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新潟ロングラド

序章
ロードバイクを手に入れて人生初の200Kmライドをした時の物語である。
長野市から新潟市へ向かうルートは、主にふたつのコースが考えられる。
上越市直江津経由のR8海沿いコース、飯山市経由のR117内陸コース。
どちらも距離は200km+で大して変わらない。
飯山市経由の内陸コースの方が直線的で若干距離は短い。
長野県の千曲川が新潟県に入ると信濃川と名前が変わり、日本海へ注ぐ川沿いの良いルートである。
勾配は山から海へ向かうので、飯山市迄登ってしまえば下りか平坦のスピードコースとなる。
何にしろ距離は200km。
当時はいまだかつてワンデイで走り通したことが無いのでスタミナを考えると時間が読めない。単純に計算すると時速20kmで10時間。
休憩を含めて12〜3時間あれば何とかなるという事で深夜3時スタートとした。

購入したばかりのSuperX
当時はほぼノーマル仕様
新潟駅にて

早朝の試練

2022年5月4日
この年のゴールデンウィークは天気が悪く気温が低かった。
当日は天気は回復したが朝の気温は摂氏2度。
自宅から千曲川沿いにライトを点けて走り出す。
飯山まで登りきったところであまりの寒さと空腹で暫く先にある「ガスト」で暖を取ろうと、オープンしている「すき屋」(此処に寄るべきだった)をパスして向ったがまさかのクローズ。
次は約6Km先の道の駅「花の駅千曲川」に期待を込め寒さに耐えて向かうが、鍵がかけられていて中にも入れない。
良い加減にしてくれ!道の駅の意味がないではないか!
冬山で遭難した気分だった。(しかけたことはあるが遭難は無い)
最後の力を振り絞りその先のセブンイレブンにやっと辿り着いて財布を取り出そうとするが、手が悴んでなかなか財布を取り出すことが出来ず支払いに苦労した。
駐車場で暖かい缶のコーンスープとおにぎりで空腹を満たすが体は冷え切ったままだ。
休んでも居られず少しは落ち着いた所でスタートする。この辺りからR117は下り坂が続き冷たい風に再び体力が奪われて行く。
栄村の道の駅「信越さかえ」でトイレ休憩、暖かいトイレから出るのをためらった。
それにしても夜明け前にも関わらず、R117をライドしていると飯山市を過ぎたあたりからゼッケンを付けて歩いている(走っている)複数の人達を追い越して行く。調べてみると毎年ゴールデンウィークに東京湾に面した葛西臨海公園から、新潟市の日本海まで520km、制限時間132時間(5日半)という「川の道フットレース」という大会が開催されているそうだ。
長野県、山梨県、埼玉県の三国境に甲武信岳があり、太平洋に流れる荒川、日本海に流れる千曲川、信濃川に分かれる分水嶺となっている。
その川を辿る日本横断レース、まさにこのR117がルートに設定されている。
行き交う車も殆ど無い暗い中、この人達いったいなんなんだろうと思いながら、孤独感は消えていった。

甲武信ヶ岳直下の
千曲川信濃川水源地(2011年)

雁木の商店街

日が昇っても津南町までは寒くて手の感覚が無くブレーキレバーも思う様に握れず耐寒訓練となった。
十日町、小千谷の商店街を暫く通るが雪国特有の趣がある。
商店街の歩道に全て屋根が付いている。
それは「雁木」という雪よけの屋根だ。雁木の下は公道では無く私有地だそう。
豪雪地域の人を思いやり共生する為自分の敷地を後退させ、歩道を設けるという日本の素晴らしい文化だと思う。
小千谷を過ぎた頃やっと暖かくなってきて防寒の為履いてきたレインパンツだけ脱いだ。
そんなレトロな商店街を通り過ぎるとサイコンはコースを外れましたの表示。
ナビの案内通りに戻ったり進んだりするが何処を通ってもコースを外れましたの繰り返し。
予めガーミンのサイコンにルートを入れて来たが、長岡までは忠実にR117を辿りR17に合流すれば良いのだけれど、ここもバイパス工事で道が改良されていて行ったり来たりで、大分時間のロスをしてしまった。
改めてスマホのナビに切り替えた。

新潟駅へ

長岡に入るとコンビニもチラホラと出て来て栄養補給がやっと出来た。
再び信濃川沿いの改良されたバイパスに合流し先を急いだ。
道が広くなり暖かくなってきて再びコンビニに寄りウィンドブレーカーを脱ぎバックポケットに入れた。
ナビの距離をみると新潟駅迄後70km、怠いがずっと道は平らなので救われる。
新潟市街地に入るとスマホは国道を外れ住宅街をナビゲーションする。
小路に入ったと思ったらいきなり大通りへ最短距離を案内しているのだろうか?
新潟駅はもう目と鼻の先なので素直にスマホのナビに従う。
何度か車で来た道に出ると自転車優先のブルーラインがしっかりマーキンングしてありなかなか走り易い。
右に左にとビル街を抜けると景色が広がり、15:00前やっと新潟駅南口に到着した。
お尻が痛いし少し怠いか。
いろいろとあったが天気にも恵まれ予定通りであった。
早速サイコンの表示と愛車の記念写真を撮った。
距離208km  時間11:59:35と表示されていた。
獲得標高は1013mだった。

新潟駅に到着したサイコンの表示


自転車をパッキングして、まずメシを食おう。
色々歩き回る元気も無いので駅ビルの食堂で新潟の名物と看板にあった「タレカツとへき蕎麦」のセットと生ビールを頂いて新幹線のチケットを買い帰路に着いた。


さぁ家へ帰ろう
新幹線ときが到着


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