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無価の宝が無価之宝【推し活リベンジ!03】

プロ野球の世界は非情である。
現役を引退した選手のグッズは、どんなに在庫があろうとも翌年には店頭から消えている。前回も言及したが、よほどのスタープレーヤーでない限り、引退後に球団から公式グッズが発売されることは叶わない。

「推しは推せる時に推せ」

誰が言い出したかわからないが、推し活界隈にはこんな金言があるが、全くもってその通りだ。
現役選手なら、例えケガや不調で2軍に落ちても、グッズは継続して販売される。それがある時に手に入れないと、後々後悔することになるかも知れない。
もし、あなたが本当に好きな選手がいるなら、迷っている暇はない。今すぐその選手のグッズを手に入れてほしい。

私が推しをきちんと推し始めたのは指導者になり、しかも他球団に移籍してから。
現役引退から10年以上経過しているし、フロントと折り合いがつかず退団した所属球団は、彼をまるで"いなかった人扱い"している。
ファンの一部からは古巣に再入団を望む声もあるが、現状を鑑みるとその可能性は限りなくゼロに近い。

だから推しのグッズを入手するのには、トレーディングカード以外には本当に苦労している。
いつ訪れるか予測できない、小さなチャンスを見逃してはいけない。
フリマアプリやサイトなどをチェックする時、全集中している自分がいる。
電車の中でスマホをチェックし、たまに降りる駅を通り過ぎるくらいのエネルギーをかけている。

そんなある日、メ〇カリを眺めていると、推しのレプリカユニフォームが売られていた。
現在の所属球団のもので、受注生産品だ。普通に頼むと注文から到着まで3ヶ月くらいかかる。なぜこんなところに?
しかも新品未使用なのに、定価を割って出品されている。とりあえずイイネ!して様子を見た。
すると程なくして2000円値下げされ、出品者から「売り切りたい」という趣旨のコメントが付いた。
もう少し粘ろうか悩んだが、すでに定価から5000円ほど安くなっている。アコギな商売はアカン……そう思い、ポチった。

出品者からは「やっと売れた」と感謝されたが、こちらとしては推しがそのように扱われているのが若干不服だった。
だが、反論せず「ありがとうございます〜♡」という態度を終始貫いた。もし食ってかかって「○○のファンは民度が低い」と思われたら、推しに迷惑がかかる。それはもうとてつもなく。
それに、わざわざ指導者の背番号を着て球場に足を運ぶ人間は少ない。何かの拍子で見つかったら、ほぼ個人を特定できたようなもの。いろいろマズい。
私の推しのユニフォームは、他の人たちものより"重い"。そのことを常々心に留め、大人な対応を心がけている(年齢的には十分大人ですけどね)。

別な日。
ヤ○オクを覗いたら、こちらでもレプリカユニフォームが売っていた。推しがかつて所属していた球団のもので、現役を引退し指導者になってからの背番号だが新品未使用。しかも1000円+送料。
「奇跡が起きた!」と、早速落札した。送料を少し多く取られた気がしたが、手数料と思おう。
数日後、無事に届いた。丁寧に保管されていたらしく、黄ばみやほつれなどはナシ。

思わず、推しの背中に触れるようにユニフォームを抱きしめてしまった。

ファンマナーの観点から、これを球場に着ていくことは叶わないが、それでも構わない。

私はこの背中について行く、って決めたんだ。憧れから2度と離れるものか。

今まで応援できなかった分を取り返す。そして勝利を信じる、と。

数日後、同じ出品者が同じ物を出していた。
どうやら個人のふりをした業者だったらしい。どこかで推しのユニフォームを買い取り、ネット上で売りさばいているのだろう。
よく見たら他のプロ野球選手のユニフォームも出品されていたが、推しのユニフォームはその中でも安く出品されている方だった。
要するに「在庫扱い」されていた。

貴様、このお方をどなたと心得ている?
ここまで至った年月を考えて、プレミア価格になっていてもおかしくないのに。
ちくしょう。悔しい、悔しい……悔しい!!!!!

クリエイティブ不毛の地・仙台出身の平成元年生まれが、令和元年に上京して「平面系マルチクリエイター」を目指しております。皆さまから格別のお引き立てをいただけることが、何よりの励みになります。