現代モダンのジャンドについて(カード詳解1)

●はじめに

 前回はモダンのジャンドについて概略的に述べましたが、今回は前回書ききれなかったカードたちについてもう少し細かく見ていきたいと思います。

前回の記事はこちら↓
・現代モダン(2021年3月〜)のジャンドについて(入門編)
https://note.com/sura_345/n/n412d86e28dea

※5/13 少し追記&修正。

●クリーチャー

・《呪詛呑み》

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 モダンホライゾンから登場した緑1マナのクリーチャーです。最近はジャンドシャドウ(ジャンドカラーの死の影デッキ)に3−4枚投入されているばかりか、通常のジャンドにも採用されています。一見、1マナ2/1とアグロ寄りなクリーチャーに見えますが、このクリーチャーの本質はレベルアップすると非常に手を付けにくくなるという点にあります。
 レベルアップはソーサリータイミングでのみ行える都合で、相手の行動に合わせてプロテクションを得るといった芸当はできません。しかし、除去が枯渇したタイミングですかさずレベル3まで上げることができたらどうでしょうか。4/4、プロテクション(インスタント)と途端に凶悪なクリーチャーに変貌します。レベル8まで行けばブロックもされなくなるので、速やかにゲームを終わらせてくれます。(たいていここまで行くころには勝っているとは思いますが……)
 欠点としては、マナが伸びてない序盤に出しても脅威にならない・レベルアップのスタックで除去されてマナが無駄になる・ソーサリーの除去には基本的に無力(《失脚》、《血の長の渇き》、《大渦の脈動》、《至高の評決》など)といった点が挙げられます。

・《闇の腹心》

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 BG系の主力2マナクリーチャーの一人です。自身のアップキープにデッキの一番上のカードを公開&そのカードのマナコストぶんだけライフを失うという効果を持っており、要はドローステップと合わせて毎ターン2枚引くことができます。
 もちろんこのライフロスは痛みを伴う場合が多くあります。《血編み髪のエルフ》を捲ってしまえば4点もライフを失ってしまいます。しかし、その一方で土地の場合はマナコストを持たない(マナコストが0)ため、ライフを失うことなく追加のドローが行えます。ライフロスはかなり痛いですがジャンドでドローできる置物はかなり強力で、白青コントロールやトロン戦など自分のライフをあまり気にしなくてもよいマッチアップではほかの2マナクリーチャーより強く使える可能性があります。
 欠点として、環境に多く存在する《レンと六番》や《溶岩の投げ矢》など、タフ1を倒せるカードに軒並み刺さってしまうのが苦しいところです。また、ライフを詰められすぎると自身のアップキープで敗北するということも珍しくないので注意しましょう。

・《漁る軟泥》

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 これもBG系の2マナ域主力の一人です。メインから入れられる墓地対策・ライフゲイン、そして最終的にはフィニッシャーになれると様々に活躍できます。ドレッジほどがっつり墓地利用されるとさすがに力不足ですが、《瞬唱の魔導士》や《レンと六番》、《死の飢えのタイタン、クロクサ》あたりをこれ1枚で阻止することができるのは強力です。BG系とのミラーマッチでは、PWかこれが立っているほうが勝つことが多いです。《タルモゴイフ》以上のサイズを見込め、クロクサや《歴戦の紅蓮術士》を止められるのがその理由の一つです。
 欠点として、緑マナをいちいち立てておく必要があるため、連続で起動したり、要所要所でうまく起動しようとするとテンポを損ないます。特に序盤に起動するのは意識しないと難しいです。また、《致命的な一押し》などで簡単に処理できてしまうので過信は禁物です。

