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2022シーズンJ1第6節ヴィッセル神戸-京都サンガF.C.レビュー~J1で魅せたサンガスタイル~

皆さんこんにちは、Ryu-Yです。
インターナショナルマッチウイーク明けとなるJ1第6節ヴィッセル神戸-京都サンガF.Cのレビューをしていきます。

〇両チームスタメン

京都サンガF.C.-ヴィッセル神戸 スタメン

サンガはGKは上福元が再びスタメン。CBは今季初スタメンの井上とCBとしては初めてのスタメンとなる麻田のコンビ。両SBはここ最近の試合で目立ったプレーを見せている荻原と白井。アンカーはドバイ帰りの川﨑、IHに松田、福岡。両WGは開幕戦から攻撃面で良いプレーを見せている武富と復調してきた宮吉。CFにウタカという人選。新型コロナウイルス感染により8名もの選手が隔離を余儀なくされている中でも主力はほとんどピッチに立つこととなった。
一方の神戸はリュイス監督に交代して初めての試合。3バックも予想されたが、いざ試合が始まってみると4-2-3-1のフォーメーションであった。GKは飯倉、CBは菊池と槙野のコンビ、両SBに小林と酒井。ダブルボランチに山口とサプライズの大崎。両SHもやや意外な組み合わせで特に右の初瀬は普段よりも1列前での起用。左にボージャンを置いた。トップ下にイニエスタ、1トップは怪我明けの大迫という布陣となった。

〇スローペースな立ち上がり

試合開始からボールを保持しながらゲームを組立てようとしたのは神戸。最終ラインからボールを前進させようと試みる。しかし、この日の人選はどちらかというと対人守備に特徴を持つ選手が最終ライン、ダブルボランチを構成している為、サンガのプレスに対して上手く剥がして前進することが出来ない。サンガの守り方としては山口には松田、大崎には福岡、イニエスタには川﨑が基本的にはマークして、CBの2人はボールを持っても怖い縦パスは来ないのである程度自由にボールを持たせていた。時間を作れる選手は唯一イニエスタしかおらず、彼が少し自陣まで下りてきてボールを受けて相手を1枚、2枚とはがして何とか前進させようとしていた。また困った時の大迫も怪我明けということもあってかボールが収まらない。井上や麻田に競り負けるシーンが目に付いた。

槙野や菊池がボールを持っても効果的な配球(縦パス)は無かった。

チグハグな神戸に対して中盤でボールを奪う場面が何度かあり相手ゴールに迫りたいサンガだが、こちらのボール保持も思うようにいかない。神戸はボール非保持でイニエスタが1列前に上がる4-4-2で自陣に構えてブロックを組む。とはいえ大迫、イニエスタの2トップはほとんどボールの進行方向を制限出来ておらず、大きく開いた麻田と井上はほぼノープレッシャーでハーフウエーラインまでボールを前進させることが出来ていた。これまでのサンガはボールホルダーに強いプレッシャーを受けると途端に稚拙さが露呈してカウンターを幾度となく受けてきたのだが、この日の神戸はそのような戦い方は選択せず。チームとして失点したくない、自信の無さがここにも表れていると感じた。とはいえ、麻田、井上から配球されるのは1本で相手ゴールまで迫るようなロングパスばかり。結果的にその精度は低く、飯倉にみすみすボールを渡しているようなものだった。監督交代してもなおギアの上がらない神戸、活動停止明けでコンディションの上がらないサンガ。その結果、立ち上がりからスローペースな展開となった。

24分に武富がおそらく脚かどこかを痛めた影響で金子と交代することに。そのためサンガは松田が左WG、金子が右IH、福岡が左IHになった。

決定機は前半30分のサンガ。ボールを保持していた神戸が出しどころに困って最終ラインで各駅停車のサイドチェンジ。そこでチャンスと見るやサンガの選手たちはボールホルダーに次々とプレッシャーをかけ、松田、荻原、福岡の連動したプレスでボールを奪うと、相手CBの間に走り込んだウタカへ。完璧なトラップでGK飯倉と1対1になったが、すんでのところでGKがボールに触れゴールとはならず。その後は神戸もイニエスタの落としから山口のシュートなどチャンス自体は作り出したものの両チーム共にゴールネットは揺らせず0-0で前半を折り返すこととなった。

