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大嫌いだった上司は、私にとっての神様だった

新卒で入った会社で働いていた当時、本当に大嫌いな上司がいた。

態度がでかく、威圧的で、モノも投げて渡すような人だった。

お客様の意向を汲んでそれを伝えても、「(俺の経験上)こうやれ」みたいな、お客様の意向より自分の経験を優先するような、融通の効かない人でもあった。

飲み会に行っても、二次会、三次会、多い時は四次会まで行った。

お腹がいっぱいになったにもかかわらず、食べもしない料理をバンバン頼むのも、食材に対する感謝の気持ちが感じられず、罪悪感を感じた。

それを「若いんだから、残り全部食え」と迫られるのも辛かった。

ヤクザ映画に出てくる、ドンと下っ端のような関係だった。

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会社を去り、早3年半が経った。

あの時、大嫌いだった上司は神様だったんだと気づいた。

今は仕事が楽しく、周囲にも頼りにしてもらえる回数も徐々に増えてきて、毎日充実している実感がある。

あの時どれだけ意見を言っても聞き入れてもらえなかったのに、今ではたくさん意見を求められ、バンバン採用されるようになった。

それはそれで「本当に俺の意見採用しちゃってええんかいな?」と思うこともあるのだけど。

まあとにかく、あの時会社を去ったことが今の未来につながっていることは確かで、

あの時会社を去ったのは、当時大嫌いだった上司の、ある一言だった。

「俺ももうすぐ定年で退職だ。退職したら、マンションの管理人でもして、テキトーに掃除して、のんびり本でも読みながらぐーたら暮らしたいんだ。」

当時、私は大手企業の下っ端営業マンをやっていた。

副業も許されていなかったし、昇給するには管理職に着くしかなかった。

管理職に就くために、気に入られようと上司に媚びへつらい、上司の言うことに反対しなかった。

そもそもその思考がズレまくっているのだが、当時の私は完全に迷走していた。

そんな時、先程の一言を上司(役職は部長だった)からもらった。

「これだけ上司に媚びへつらい、我慢を繰り返し、やっと手に入れられるかもしれない管理職なのに、その先はマンションの管理人なのか。。」

マンションの管理人という仕事をバカにするつもりは毛頭ない。

ないけれど、当時の私はその事実にあまりに愕然としたのを覚えている。

部長まで上り詰めたら、お金もいっぱい稼いでいるし、人間的にも魅力的になっていて、定年退職したとしても”元大企業の部長”という肩書きでその後の人生もどうとでもなると勝手に思い込んでいた。

しかし、それは違うんだ、と気付かされた。

また同時に、前の部署の部長が、部長まで昇進したタイミングで糖尿病になり、インスリン注射など治療のために退職を余儀なくされた事実を思い出した。

このまま上司に媚びへつらい続け、お酒をバンバン飲み続けていたら私も同じ未来になると頭をよぎった。

今こうして書きながら、当時の自分は本当に自己中で、自分のことしか考えていないなと感じるけれど、今書いたことが正直な当時の想いだ。

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上司の何気ない一言を聞いてから、昇進が馬鹿馬鹿しくなった。

例え役員まで上り詰めたとしても、わずか数年で退職するわけだし、もしかしたら身体もボロボロかもしれない。

それよりも、立場関係なく退職後も腕一本で働き続けられるような人生を送りたい。

そう思って、未経験からITエンジニアという職業に挑戦したのだった。

当時は本当に辛かったし、本当に上司のことが大嫌いだった。

でも、今ではあの上司は神様だったとしか思えないほど感謝している。

上司のあの一言は、一見何の変哲もない言葉だけれど、当時の私の考えと意識を大きく変える、衝撃の一言だった。

「思いがけず利他」でも書いていたけれど、未来になってみないと、当時の行動・発言が利他だったか利己だったかなんてわからないんだなと、改めて思った。

おじゅん



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