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2020J2第6節京都サンガF.C.VS愛媛FCレビュー~勝利こそ正義だけど・・・~


皆さんこんにちは、Ryu-Yです。

2020シーズンJ2リーグ第6節 京都サンガF.C. VS 愛媛FCレビューをしていきたいと思います。


両チームスタメン

愛媛戦スタメン

サンガは前節から3人変更。前節ターンオーバーした両WBは元に戻して荒木と飯田が再びスタメン。FWはここまで2得点を決めている野田に代わって宮吉が第3節徳島戦以来のスタメン復帰。連戦で疲労の残るウタカをどうサポートするか注目である。また変更ではないが、前節終盤に森脇がハムストリングスを痛め負傷交代した為、3CBは左から本多、バイス安藤のトリオとなる。本多は引き続きのスタメンとなり、より一層の試合勘の向上が見込まれる。

愛媛も前節から3人変更。藤本、清川、田中に代わり、忽那、長沼、川村がスタメン。川井監督はスタメンやフォーメーションをかなりフレキシブルに変更してくる監督であり、特に前線は毎試合選手を入れ替えながら戦っている。今節は連戦の中どのような配置で挑んでくるか注目していたが、なんとサンガと同じフォーメーションで嚙み合わせを合わせるように3-3-2-2(守備時には5-3-2)を敷いてきた。


<自由を与えられた長沼と森谷>

前半はサンガのキックオフから。試合の入りこそ荒木と飯田の駆け上がりやクロスからチャンスを演出したものの、徐々に愛媛にボールを持たれる展開に。サンガの5-3-2ブロックは基本的にハーフウェーライン辺りまで引き込んでの守備となり、相手のWB(SB)にパスが出たところをWB、IHでサンドしてボールを奪うことを基本線としている。この試合では愛媛がボールを繋いでくることを前提に前から数的同数ではめにいこうともしていたが、剥がされて前進されるシーンが目立った。前線からの守備については後述する後半に改めて言及する。

愛媛の攻撃で厄介だったのは長沼と森谷。長沼はスタートポジションこそ左WBに配置されているが、攻撃時には2列目中央にポジショニングしてボールを受けてドリブルからのシュートや、愛媛右サイドからのクロスに対してはPA内まで上がったりと、攻撃時には自由な役割を与えられていた。空いた左サイドのポジションには忽那がスペースを埋め、パスコースの創出及びリスク管理をしていた。(愛媛の左サイドにスペースがあるシーンもあったが、サンガがカウンターでそのスペースを狙うことは出来なかった。)また、森谷は2トップの一角で味方からボールが来るのを待つよりも本来のプレーメーカーとしての特徴を発揮。最終ラインでボールを持った味方の選手の斜め前でボールを受けてサイドに展開したり、トップ下のように振る舞いサンガのDFラインを吊り出す動きでサンガDFラインの基準をずらす役割を担っていた。

愛媛戦1

両チームとも同じフォーメーションを基準とするミラーゲームと言えどもマンツーマンで個の勝負になるかと言えばそうでもなく(サンガはもしかしたらそうなってくれたらラッキーだったかもしれないが)、特に愛媛の長沼と森谷に対して自由にさせてしまい、サンガの泣きどころであるPAエリア手前のバイタルエリアに侵入されるシーンが目立った。

一方、サンガの攻撃の狙いはこれまでのリーグ戦の中で最も淡白なものとなってしまった。愛媛の方がボール保持率が上回る前提で守備から入ってカウンターを1つの狙いとはしていただろうが、金久保が試合前のインタビューで話していたように遅攻の精度を上げようと取り組んでいたことも事実。

「遅攻の精度を上げるのが重要です。ウタカは京都の武器の一つだし、僕も前を向いたときに最初に見つけるようにしています。前線にいい選手がいれば、縦に早く攻める。それは一番大切なことなんだけど、それ一辺倒になるとよくない。そうなったときの遅攻の質。ボールを持って、相手を広げて…ということを一つずつ丁寧にやっていけば、早い攻撃も生きるんです」J's GOAL内金久保インタビューより

とはいえミッドウィークにも試合があり十分な戦術的練習をする時間はほぼ無かったこともあり、相手のプレスを剥がしていく戦い方は出来なかった。

特に気になったのは荒木、飯田にボールが入ったときのサポート。荒木に入った時は金久保、飯田に入った時はモッタがメインでサポートに入るのだが、ボールを受けてからパスコースを探してドリブルしようか考えている間に相手のプレスが間に合ってしまい、結局ボールを下げるか相手に当ててスローインを貰いにいくしか出来ない様な状況であった。