・《スカイクレイブの災い魔》

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 2020年下期に新たに加わった2マナ域期待の新人です。2ターン目に置くことはほぼ不可能ですが、ゲーム中盤以降は安定して5/5以上のサイズが期待できますが、やはりタルモゴイフ以上のサイズになるのは圧巻の一言に尽きます。タルモゴイフと違って墓地対策も効かないので、その点はとても心強いです。2桁以上のP/Tを持つこともざらにあるので、立派なアタッカーの一人として採用するのはアリだと思います。キッカー能力も忘れないでおくと、終盤の詰めの時に役立つことがあるかもしれません。
 欠点としては、やはり2ターン目に置くことは厳しいためタルモゴイフと比べて安定感は少し落ちます。また、20点を基準にP/Tが変わるためライフゲインをしてくるカードにめっぽう弱いです。《創造の座、オムナス》や《稲妻のらせん》あたりを擁する4Cコントロールなどに対しては運用がいっそう難しくなります。

・《不屈の追跡者》

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 3マナのクリーチャーとして及第点のサイズに加え、上陸で手がかりトークンを出すことができます。また、手がかりを生贄にすると自身に+1/+1カウンターを置くことができる……と後半無駄になりがちな土地がアドバンテージ源となる能力は言わずもがな強力です。このカードを唱えて着地後、土地を置くまでに優先権が対戦相手に発生しないため、たとえ除去を持たれていたとしても土地を持っていれば最低限手がかりトークンを残すことができるという点も見逃せません。その土地がフェッチランドであるならば2つ残すこともできます。手がかりトークンは2マナとトークン自身を生贄にすることで1ドローに変換できますが、このトークンも致命的な一押しの紛争達成に一役買うこともあるので覚えておきましょう。
 欠点として、《稲妻》のような赤系除去に弱く盤面に残りにくい点と、3マナと絶妙な重さです。手がかりも生贄にするために2マナ必要なため見た目以上にマナを食います。能力が強力なのでそこは仕方がないのですが、実戦ではこの重さが絶妙な使いにくさを醸し出しているような気がします。

・《夢の巣のルールス》

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 ※相棒としてではなく、デッキに1-2枚ほど採用して使う方法を前提としています。
 ジャンドシャドウや鱗親和、白赤果敢などアグロデッキ御用達のクリーチャーですが、純正ジャンド(クラシックジャンド)でも採用されることがあります。実質《ヴェールのリリアナ》と同じマナコストのため、マナ基盤に負荷をかけずともすんなりデッキに入れられるコストなのは嬉しいところです。このクリーチャーの神髄はやはり『墓地からCMCが2以下のパーマネント呪文を唱えられる』という点です。ジャンドで一般的に用いられる2マナ以下のパーマネント呪文は以下のようなものがあります。

・《タルモゴイフ》
・《漁る軟泥》
・《レンと六番》
・《虚無の呪文爆弾》(サイドボード)

 レンと六番やタルモゴイフをゲーム終盤で手軽にリアニメイトできれば、ゲームの決定打になり得ます。特にクリーチャーを戦場に戻せば盤面にいきなり2体分並ぶことになり、しかも相手からしたら《ルールス》から除去しないと結局リアニメイトされ続けられてしまうため、除去が2枚無いと止まらない状況に陥ってしまいます。クリーチャーという点は《コラガンの命令》で回収ができるし、絆魂もジャンドのクリーチャーでは珍しいため、そこが光ることもあります。
 欠点としては、墓地対策に弱いのは言わずもがな、《不屈の追跡者》と同様にマナがかかってしまうという点と《血編み髪のエルフ》の続唱で捲れた時にあまり強くないという点です。《ミシュラのガラクタ》や《炎の印章》を採用しないクラシックジャンドでは1マナ以下のパーマネント呪文はほぼないため、ルールスを最大限利用するには最低5マナ必要となります。また、続唱で捲れた場合にはスタック上にまだ血編み髪のエルフ自身が残っているため、パーマネント呪文を唱える隙がなく、相手からの除去を挟み込む余地が発生してしまいます。これはヴェールのリリアナなども同じなのですが、そのようなカードが続唱でヒットしてしまう可能性が上がってしまうリスクもあります。

