002 代謝② 採食行動

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人間を含めた生物は、生命活動を維持するために、体の構成成分やエネルギー源を外部から得なければなりません。

とりわけ、人間を含めた動物は、体の主な構成要素である有機成分を得るために、他の生物(植物や動物等)やその生産物を摂取しなければなりません。

一部の生物は、一時的に休眠状態をとることが知られていますが、すべての生物のほとんどの期間は、作り替わり続ける体を維持するために、そして、エネルギー源を得るために、絶えず外部から物質を取り入れ続けなければなりません。

人間の場合、極限の状況下でないかぎり、1日に3度前後の食事は必要不可欠なものとなっていて、季節やライフステージにかかわりなく、1日としてそれを欠かすことはできません。

人間を含めた動物が、有機物、すなわち他の生物(植物や動物等)やその生産物を摂取するための行動は採食行動と呼ばれます。

具体的には、摂取の対象となる有機物を、探して移動する、自分のところに来るのを待ち構える、追いかけて捕まえる、破壊して可食部分を取り出す、といった行動です。

人間も原始時代までは、このような他の動物と同じような採食行動を行っていたと考えられますが、脳が飛躍的に発達した動物である人間は、やがて、採食行動を独自に高度化させていきます。

人間が独自に発達させた採食行動を、高度化の度合いに応じて列挙していくと、まずその第1は、モノの使用が挙げられます。動物は腕や足、歯、爪、粘液、毒など、採食のために自分の器官を使い、進化の過程を通じてそれを発達させてきましたが、他の生物や重力、水流を利用する例があるほかは、自分の体以外のモノを使用する例はほとんど知られていません。人間ははじめ、枯れ枝や石など自然にあるものをそのまま利用していたと考えられますが、そればかりではなく、人間はやがて、自然のものを自分で加工することも覚えることになります。道具の始まりです。

人間独自の採食行動の高度化の第2として、調理が挙げられます。他の動物が行う有機物の加工は、せいぜい物理的な破砕に限られており、あとはただ自身の消化機構にゆだねられています。

調理の手段の最たるものは加熱で、これは火の使用が可能になってのことです。加熱によって、有機物の易消化化、解毒、貯蔵性の向上などが可能になりました。摂取可能な有機物の種類が飛躍的に増加したのに加えて、有機物を摂取する時間もコントロールできるようになりました。それまでは有機物の摂取と採食行動は時間的に不可分のものだったのです。

調理の方法には、ほかに塩蔵や発酵といった方法もありますが、有機物をその場で摂取せずに時間と手をかけるという行為も、人間以外の動物にはほとんど見られません。

以上の2つをもってして、採食行動の高度化とするには十分なのですが、人間の採食行動の高度化はとどまるところを知らず、従来の人間の生活を原始的とまでしてしまうような画期的な段階へと進んでいきます。牧畜農耕です。

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