見出し画像

プロローグみたいなもの【推し活リベンジ!00】

好きな人やキャラクターを追っかけ、その一挙手一投足に熱狂する「推し活」。
熱心なファンの存在は経済を動かす。既にマーケットとして成立しており、日本のエンタメビジネスの一角を担っていると言っても過言ではないだろう。
推し活の形はさまざまあり、ライブやグリーティングで直接会う、グッズを買う、動画やSNSをチェックする、妄想する(?)など、推しに関することであれば何でも「推し活」と定義できるらしい。まったく、便利で柔軟な世の中になったものである。

私にも推しがいる。
しかし、私の推しはあまり推されていない。
プロ野球チームの関係者だが、選手じゃない。しかも現在の所属チームは、現役時代に籍を置いていたところではないからだ。

その人については名前は出さない(ご迷惑かけたくないので)が、簡単なプロフィールだけ紹介する。もしもこれを読んで、それがどのチームの誰かわかったとしても、どうか明言は控えてほしい。

甲子園出場後に大学野球、社会人野球を経て私の地元の某プロ野球チームに入団。残念ながら現役当時は目立った成績をそれほど挙げられず、今から10年以上前に引退。
その後指導者・指揮官として花開くが、フロントと折り合いがつかなくなり退団。
その頃の私は上京しでそれどころではなかったため、推しがその後どこで何をしているのか存じ上げなかったが、移籍先でかなり重宝されていたらしい。

時は経ち、巡りめぐって、推しは今年の春から関東を拠点に再出発。私の自宅から電車1本で行けるところに本拠地を構えるチームに所属となった。
その事実を知ったのは8月上旬。何となく眺めていた球団公式動画でお姿を拝見し、ようやく気付いた。

「あれ?○○って、まさか……」

その瞬間、忘れていた記憶が蘇った。
あぁ、やっぱりあの人だ。
以前と変わらない微笑みに癒された。球界に、現場に残ってくれててよかった。

そして、彼の足跡(そくせき)を追うべくネットに上がっている動画を試聴したり、インタビュー記事を読んだりしていくうちに気が付いた。

そもそも私は、現役時代から推しのことが何となく気になっていたのだ。推しの現役時代に地元のスタジアムでバイトをしていたことがあり、遠巻きにバッターボックスに立たれていたお姿を拝見していた。

ただ、当時は彼を応援しようと……"推そう"としなかった。
まだ20代で無知だったことに加え、自分の心に素直になれなかった。どうしてか向き合えなかった。

どこかに気恥ずかしさがあったのかもしれない。あるいは「何かに夢中になるのってカッコ悪い」と、大人ぶっていたのかもしれない。
ましてや、あまり活躍していない選手に声援を送るなんて周りがきっと笑うだろう……と、長く付き合いもしない人間に向けての、くだらない体裁を気にしていたかもしれない。
少なくとも「○○?それ誰?」と言われた時に、きちんと返せる自信はなかったと思う。

そのことを深く後悔した。推しは応援する価値がある人だった。そして応援できていれば、何かが変わっていたかもしれない……と、今でもそのことを思い出しては落ち込んでいる。
あの時、推しの存在をもっと知っていたら、観客席で声援を送れていたら、グッズを買っていたら、少しでも近づこうと努力していたら……。

たられば話は無限に出てくるが、いつまでもクヨクヨしていては何の生産性も得られない。

過去はどうすることもできず、一番大切なのはいいいい未来をイメージすること。
球団公式YouTubeの某選手コメントより

推しが選手たちに向けてそう言ったそうじゃないか。それならば……

「今こそ、今度こそ、ちゃんと応援しよう。推しと、推しのチームを」

あふれる思いを、今度こそエネルギーに変えなくては、と無駄に固く決意した。
それから1ケ月ほど経ったが、空いている時間をグッズ集めや情報収集、観戦、SNSを介してチームや推しファンとの交流などに注ぎ込んでいる。

推し活へのイメージといえば、多種多様なグッズを品定め、財布とあれこれ相談したり、同じ人を推す「同担」同士で愛を語り合う、年齢問わずみんなでワイワイわちゃわちゃ……といった具合に、とにかく楽しそうでキラキラなものばかり思い浮かぶ。

私の場合、そんなことはなかった。

推し活を甘く見ていた。そしてプロ野球関係者を推すということの難しさにぶち当たった。
アイドルや芸能人を推すのとはワケが違った。
野球ファン暗黙のルールやマナーに加え、業界的に仕方のないこと、推しの不遇さなどが重なり、イメージしていた推し活とは相当かけ離れたことをやっている。

泥臭く、粘り強く、微かな瞬間も油断できない。そんな殺伐とした推し活ライフだ。

これがもし野球の勝負だったら見応えバツグン、今夜のスポーツニュースの話題にでもなるだろう……が、何のことはない。ただのアラサーの孤独な悪あがきである。

正直、時々心が挫けそうになる。
それでも、推しを推し続けたい。

だって推しが好きだから。憧れだから。
そして「自分の心に素直になりたい」から。

これは、令和元年上京の同棲失敗独身アラサー女が「経験」と「勘」と「こんなもんだ」の全てを結集し、笑いあり涙ありの推し活に挑む話(になる予定)である。

『推し活リベンジ!〜同棲失敗して上京したアラサーが、ときめきを思い出すノンフィクション〜』

書き溜めがまとまり次第随時更新。
お楽しみに👋

クリエイティブ不毛の地・仙台出身の平成元年生まれが、令和元年に上京して「平面系マルチクリエイター」を目指しております。皆さまから格別のお引き立てをいただけることが、何よりの励みになります。