・《高原の狩りの達人/高原の荒廃者》

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 主にサイドボードで刺されることがあるクリーチャーです。CIPで2/2トークン生成と2点ライフを得ることができるため、アグロデッキの壁としてはちょっと頼りないですがライフゲインは地味ながら効きますし、ミッドレンジ~コントロール帯のデッキに対して投入する追加のクリーチャーとしては一考の余地があります。裏面も非常に優秀で、4/4という稲妻に耐えられるスタッツに、対戦相手かPWに2点ダメージと、クリーチャーにも2点ダメージを与えることができます。盤面を取ることに関してはかなり長けていると言えるでしょう。また表面に戻ってきたときもトークン生成とライフゲインが誘発するため、表裏を自在に変えられるようにコントロールできれば理想ですがそこまでしなくとも、横に広げることができる・ライフに余裕を持たせられるという点だけでも素晴らしいクリーチャーです。
 難点は、4マナと血編み髪のエルフと被ってしまっているという点でしょう。また、近年ではこのクリーチャーより強力なカードが増えてしまい以前ほどサイドボードにおいて見かけることは少なくなってしまいました。

●クリーチャー その2

 ここからは採用率が上記のものより低いものを取り上げていきます。採用率が低いのは弱いからではなく、メタゲーム上相性が良くない、モダンという環境柄合わない、ジャンドというデッキには合わないなどネガティブな理由や、実験中だったり特定の刺さるデッキを倒すためあえて採用しているなどポジティブなものなど様々な理由がありますが、それについても簡単に付記していこうと思います。

・《渋面の溶岩使い》

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 墓地のカードを2枚追放&赤マナで《ショック》が撃てるシステムクリーチャーです。PWや相手のシステムクリーチャー、アグロ用と幅広く牽制できるクリーチャーなのですが、近年ではタフネスが3以上のクリーチャーが増えたことと、タフネス1クリーチャーの相対的な弱体化によりあまり見なくなってしまいました。

・《残忍な剥ぎ取り》

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 昂揚を達成すると2マナ4/4トランプル&ダメージが通るとライブラリー操作を行えるマナレシオが優れたクリーチャーへと変貌します。このライブラリー操作は上から3枚を望む枚数墓地に落とせるので、タルモゴイフやレンと六番、クロクサなどとシナジーがありうまく機能すればとても強いです。ただし、昂揚は見た目以上に達成が困難であり、昂揚未達成の時のスタッツがあまりにも貧弱なため採用率はかなり低いです。(《ミシュラのガラクタ》、《炎の印章》、《夢の巣のルールス》とは相性がいいので、それらを用いたジャンドなら居場所はあると思います。)

・《砕骨の巨人》

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 エルドレインの王権にて登場した出来事持ちのクリーチャー。出来事は2マナでショック&ターン中ダメージ軽減不可、クリーチャーとしての性能は3マナ4/3で対象になるたびに呪文のコントローラーに2点ダメージと、メリットしか書かれていません。このカードは、出来事の「ダメージ軽減不可」がしっかりと機能するのがえらいところです。たとえば、相手の《オーリオックのチャンピオン》などプロテクション持ちのクリーチャーがこちらのクリーチャーをブロックした際に、《踏みつけ》を唱えるとこのターンのダメージの軽減ができなくなるため、プロテクション持ちのクリーチャーにも戦闘ダメージを与えることができます。(参考:総合ルールより抜粋)

702.16e プロテクションを持つパーマネントやプレイヤーは、記述された性質を持つダメージの発生源から与えられる全てのダメージを軽減する。

 さらに言えば血編み髪のエルフの続唱で捲れたときは、《踏みつけ》か《砕骨の巨人》のどちらかを自由に選択して唱えることができます。クリーチャーでありながらかなり柔軟な動きができるカードなので、ここ数カ月ではちらほら1-2枚ほど採用しているリストを見かけます。レギュラーになるかはまだまだわかりませんが、現環境では《オーリオックのチャンピオン》が幅を利かせているため、選択肢として十分に考えうるカードです。

