別離の夜(完)
「じゃあ、行ってくるから。自由を満喫しすぎ無いようになさい?うふふ。」
城ヶ崎さんを成田空港へ送り、
俺は3日間自由の身となった。
しょうこのことを今すぐ見に行きたい気持ちは山々だが
この間の、車での再会が
あまりに衝撃的すぎて俺は
しょうこを見に行くことができなかった。
あまり近寄らないようにしていた。
ずっとそばにいてやれないのに
たまに姿を見せるなんて
しょうこが辛くなるだけだ。
俺はもう、亡霊として生きるんだ。
街を歩いていて気が付いたが
今日はこどもの日、か。
もう5月になってたなんて。
適当なカップ麺を買い、ホテルで食べて
また眠ることにした。
眠っていれば
勝手に時間は過ぎてくれる。
ピーポーピーポー。
サイレンの音で目が覚めた。
もう夜か。
外がやけに騒がしくなってきた。
救急車やら、パトカーが
何か、あったのか?
俺には関係のないことだ。
俺はそのまま、眠り続けた。
翌朝、ホテルのレストランで朝食をとっていると
やたらに他人の会話が耳に入った。
「昨日救急車、うるさかったわね!近くに停まったんじゃない?あの感じだと。」
「今朝あそこのアパートに黄色いテープ貼られてたわよ!」
「なーに!事件?!やーねぇ、物騒で!」
「うちも娘がいるから怖いわ!」
昨日の夜、何かあったんだな。
この辺にアパートなんて腐るほどある。
俺は飯を食い終わるとまた
部屋に戻って寝ようと思った。
何気なくテレビをつけると
「今日のおとめ座の運勢は、一位です!外を散歩するともっと運気アップします!」
しょうこ、お前今日一位だってさ。
よかったな。
俺は春の風に吹かれるしょうこの笑顔を
思い出しながら目を閉じた。
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