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8年ぶりの苗場は映像とSNSとともに。

先ほどライブ配信の再放送も終わりました、そろそろキャンプサイトもクローズしたことでしょう。フジロックフェスティバル2018、おつかれさまでした。

今年初の試みとなったYoutubeliveでの生配信のおかげで、上記のような言葉を8年ぶりに発することができた。私がフジに行ったのは200320052006200820092010 の計6回だったと思う(2010年は仕事だった)。初年度、21歳で初めて夢の苗場へ行った時は、メンバーのうちのひとりが、大五郎(俺とお前と大五郎♪)の1.8リットルボトルに自分で作ったウーロンハイをスタンバイの上、持ち歩いていたのが強く印象に残っている。斜度のきついところにテントを張り、朝になると全員テント内で下のほうに寝袋ごと落ちて寄っていってた、とか、雨が酷すぎて萎え、真昼間だがキャンプサイトに戻り、遠くに聴こえるフランツフェルディナンドをテントから雨音とともにひとり聴いた、とか(これは、私のなかでは2002年のライジングサンで鬼束ちひろの姿を全く見ずにテントに寝転がりながら音だけの「月光」で十分に感動した、というのと同じくらい、キャンプインフェスの醍醐味として強く自分に刻まれている出来事である。あと、たぶん2003年のルーキーアゴーゴーでのアジカン「遥か彼方」が夜中にテントで目覚めた時に聴こえてきた記憶もかなり刻まれている)。

そんなこんなで、フジにしろライジングサンにしろ、キャンプインを前提としたフェスの場合、何度か行くと、もうその土地に向かうこと、今年も帰ってきた と思えることなどに重きが置かれるようになり、アクトの記憶よりその周辺体験のほうばかり思い出したりするのだった。それはそれは、都市型のフェスや屋内型のフェスとはまったく異なる味覚のもので、私はそれをとても愛していたなあ、と思う。とにかく、テントにいても巨大な音楽の祭典が横でずーっと繰り広げられているというのは楽しい。

しかしながら2011年3月の東日本大震災以降、自分の行くフェスの規模感はどんどん小さくなっていった。キャンプインという意味では岩手県のKESEN ROCK FES.がとにかく楽しくて毎年行くようになり、スタッフという意味では鹿児島のGOOD NEIGHBORS JAMBOREEなどに通うようになってきて、段々と、フジやライジングサンに純粋にお客さんとして行くことがなくなってきた。

たぶんそれは、自分が2011年には30代に突入し、これまでのように何かを享受するだけでなく、今までにもらってきたもの・受け止めてきたものを、自分たちなりに次へ受け渡せる形に作り上げていかねばと思うようになったから、とも言えるのかもしれない。また2011年とか2012年くらいからはSNSの普及とともに、自分が行っていなくても苗場の写真が大量にタイムラインに上がるようになり、「ああかつて桃源郷みたいだった、あの電波の通じないオフな場所は、こんなにみんな写真アップできるようになったのか……」と、どこかさめた目で見るようにもなっていたのかもしれない。とにかく、そんな捻くれたような気持ちも携えながら、フジに「客」としての自分の居場所はもう無いのかも、と思うことがたくさん重なっていって、少し寂しくもあった。とはいえ、毎年毎年、2月になれば一度は、「今年こそは早割を買って、苗場に戻ろうか…!」なんて思ったりしていたが、結局別の現場の仕事など入ってきてどんどん足が遠のいていったこの7年間だった。

そして2018年。今年はYoutubeでライブ配信があるという。しかも、自分が仲良くしていたり贔屓にしてきたバンドが、わりと多く、ライブ配信のラインナップに入っているではないか!と。これは素敵だ、Wi-Fi確保できてPCさえ開いていられる環境さえあればたぶん観られるものも多そう、と。(恐らくかなりそういう、私みたいなかつてのフジロッカーたち向けなラインナップだったようにも思うし)

始まってみれば、金土日の可能なところでちょこちょこと観ていただけだが、とっても楽しかった。振り返ってみると、neco眠る、jizue、ROUTE 17 Rock'n'Roll ORCHESTRA、ストレイテナー、ミツメ(ちょこっとだけ)、シャムキャッツ、eastern youth、ASH、JACK JOHNSON、DirtyProjectors、cero、GREENSKY BLUEGRASS、chvrches を観ていまして。(GREENSKY BLUEGRASS以外は、ライブを自分で観たことがある人たちだけに、意図的に絞りました。あくまで追体験としての配信の楽しみ方にとどめてみよう、と。)

4年に一度のペースで苗場に戻ってきているストレイテナーは今年20周年。フジロックも苗場開催が今年で20周年。初出演時、2006年の彼らのホワイトでの演奏を思い出しつつめっちゃ痺れていたんですけどもそれはまた別で書こうと思う(これ書き始めるとエモーショナル波動が高まりすぎて「フジロック」というテーマからどんどん逸れてしまうので。はははは)