・《稲妻の骨精霊》

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 瞬間的打点でいえば、このカードが最も輝くと思います。モダン環境でパワー6のトランプルを受け止められるクリーチャーはそういません。プロテクションも一応貫通するので、とにかくダメージを通したいというアグレッシブなデッキなら採用しても面白いかもしれません。ただし場持ちが悪く、先制攻撃持ちなどと相性が悪いという問題点もあるので、無条件で入れていいカードとは思いません。それでも、いつものジャンドに飽きた方はこういうのも扱ってみてはいかがでしょうか。

・《大爆発の魔導士》

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 今でも少数サイドボードで見かけるクリーチャーですが、以前ほど見かけなくなってしまいました。理由としては、基本土地を採用するデッキが増えたこと、《夏の帳》に引っかかること、《浄化の野火》というカードが来てしまったことなどなど……。トロンなどのサイドカードとして長らく活躍していましたが、野火や《略奪》が来てしまったいまは、かなり厳しい立場にあるカードといえます。とはいえ、クリーチャーとして使える土地破壊カードはこれくらいなので、完全に立場を失ったわけではありません。クリーチャーということは、《コラガンの命令》で使いまわせるということを表します。それ自体はとても強力です。また、《ワームとぐろエンジン》をブロックしながら生贄にして土地を破壊する、みたいな芸当ができるのもこのカードだけです。こうすることで戦闘ダメージが発生しないので、相手は絆魂によるライフゲインを行うことができません。
 そのような小テクニックがあるにはありますが……今後の動向に期待です。

・《探索する獣》

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 筆者が一時期試していたカードです。小粒クリーチャーにチャンプブロックされているうちに負ける、といったことはジャンドを使っていてよくある負けパターンの一つです。それを解決できるカードとして使っていました。しかし、実際は血編み髪のエルフを退かしてまで投入するほどのパワーがあるかというと微妙なところです。速攻は非常にありがたいですが、それは血編み髪で足りていますし、殴ったところで除去されてはただ損するだけとなってしまいます。
 モダンで4マナ以上のカードはそれだけ高水準な性能を求められていますが、このカードはジャンドにおいてその基準に達していない、と考えます。

・《ゲトの裏切り者、カリタス》

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 先ほど4マナ以上のカードは~などと言いましたが、このカードは赤系アグロに対して無類の強さを発揮します。まず、稲妻で死なないタフネス4に加え、絆魂と疑似的な墓地対策&戦力追加ができる、とかなり欲張りな能力です。また、出てくるゾンビトークンを生贄に自信を強化する能力もあり、自己完結しているところも良いです。除去の打ち合いになりがちなミラーマッチに追加のクリーチャーとして投入するのもアリなので、サイドボードに忍ばせておくと良いことがあるかもしれません。
 特定のマッチアップで強いカードなので、メインボードよりサイドボード向けのクリーチャーと言えるでしょう。

・《台所の嫌がらせ屋》

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 3マナ3/2と及第点のサイズに加え、CIPで2点ゲイン&頑強という場持ちがとても良いクリーチャーです。ライフを都合4点得ることができるため、対アグロなどで壁として優秀ですし、ミラーマッチでも除去2枚吐かせたり2回ブロックに回れたりするのでとても使いやすいのが魅力です。
 しかし、緑ダブルシンボルというマナコストが少し重いというのと、最近は《スプライトのドラゴン》や《嵐翼の精体》など、飛行持ちのクリーチャーを擁する青赤果敢の壁にはなりにくく、スピードも速いためこのカードでは追いつけないというのが少し厳しいところです。

●結び

 今回はクリーチャーを解説しました。ジャンドで採用されているor採用されていたクリーチャーは概ねカバーできたのではないかと思います。もちろん、今後評価ががらりと変わったり、新入りがレギュラーになることも十分考えられます。その時はまた記事を書いたりして、情報発信をしたいですね。

 それでは、また。

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