手8名体制でスタートした。そのうち静岡市出身でエースの佐野淳哉選手は、全日本自転車競技選手権大会ロードレース優勝の実績を持っており、豊富な経験と高い知名度から、チームの精神的な支柱であり、広報担当的な役目も果たしていた。4月に開幕予定だったJプロツアーは延期となり、選手は外を走ることもできなければ先行きもわからず、ストレスの溜まる状況だっただろう。コロナ禍でバーチャルサイクリングシステムと室内用走行練習マシーンを組み合わせる疑似サイクリングが世界的に流行し、選手たちも疑似サイクリングによるトレーニングに励む日々を送った。二戸さんも選手も経験したことのない事態に、トレーニング方法も手探りの連続だっただろう。

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新たな生活環境

本拠地となる富士市にはチームの合宿所があり、二戸さんと選手4名が共同生活を送っていた。チーム作りの上で、選手に近いこの状況はメリットが多いだろうなと思って聞いてみると、「ストレスが多かったですね」と二戸さん。「自己管理ができていない選手に対しては指導をしたいのですが、プロ選手として本人の考えも尊重したいと思いますし、度合いが難しいですね」と、同居することで選手の生活が見えすぎてしまうデメリットが前面に出てしまったそう。また、我々が職場の世代間で感じる「ジェネレーションギャップ」もあるようで、「人材育成」は業界を超えて日本全国共通の悩みのようだ。

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二戸さんとしては、積極的に選手を管理したくはないという。プロ選手として高い意識で自己管理をし、チームとして集まったときは団結する意識を持ってほしいと期待する。選手の自主性に任せるか、管理を強化するか、チームマネジメントでは常に悩んでいるようだ。コロナ禍の共同生活は、選手を間近で見たことにより新たな悩みも生まれたが、7月下旬にはレースが開催されるようになり、10月の最終戦までの戦いを通して、すでに二戸さんの中では2021年シーズンの戦い方は決まっているようだ。

新リーグ「ジャパンサイクルリーグ」への参戦

2021年、日本のロードレース界は大きな転機を迎える。新たなプロサイクルロードレースリーグ「ジャパンサイクルリーグ」が発足するのだ。新リーグのスローガンは「地域創生」で、ホームタウンを持つ地域密着型の9チームが加盟を表明している。レバンテフジ静岡もそのひとつだ。加盟チームには3年以内にジュニアチーム、ジュニアユース、U23、女子チームいずれかの下部育成チームの保有と、ホームタウンでのレース開催も義務付けられている。Jリーグのような運営形態に近づくといえばイメージできるだろうか。「地域密着型」という共通の考えを持ったチームが集まり、リーグとしての一体感はかなり高まりそうだ。リーグを構成する一員として、各チームからリーグの方針にも活発に意見が挙がっているようで、新リーグについて語る二戸さんの口調も熱を帯びてくる。二戸さんは本当にロードレースが好きなんだなと感じた。

地域密着型チーム成立のカギは

二戸さんは、地元の方たちの参画なくして地域密着型チームは成り立たないと考えている。サイクルスポーツがどんなものかを多くの人に知ってもらい、自転車に乗ること自体が人生や社会の好循環に直結することだとも気づいてもらいたいという。そのための地域活動は、レース活動との両輪だと考えている。

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プロサイクリングチームの運営をやっていて楽しいことは?

二戸さん曰く、「自分は現場が好きなんです。レースの現場に身を置いて、レースを介して喜怒哀楽を感じることが生きがいとも言えます。しかし、ここ数年、自分の役目は現場ではなく、現場を形成するための環境づくりだと考えるようにもなりました。日本に本当の意味でロードレースを根付かせるため、地域密着型のチーム作り、リーグ作りをし、地域が活性化することが、これからの私の目標であり楽しみです」

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まっすぐに夢を語る二戸さんを見て、世界を変えるのはこういう情熱なのだと改めて感じた。近い将来、日本で普通にロードレースが開催され、沿道を多くの人々が埋める光景を、私たちは見ることになるかもしれない。

《プロフィール》
二戸 康寛(にと やすひろ)
1975年3月11日生まれ
山形県最上町出身

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山形県立新庄工業高校(現・新庄神室産業高校)入学後に自転車競技を始め、3年生の全国高校総体のロードレースで団体2位に入る。卒業後、日本鋪道株式会社 (現・株式会社NIPPO)の実業団チームにプロ契約選手として入団し、5年間にわたり活躍。一時競技を離れるも、2004年にサイクルショップ『なるしまフレンド』に勤務しながらクラブチームでのレースに復帰。2014年には東京都立川市でプロサイクリングチーム「東京ヴェントス」を自ら設立し、2019年まで活動。2020 年、「レバンテフジ静岡」の設立に伴い、チーム代表兼監督に就任。地域に根ざした自転車文化の普及と、世界で活躍する人材の育成を目指す。

Information
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