〇先制されても自分たちのスタイルを表現したサンガ

先制したのは後半4分の神戸。神戸のビルドアップを阻害しようとサンガの選手がボールホルダーにアタックし一度はボールを奪ったものの持ち上がろうとした白井のドリブルが大きくなってしまい山口に再び奪われる。そこから初瀬→イニエスタ→初瀬→ボージャンへのパスはお見事で、最後は初瀬がこぼれ球を押し込んだ。サンガにとっては自分たちのチャンスを自ら潰してしまってカウンターを受ける形になり、少し勿体ない失点になった。
しかしこの日のサンガはここから力強い戦いを見せる。神戸のCKから一度は弾き返してウタカからカウンターになりそうな場面を止められカウンター返しの展開に。嫌な流れで失点も覚悟してしまう場面ではあったが井上がクロスを弾き返すとボールは白井からウタカの下へ。彼のドリブルに対し逆サイドから上がってきたのは荻原。逆サイドにボールが渡るとさらにオーバーラップして追い越してきたのは金子。金子のクロスは相手DFにぶつかるが、そのこぼれ球をいち早く蹴り込んだのは荻原。嬉しいJ1初ゴールでゲームを振り出しに戻した。
更に印象的だったのはゴール後に誰も安堵の表情はしておらず、もっといけるぞ、逆転できるぞ、と力強い表情をしていたことである。特に荻原は本当は嬉しさも感情としてはあるだろうがそれを押し殺してチームとして勝つために切り替えてすぐに試合を再開させることにフォーカスしていた。このままもっといけるぞ、そうチームが感じていたことが福岡の試合後コメントからも読み取ることが出来る。

まず、オギが同点ゴールを決めた時に、「ここから畳みかけられるな」という雰囲気になった---福岡試合後コメント

京都サンガF.C. HPより

その雰囲気を味方につけ、一気に再び相手ゴールまで迫ったのはサンガ。自陣での決して美しいとはいえないパス回しから一度は相手に弾かれたものの再びボールはサンガの選手の下へ。ウタカに菊池が食い付いたのを見逃さないのはさすがの松田。よどみなくボールを敵陣深くまで運ぶと荻原のクロスは相手GKと福岡の丁度あいだに。飯倉は福岡が視界に入ってかボールをキャッチできずこぼれ球は宮吉の下へ。これをきっちり決めるのが宮吉で、わずか3分間で逆転に成功する。
同点に追い付いたゴールもこの逆転ゴールもまさしくサンガのスタイルを象徴しているもので、ボールを奪ったら相手陣形が整う前に相手ゴールに迫る、ボールホルダーをどんどん追い越して相手ゴールに迫る、昨年幾度となくJ2で相手に脅威を与えた攻撃的なスタイルをやっとJ1の舞台で見せつけることが出来た。決してコンディション面で万全とはいえない中でも全力で走ってゴールを奪ってみせたサンガの選手たちに心が熱くなった。

僕たちがボールを持てば次々と後ろから人が湧き出るような動きでゴールを決めていくところをこれからも見せていきたいです。---福岡試合後コメント

京都サンガF.C. HPより

「攻撃時は前に人数をかけてゴールを奪おう」というサンガのスタイルをしっかり体現し、ゴールに絡むことができたので良かったです。---荻原試合後コメント

京都サンガF.C. HPより

今日の福岡や荻原は、まさしくサンガスタイルの表現者だった。

〇センセーショナルなJ1デビューを果たした山田楓喜

逆転された神戸は汰木、中坂、リンコンといった攻撃的な選手を投入し打開を狙う。一方のサンガは福岡に代わってメンデスを投入し5-3-2にシステムを変更し逃げ切りを図る。神戸も最終ラインの中央に山口を落として3バックで前進を試みるがそこまで流れを変えるまでには至らず。むしろサンガがカウンターを仕掛ける場面も何度かあり、神戸のチグハグ感が強調される展開となっていった。

後半ATとなり選手交代で時間を使い、逃げ切り体勢に入ったかと思いきや、この日J1デビューとなった山田がセンセーショナルなゴールを挙げる。自陣深い位置でのスローインからボールを拾ったのはウタカ。ここでも中途半端に菊池が食い付いたおかげでフリックしてボールは松田、本多と繋がっていく。この日の松田の運動量も流石という他なく、ここでも菊池を振り切って敵陣ハーフスペース深い位置までボールを運ぶ。おそらくは間接視野で中にいる山田のことは見えていたのだろう、ボールキープで時間稼ぎは選択せず左足のクロスは山田の下へ。ゴール前まで突っ込まず一度立ち止まってフリーになった時点で勝負あり。J1リーグデビュー戦、ファーストタッチでJ1初ゴールという記録づくめのゴールで神戸を突き放し、開幕戦以来の勝利を決定付けた。

〇最後に

開幕戦以来の勝利となったサンガ。神戸のチグハグな戦い方に助けられた場面もあるとはいえ、特に得点シーンで自分たちらしい形を表現できたのは自信に繋がるのではないか。3得点奪えたこともポジティブな要素と言える。今後もリーグ戦+ルヴァンカップで過密日程となり、新型コロナウイルスの影響で離脱しているメンバーもいる中、今季初スタメンの井上の活躍やセンセーショナルなゴールを挙げた山田など、新たな戦力の台頭こそ厳しいJ1リーグを戦っていく為に必要不可欠なポイントである。

今季最後に振り返った時に、「ターニングポイントとなった試合だった。」

そう言える日が来るかどうかは未来の自分たちにかかっている。


ではまた。

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