【9】バーンって打たれた時のリアクションが苦手
昔から人から笑いを取るというのは苦手であったのだが、その中でも特に苦手な笑いの取り方というものがある。リアクション芸である。
何か痛かったり嫌だったり辛かったりする何かしらの事柄に対して、大げさな表情や身振り手振りや声で反応する。このタイプの笑いがとにかく苦手なのだ。
小学生の時にうちにはおばあちゃんが漬けてくれたすごくすっぱい梅干しがあったのだが、友達とそれを食べてすっぱいリアクションをするのをビデオカメラに収めるというyoutuberの先駆けとなるような遊びをやったことがある。順番が自分にまわってくるまでの間、心臓がバクバクして生きた心地がしなかった。周りの友達は軽くこなしていく中、自分だけ受けなかったらどうしよう?という思いで頭がいっぱいになってしまう。最終的には中途半端なリアクションをして、友達から「つまんな」と言われるのをただ苦笑いしてやり過ごすしかなかったのだが、とにかく面白いようなリアクションが思いつかないのだ。
そんなリアクション芸を、高校生活にある程度慣れ仲の良い友達もできてきた頃に求められる時がきてしまった。部活動での出来事である。私は中学校の時と同じ運動部に入っていたのだが、その中でウォーミングアップとクールダウンの時に集団でランニングする時間があった。どの部活でもよく見られる光景であろう。
高校の部活はある程度しっかり練習をする部活ではあったのだが、このウォーミングアップとクールダウンの時間は顧問の目もゆるく、我々も談笑しながらリラックスして活動していたのであった。
ここで良くないことを始めるやつがいる。いきなり隣にいる人に対して、指を鉄砲に見立てて打つやつが現れたのである。いわゆる「バーン」である。
もちろん、子どもの頃とは違い、本気で楽しんで相手を打っているわけではない。面白いリアクションを見るorリアクションを取れない人を困らせるのがねらいである。
当時、こういうことを始めるのは決まって部内で一番背が高い「高身長」くんであった。彼は間違いなく一番部内で面白く、また人を巻き込んだ様々な面白企画をするやつだった。彼が考案した企画により、何人もの生徒たちが笑いにつつまれ、そして犠牲になっていった。「牛丼パーティ」や「サイレントキン肉マン大会」「爪楊枝アート」「男だらけのお菓子作り」など、類まれなる発想力による企画をたくさんしてくれるやつだった。
話を戻そう。急にバーンと打たれることによるリアクション芸なのだが、思いの外私の部活に入っている友達達はリアクションが上手であった。オーバーリアクション、渋い表情、モノマネなどバラエティに富んでいた。普段はそういったことをしないキャラのやつまで、聞いたことのない声を出してみんなから笑いを取った。
そして私の番、私は苦笑いで「やめろよ」とやり過ごすという、考えうる中で最悪のリアクションをしてしまった。
この反応を見た高身長くんは当然、こいつは困るタイプのやつだと、集中砲火が始まる。
ここからは毎日リアクションを取れない私を前提としたリアクション大会が始まる。毎日みんなが順番にバーンと打たれるのだ。そして、私がまわってくるまではどんなに軽いリアクションでも「いいね!」という雰囲気で流される。そして私の順番になると、みんなが無言になる。こんなルーティンができていた。
今になってみると、すべり芸という笑いの取り方がこの世にはあるので、それに寄せていけば良かったのであるが、当時は自分ができなくてすべることが嫌でしょうがなかった。
嫌でしょうがなかったので、仕方無しにリアクションを練習してみたりしたが、無言ルーティンに入っているみんなにとってはそんな付け焼き刃のリアクションでは満足しないのである。
最終的に打たれた後に叫んで倒れ、ほふく前進をするがみんな無言という流れまで、このルーティンは成長した。
毎日行われたことで、面白いリアクションをとることはできなかったが、ただただリアクションをとることへの抵抗は少なくなった。いや今でも嫌だけどね。
それでは、、、
「人付き合いはゲームです。」気持ちを楽に持ってください。
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