そんななかで。最も「ああフジってこれ…!!」と思い起こさせてくれたのは初出演のシャムキャッツでした。苗場の2日目の朝、「ああ起きれたら行こうと思ってたけど…やっぱり起きれなかった。。ああ遠くでレッドマーキー始まってる音がうっすら聴こえる……」とテントの中で、シュラフの中で、起きたいのとまだ起きたくないのの狭間を楽しむ最高な時間をこれでもかと思い出させてくれた。……なぜなら、自宅でベッドに寝転がりながら観ていたものでして。(レッドマーキー裏とテントサイト、繋げてほしい件、という永遠の願望も思い出しながら。笑)

しかもシャムキャッツは名曲「AFTER HOURS」はじまり、という。土曜朝イチのレッドマーキーは、金曜のアフターアワーズなんだよねえ みたいな意味合いまでも、夏目くんが含ませてくれていたと勝手に思って感動した。(おまけに夏目さんは、このインタビューの時にも「フジロックは来年は本当に出たいと思う」と話していたので。いろんな思いが込められたステージが配信されていて素晴らしかった。それはjizueの集中力も同じだし、ストレイテナーもそうで、それぞれがYoutubeライブ配信も含めた今回のフジロック出演に込めている気合いの強さとライブステージのエモーショナルさが伝わってきて感動しきり。
その後に観たイースタンも、ああ本当にこれなんだよ!!!これがフジロックフェスティバルだったよね! と。痺れました。夕暮れのJACK JOHNSONとかもね。

そして昨日、日曜の夜に唯一、配信で初見・初聴きだった「GREENSKY BLUEGRASS」。フィールドオブヘブンでの最高の時間が自宅のお茶の間で疑似体験できてしまい至極感動してしまった。ああ、このヘブンとか今はなきオレンジコートとかで出会ってしまうヤバい音楽体験!と。「あいつはヘブンに行ったきり帰ってこなかった」みたいな人が大抵出てくるもんですけど、それを自宅で思い出し、たまらなくフジロックへ行きたくもなった。

恐らく、あの20代の頃の自分にはまだあまりわかりきっていなかった”フィールドオブヘブンにい続ける大人(あんたヒッピーやな)”に、私はもう、なっていたようだ。

ということで、SNSが普及して以降なんとなく卑屈な気持ちにもなっていって、どんどん苗場から足が遠のいていたけれど、今年は個人的なブランク7年の、その先が少し見えたような気がして、いろいろこれまでに体験したことのない立体的な体験にフワフワと楽しい気持ちが持続し、嬉しかったです。

しかしまあ、自分はYoutubeliveで抽出してもらった苗場の変わらぬ空気感を味わわせてもらいつつも、なんかヤバいねと思ったのは現場に行っている友人たちのマナーの低下の著しさへの阿鼻叫喚ツイートなどだろうか。イスとかシートとか、かつてそんな酷かったっけ……。イノベーターとアーリーアダプター達が湧き立ちながら、”みんなで新しいカルチャーを作っているんだぜえ”という熱狂の時期における楽しさがキャズムを超え、作り上げられたあとの土俵を消費だけしにくる人が増えていくと、きっと、現場でのマナーしかり、いろいろな人が言及していたYoutubeliveでのコメント欄しかり、みたいなことになるんだろう。。哀しいかな。しかしそれもまた現実。そういうイライラに自分が身をさらしにいけるかというと、純粋なお客としては、やはりもう無理な気もしてしまう(これがたぶん、レジーさんがnoteに書いていたことかな)。「また行きたいなあ!(でもこの状況を知ると、行けないのかねえ)」というなんともいえない気持ちが、現場からの友人のツイートと自分が楽しませてもらっているYoutubelive配信との間で揺れ動いた。

イースタンのステージを観ながら「○○○ MUSIC FESTIVAL」という名称のイベントも増えるなか「ROCK FESTIVAL」と掲げ続けることとは みたいなことを考えていた。
民度とは、とか、ロックとは、とか。いま散々言われる”体験”の本質って、消費ではなくて、自分たちで作り上げることにあるはずだもんね、とか。

まあいろいろ書きましたけど、とにかく、フジロックへ自分の意識を戻せて嬉しかったです。ソフトバンクさん、偉大な広告主!ありがとうございました。J-PHONE〜Vodafone〜Softbankとずーーーーっと20年、乗り換えもせずに使い続けてきたことのメリット、特に何にもなかったけど(笑)とかずっと思ってましたが、この3日間で20年分の価値をもらえた気がします!笑

そして、個人的 FRF18 インターネット好感度大賞は「N.E.R.Dの時にモッシュピットでオールエリアパスを落としてきていたというPUNPEE」と、「Dirty Projectorsのライブ配信映像にて最前列で楽しんでいる姿がきゃっちされていた東郷清丸さん」でした。前のめりで楽しむ人、それがフェスの、祭りの正義だと信じています!

以上。今日のところの感想までで。また気が向いたら何か書き足すやもしれませぬ。みなさまおつかれさまでした〜!



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