ムンバイのヒンディー語
先日、デリーで働いている大先輩からこう言われた。
「お前のヒンディー語、ムンバイのヒンディー語やん」
その時はムンバイのヒンディー語が世間的にどんなイメージか、いまいちピンと来なかったので、「まあ、ムンバイでヒンディー語使って生きてますからねー」とテキトーに流してしまった。
後に北インドに遊びに行った際に、リキシャーの運転手やら店の商人らがびっくりするくらい聞き取りやすかったのを受けて、ムンバイで話してるヒンディー語は思った以上に特異であることに気付かされた。大学で一般的に「正則」として教われたヒンディー語を勉強している話し方やアクセント、言葉使いがムンバイのものとだいぶ離れ立てるやんけ。慣れは怖い。
てなわけで、ヒンディー語を5年間勉強してたムンバイ住み社会人が、ムンバイで話されているヒンディー語について紹介する。
母語ではないヒンディー語
ムンバイはマハーラシュトラ州に位置しており、州の公用語はヒンディー語ではなくマラーティー語。ヒンディー語はそもそもムンバイの公用語ではないのだ。 2011年の国勢調査によると、半数以上のムンバイ市民が「マラーティー語を母語としない人々」である。マラーティー語が母語の人は全体の45%、ついで隣州グジャラート州の公用語グジャラーティー語、ヒンディー語が20%前後、タミル語、シンディー語、カンナダ語、コーンカニー語が母語の人々が10%未満である。
つまり、単純計算でムンバイ人の80%がヒンディー語を母語としていない人達なのだ。彼らがお互いに意思疎通するための共通言語として、ヒンディー語が使われている。
北インドのヒンディー語との差異は、いわば方言みたいなもの
ムンバイの街角で話されているヒンディー語は、ムンバイ特有の言い回し(バンバイヤー・ヒンディー)にマラーティー語、グジャラーティー語の単語が散りばめられたものである。
ムンバイ・ヒンディーは「タポーリー(Tapori,टपोरी) 」と一般的に呼ばれる。タポーリーはマラーティー語で「放浪者・浮浪者」という意味。世間的には、ムンバイ・ヒンディーを話す人には野暮ったい、泥臭い印象があるのだろうか。ムンバイ・ヒンディーに限らずヒンディー語の方言と呼ばれる話し方をする人たちはどうもそのような言われ方をされがち。
代表的なムンバイ・ヒンディーの言い回し
ムンバイ在住の私が、よく使われている・興味深いと思った言い回しをいくつか紹介する。(ヒンディー語を勉強している人向けです。)タポーリーな言い回しもムンバイっ子が使う言い回しもごっちゃで紹介するので悪しからず。
Apun (अपुन):私、私達 マラーティー語の「Aapan(आपण )」から来ていると推測される。日本語で言う「俺様」的な感じな気がする。
Bhaiya(भैया):北インドの人(主にウッタル・プラデーシュ州やビハール州の人) 北インドでは普通に「Hey Brother」と呼びかける際に使う「バイヤー」がムンバイでは北インド出身の人を小馬鹿に呼んでいるのが興味深い。
First Class:How are you?の返しとしてムンバイ人は「First Class」を使いがち。いちいち表現が大げさだが、それがよい。
Jhakas(झकास):すげー Ekdam Jhakaas!(まじですげー!)が口癖で出たらあなたは真のムンバイ人。 Jhakasの他には、Fatte(फट्टे)・Ek Number (एक नंबर)もよく聞く表現。
Waat Lag gayi (वाट लग गई) :ほんまにヤバいって(状況が) マラーティー語でवाट लागणेを(Have troube, screwed)という意味で使用する影響か。
Mareko, Tereko (मेरेको, तेरेको):ヒンディー語でMujhe(मुझे), Tujhe(तुझे)。ヒンディー語でこの与格をよく使ってしゃべりがちなので、Merekoを聞いた瞬間にムンバイ人だとわかる。
Bole toh(बोले तो):「それはねー・・・」と会話のつなぎ目に間を置くときに使う。普通のヒンディー語であれば「Matlab(मतलब)..」といって話し出すのと同義。
NETFLIXでムンバイ・ヒンディーを感じる
ムンバイの独特の言い回しに興味がある方は、Netflixの「聖なるゲーム(Sacred Games)」を見ることをオススメする。ムンバイのギャングとして描かれている「ガネーシュ・ガイトンデ(ナワーズッディーン・シッディーキー)」の話すヒンディー語は、ムンバイ在住の筆者が唸るほどの「タポーリー・ヒンディー」であった。
ムンバイで長いこと影響力を示すギャングの役として、ムンバイ特有の言い回しがしっかりなされており、役作りがしっかりしてるなーと。
Kabhi kabhi lagta hai ki apun bhagvan hai
俺は神の気分だった
いや、予告8秒目でapun 使うてますやん。激アツ。
ヒンディー語は奥が深いっす。ムンバイに来たら是非使ってみてください。以上。
参考URL
https://www.mumbai77.com/city/2819/travel/slangs/
https://hetalkamdar.com/bambaiya-hindi/
https://en.wikipedia.org/wiki/Bombay_Hindi
https://allthingsmumbai.com/mumbai-tapori-words-and-slang/
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