究極の美味、仙台で初めてふぐコースを食べたら意外と安かった
我々がふぐを食べる理由(わけ)
2024年1月某日、音楽関係の仲間内でふぐを食べに行った。
結果、想像以上に美味であり、見た目も非常に豪華なコースだった。そのうえ思っていたより安く済み、大満足な一日だった。
年に一度、クリスマスのある週末に開催している「大金叩きつけて高級な食事をする会合」の4人のメンバーに相談して、今年はふぐに決定した。
夜は華やかにDJとして活躍している4名だが、昼間は一般的なサラリーマンである。薄給の身、何を食すかは慎重に選ばなければいけない。
予約、そして店へ向かう
過去2回はスッポンを食べて大変感動したが、今回は高級食材の代名詞、泣く子も黙る冬のふぐ。
しかも刺身、鍋、唐揚げ、フルコースで予約した。
これを頑張ったらふぐ、これを頑張ったらふぐ、と目の前にニンジンを吊るされた馬車馬のごとく、今まで辛いことを乗り越えて来た。ようやくたどり着いたんだ。
空腹を堪え、ラーメン大好き小泉さんで学んだ「ちょっとだけ何か食べると胃が刺激されて沢山食べれる」みたいなうろ覚えメソッドを活用し、愛媛産みかんを1個食べてからお店に乗り込んだ。
欠席者が出た
DJスガハル氏から仕事の関係で行けなくなってしまった、あとでお金払います、との連絡を受け、代打としてDJツナマヨ氏を召喚した。
彼はUKハードコアというジャンルをメインとしてDJ、作曲活動している期待の新人である。最近成人したばかりだ。来てくれてありがとう。
ふぐだらけのお通し
お通しとして運ばれてきたのはフグ、フグ、フグ。突然のフグ揃いでフグ特化ゾーン突入を告知された。いきなりフグ本番である。
どれも非常に美味であり、特にフグ皮あん肝和えは、濃厚で歯ごたえがあり、この小鉢だけでビール1本いけそうな味である。
煮こごりはポン酢で味付けされていて、さっぱりしているため箸休めにピッタリ。
寿司は「これがふぐだぞ!」と言わんばかり、厚めに切ったネタが乗っている。純白の身と紅葉おろしのコントラストがなんとも美しい。歯ごたえがあり、噛めば噛むほど味が出てくる。
店主と店員さんの間で、ポン酢かかってねえよこれ、いやかけましたよ、かかってねえよ、あーそっちか、というやり取りがあった。この店でふぐコースを頼むお客さんって、ものすごく珍しいのかな。
これが見たかったふぐ刺し
ミスター長嶋がガーッと取るやつだー!すんげー!
これを目前にはしゃがないのは無理があった。魚介和食では、舟盛り、塩釜焼きと同列、めったにお目にかかれない、テレビで見たことあるなんかすげえやつだからだ。
初めてのお客さんには、店主から食べ方を教えてもらえる。
ポン酢にお好みで紅葉おろしと刻みネギを落とし、刺身をつけて食べる。
真ん中にあるのは皮の3種類。
フグの皮は3層構造で、身に近いものから、
「身皮」
「とおとうみ」
「外皮」
と呼ぶ。
とおとうみという呼称の理由は、「身皮(三河)の隣は遠江」だから。ふぐが古来より食されていることを実感できるエピソードだ。
話は逸れるが、ふぐの刺身をてっさと呼ぶのは「テッポウの刺身」の略らしい。ふぐをテッポウと呼ぶのは「当たったら死ぬから」という有名な由来があるが、私はこれが大好きで、なんとも頭のネジが外れたファンシーな生死感のある表現だな、と見かける度に何度も味わい深さを堪能している。
「刺身にネギを巻いても食べれるよ、みんな残さないから美味しいんだと思う」と、極めて控えめな推奨もいただいた。なんでだ。
味は最高でした。優勝だよあんた。
比類なき歯ごたえと、淡白でありながら旨味に満ちた刺身である。噛んでる最中ずっと味がするので、言うなればめっちゃうまいガムだな、と思った。
同席している張本ことDJ Harryが「めっちゃうまいゴムみたい」と言った。いや惜しいなー。確かにゴムの方が近いよねー。
お察しのとおり、ふぐが美味すぎて言語野が破壊されている。
鍋が来る、今はいいのさ全てを忘れて(ガンダム)
ちみちみとふぐ刺しを食べていると、やがて鍋が運ばれる。
まずは刺身全部食べてね、と残酷な宣告をされる。次の料理で大皿を使うらしい(結局おたま置きとなって回収された)。一気に食べるのはもったいないので小皿に避難させた。
切り分けたふぐの部位説明が始まる。「カエル」、「ウグイス」、「くちばし」と、きまぐれクックで何度も見た名称と魚肉を生で見ている。幸せなことだ。
