台風の裏

台風の夜
おれはしょうこの家の近くにいた。


城ヶ崎さんの用があるとかで

また、理由もわからずここで待機している。


コンビニにタバコを買いに行くと
サラリーマンが風に耐えて
ただただ突き進んでいた。
学生たちはひっくり返った傘で笑っている。

みんな駅に向かっているのに

何人かは逆に歩いて行く。

その中に

しょうこがいた。


気がした。


ここら辺に来ると

たまにしょうこが見えた気がして

目を凝らすことがよくある。

一瞬泣いているように見えたけど
雨が凄すぎて顔を拭っただけかもしれない。

しょうこじゃないかもしれない。

ケータイが鳴った。

「帰るわよ。」

「はい。」

どうせまた見間違いだ。

俺はいつも
しょうこを想っているから

いつも通り
しょうこに見えただけだ。


別れて5日。


俺はまだ正気だ。

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