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現役東大生らと「AV出演での未成年取消の行使が18歳未満に下がるのは妥当か?」問題について一緒に考える企画が政策提言SNS「Surfvote」でスタート

2022年4月1日から成人年齢が18歳に引き下げられた。
18歳以上であれば(高校生であっても)親の同意がなくても契約ができるようになるので、アダルトビデオ(AV)出演契約も有効となる。
(今までは20歳未満であれば出演契約をしてしまっても「未成年者取消権」が行使できた)

他方、飲酒や喫煙、競馬、競輪などの公営競技は従来通り20歳にならないとできない。
同じように、アダルトビデオも、従来通り20歳にならないと出演契約できないようにすべきかを問う。

AV出演での未成年取消の行使が18歳未満に下がるのは妥当か?

このイシューの論点整理に参加してくれたのは3名の東大生と1名のフリーランス、合計4名。
ユーザーがこのイシューに答えるときの参考になるように、さまざまな論点からそれぞれの考えを整理してくれている。

「AV出演での未成年取消の行使が18歳未満に下がるのは妥当か?」については、2名が妥当、2名が妥当ではないという立場から意見を書いている。

20歳に現状維持される項目と理由

飲酒や喫煙、競馬などの公営競技に関する年齢制限が、これまでと変わらず20歳であるのは、
「健康面への影響や非行防止、青少年保護等の観点から」
とされている(「成年年齢引下げで変わること、変わらないこと」政府広報オンライン、2022年1月)。

アダルトビデオ出演とはどのような行為か

通常、
「全裸になるなどして、男優などと性交・性交類似行為をしてそれを撮影され、販売・配信される行為」
であり、自分の意志でこの出演契約ができる年齢は、4月1日から18歳以上になった。

アダルトビデオ出演強要の構造的な問題

通常、アダルトビデオ出演者は「プロダクション」と出演契約し、プロダクションから「アダルトビデオ制作会社」に派遣され、別契約で撮影などがなされる。
仮に強迫されたりだまされたりしてプロダクションと出演契約をしたとしても、制作会社がその事情を知らないと主張する場合、民法の契約取消ができない。
また、消費者契約法によって不適切勧誘を問えるのも、スカウトやプロダクションなので、不適切勧誘の事情を知らないと主張する制作会社に対して、作品の販売や配信を停止することは基本的にはできない。
配信停止の仮処分などを裁判所に求めても、それが認められることはあまりないといわれる。

最後の砦としての「未成年者取消権」

そのため、ほぼ唯一、確実に被害救済できるのが、無条件で過去に遡って契約を取り消す「未成年者取消権」の制度であるとされている。
20歳以上を成年とする場合、20歳未満でアダルトビデオの撮影がされていたら、未成年者であったことを理由に契約を取り消すことができる可能性が大きい。
なお、この場合も、契約や撮影のときに20歳以上になっていると「未成年者取消権」は適用されないので、「救済」されない。

今後懸念されていること

18歳には高校生も含まれる。
高校生から大学生になる年でもある(進学の場合)。
18歳や19歳の若年男女がアダルトビデオ出演において、強迫されたりだまされたりするなどの被害を受けることが懸念されている。
また、18歳や19歳がアダルトビデオのメインストリームになれば、18歳未満からリクルートが始まることも危惧されている。

誘われれば8人に1人が応募

以下は2016年12月に行われた「若年層を対象とした性暴力被害等の実態把握のためのインターネット調査」(PDF)(内閣府男女共同参画局)の結果に基づく。

全国の15歳から39歳までの女性のうち、約4人に1人(24.2%)が、「モデルやアイドルなどにならないか」と声をかけられたり、「オーディションを受けないか」と誘われたりするなどの経験があり、このうちの約半分の、つまり約8人に1人(12.9%)が実際に誘いに応じている。
誘いに応じた人の年齢は10代~20代前半の割合が高く、誘いに応じた人のうち、7.7%が実際に出演契約をしている。

契約時に同意していない性的な行為

さらに、出演契約をした人の26.9%が、契約時に同意していない性的な行為などの写真や動画の撮影に応じるよう求められた経験があり、このうち3人に1人が求められた行為を行った。

求められた性的な行為を行った理由としては、
・お金が欲しかったから
・契約書・承諾書等に書いてあると言われたから
・多くの人(事務所、マネージャー、撮影スタッフ等)に迷惑がかかると言われたから
・多額の違約金が発生すると言われたから
・親、学校、会社等に伝えると言われたから
・写真や画像をばらまくと言われたから
・身の危険を感じたから
・断ってもしつこく要求してきたから
・個人情報を知られているから

などが挙げられた。

成人年齢引き下げに伴い、アダルトビデオ出演での「未成年取消」の行使が18歳未満に下がるのは妥当か?

主に参考にした資料

成年年齢引下げで変わること、変わらないこと」(政府広報オンライン、2022年1月)
若年層を対象とした性暴力被害等の実態把握のためのインターネット調査」(PDF)(内閣府男女共同参画局、2017年3月)
成人年齢引き下げで、18~19歳のAV被害が増えるリスク 立法的解決が急務」(伊藤和子、弁護士、国際人権NGOヒューマンライツ・ナウ事務局長、2022年3月)

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