今日のふぐは1.2kgで、1匹丸々買い付けてるから全部の部位を使えるんだよ、と説明が終わった。あとは煮えるのを待つだけだ。
ここで同席していたDJツナマヨ氏が「美味すぎるので親に報告します」と言った。
ふぐを食べて、全部先輩に奢ってもらったんだよ、と20歳になったばかりの息子が嬉々として話し始める姿を想像して、自分が親だったら還付金詐欺グループの片棒を担いでないか心配になるよな、と思った。
煮えて食ったらうますぎた
めっちゃうまい。
加熱すると身質が柔らかくなり、ちょうどいい食感になる。割り下と野菜の味が加わり、臭みや癖がなく、グッと旨味が攻めてくる。
繊細で力強い味である。なんだか矛盾しているような表現だが、実際そうなんだよ。
口の周りの肉はコラーゲン質で、これが非常に美味。スッポン鍋を食べたときもコラーゲン質の部位があったが、味の濃さはスッポンの比にならない。ふぐは強靭である。
めっちゃうまい!めっちゃうまい!と連呼した記憶がある。自らの体験に対し、脳の整理が追いついてない状態だが、みんなと共有したい気持ちが勝った結果、狂人になってしまった。
雑炊も相当うまかった。そりゃあね、あんだけ骨入れたら極上の出汁になりますよ。
あらゆる唐揚げ界の頂点に君臨したフグ
鍋を食べている最中にふぐの唐揚げがやってきた。
(狂っていたので写真を撮り忘れました)
バイトの子が唐揚げでーす、と普通に持ってきた。なんだ、今回は店主の説明ないのか。
こちらも凄まじく美味。ふぐという魚は、とにかく魚自体の味が濃い。個人的にうまい魚の定義として、身の味が濃いことは重要事項で、身の味が濃厚だと強い味付けをしても負けないのである。
「キスの天ぷらより美味」とWorld Penis Organizationが語っていた。魚の揚げ物と言えばキスだが、あの香りと食感は天ぷらで食べるからこそ生きてくるもので、唐揚げにしたらニンニクや生姜、コショウに負けてしまう。そこを平気で蹴散らすのがこのふぐである。
硬すぎず柔らかすぎず骨がない、月並みかつ貧相な例えをすると、めっちゃうまいチキンナゲットである。最低だ。ふぐ様、ごめんなさい。
思いのほか安く済んだ
もう食えん、と皆が口を揃えて言い放つ中、お待ちかねの会計タイムである。
実はこちらのお店、客が一匹フグを購入し、店側で料理してもらうシステム、とwebサイトにある。
人数が増えると、1人あたり食べれる量は減るけど、負担する金額が安くなる。なかなか斬新だな、と感心しすぎると、遠回しに「時価」と伝えられていることに気付かない。
食事で感動している最中、うっすらと「時価」の2文字が脳裏をよぎり、少し冷静になる。美味すぎて狂うためバランスを取ることができてちょうどいい。
会計の伝票を見ると、26,000円台だった。
あれ、4人で割ったら1人あたり7,000円?ちょっと待って、酒もしこたま飲んで、もう食えないほどふぐ食べて7,000円なの?
Google先生に聞いてみたところ、ふぐは食事だけで1万円から3万円が相場とのこと。もしそうだとしたら、7,000円は激安である。お店の経営に大打撃を与えていないか心配になってくる。
もう閉店の時間らしく、店員さんたちが慌ただしい。名残惜しさはあるものの、さっさと集金して帰ろう、と財布を開けたタイミングで、私服に着替えた店主が「ありがとうございました」とこちらに深々と頭を下げ、帰った。帰るんだ。
美味しいものを食べると、頑張ろうという気持ちになる
一同大満足、余韻に浸りながら店を後にした。
消えるものに大金を払って何になるのか、不思議がる人もいるが、経験は何事にも変え難い糧であること、そしてなにより、美味しいものを食べると、自然と「これからも頑張ろう」という気持ちが湧いてくるのである。
しんどいこともありますが、たくさん頑張って、美味しいものを食べてお酒を飲みましょう。また来ます。こんなに安いなら毎月行ってもいいよな。
お店の情報
海鮮居酒屋 どん亭
仙台ラーメン二郎の向かい側にある、昭和居酒屋の雰囲気残る居心地のいい素敵なお店です。
ランチの海鮮丼も、上質な割に値段が安くて美味しい!
学生さんもよくいらっしゃるぐらいの価格です。
楽しい名物店主が最高!
ありがとうございました!
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