このことから、サンガの選手たちには立ち位置の原則が定められていないと推測される。
「認知→判断→実行」のプロセスが連続して行われるサッカーにおいて、いかに顔を上げて「認知」を早くして、また確かな技術で正確に「実行」出来る選手を揃えたとしても、「判断」が遅くなってしまっては相手にとって脅威とはならない。実行する前にプレーを邪魔してしまえばよいからだ。

そういった意味で、今のサンガは相手にとって脅威となる「怖い選手」は沢山いても、戦う上で「怖いチーム」にはなっていないのが現実である。


<怖い選手でなんとかする>

後半に入り、サンガの選手たちは前半の停滞感を払拭すべく積極的なプレスで愛媛にプレッシャーをかけようとした。

前半あまり良くなかったので、ハーフタイムに「こんなことじゃ負けてしまうぞ」「ホームゲームなんだからもっとエネルギーを入れなければいけない」「パワーを上げていかなければいけない」と話をしました。/ウタカの試合後インタビューより >京都サンガF.C HP

しかし、先制点を奪ったのは愛媛。キックオフ直後と先制点のシーン、2つともサンガの前がかりな攻撃を完全に逆手に取った素晴らしい攻撃であった。

愛媛戦2

愛媛のボールホルダーに積極的にプレスにいく姿勢を見せたのだが、金久保は西岡(兄)に寄っていきつつも茂木への横パスを意識している。その為中途半端なポジショニングになり、渡邊への縦パスのコースが空いてしまう。ボールを受けた渡邊は森谷へパスして、すぐさま右サイドを駆け上がる西岡(弟)へ。クロスは一旦はバイスが何とか食い止めるものの、PA内へ詰めた忽那が押し込みボールはゴールネットへ。愛媛は後半はサンガが前から来ることを予測していたかのようにそれを見事にひっくり返した攻撃を見せた。

サンガは後半に挑むモチベーションが完全に逆効果となってしまった。前半はある程度引き込んでボールが両WBに出たところを中盤の横スライドと最終ラインの縦プレスで挟み込んでいたが、ここでは金久保がポジションを捨てて前に出た位置が中途半端だった。

しかし、先制されたことで尻に火が付いたのか、サンガは怒涛の攻撃を見せる。

失点のきっかけとなった金久保が愛媛の1列目と2列目の間でボールを受けると、中央を果敢にドリブルで駆け上がる。一旦は愛媛のDFに止められそうになるもこぼれ球を宮吉が拾って、外にいたウタカへ。ここで冷静にゴール左隅を狙って蹴れるのがエースたる所以。岡本の届かない絶妙なシュートでサンガが同点に追い付く。

これでイケイケになったサンガは、荒木の中央へのドリブルからまたもやこぼれ球を宮吉が拾う。PA幅にいたウタカへパスをするとオーバーラップしてきた飯田へボールを渡し、クロスを上げる。そのボールは弾かれるが愛媛DFが弾いたボールがウタカの下へ。ウタカのシュートは一度は愛媛の選手に防がれるが、再び跳ね返ったボールを左足でシュート。そのボールはゴール左隅に決まり、サンガがものの数分間で逆転。あっという間の逆転劇であった。

もう後がない!となった時のチームとしてのスイッチONが非常にうまくいき、組織運用で相手を上回ろうとする愛媛を理不尽に殴るような時間だった。

その後のサンガは選手交代を交えながら守備時に5-4-1を形成。野田が最前線にいればボールをキープすることが出来るので、一人残しておけばよいという算段であろう。実際にその目論見は上手くいき、リードした時のオプションとしては計算出来る目途が立った。

愛媛は有田のシュートなど惜しいシーンもありながら同点のゴールは上げることが出来ず。サンガはこれでリーグ再開後負け無し、ホーム3連勝となった。


<勝てば正義・・・?>

ウタカの2ゴールで今季初の逆転勝利を収めることは出来たが、試合内容としては褒められるものではなかった。サンガはリーグ再開後は選手をほぼ固定して3-3-2-2のフォーメーションを継続して使っているが、選手の流動性という観点で見ても毎試合選手と配置を変えている愛媛の方が3-3-2-2を上手く使いこなしていた。愛媛の長沼と森谷(と、その参謀となる忽那など含め)のようにポジションをローテーションしながら相手の組織を崩していく姿勢は見られず、各個人の突破力とロングフィード、時折金久保のポジショニングの良さで前進出来ることがあった程度だった。

「勝てば官軍 負ければ賊軍」とはよく言われることだが、長いリーグ戦において上積みの無いチームは絶対に上位に留まり続けることは出来ない。

リーグ戦の早い段階でこのような刹那的な勝利に満足してはいけない、と気を引き締める試合になったとポジティブに捉えることとする。


ではまた。

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