市場経済

 市場経済の世界的結合は、人口と領土の国家における関係性を激変せしめた。資源の乏しい国家が、輸出産業を自国内で活性化せしめれば、領土における超過人口も国際貿易によって獲得した外貨と外国の生産物によって国内で賄うことができるようになった。これは伝統的にドイツや日本などのとってきた政策であり、国内産業の保護を絶対条件にしているものであった。
 しかしたとえば、このようにして達成された超過人口の扶養は、常に自国の産業状態の良否によって左右されるものであり、保護貿易を国際的に禁じられて自国の輸出産業の国際競争力が低落したり、あるいは、輸出産業において集積された富が国家内において偏在的に分配されるようなことがあれば、扶養されていた超過人口がそのまま長期的には負担となって跳ね返ってくる可能性がある。これこそが、マキアベリのいうような通商による国家存続の危険性であり、これは現代市場経済の世界においても現実の現象なのである。
 もし、超過人口を賄うだけの経済状況が瓦解した時には、国家は二つの方途を迫られる。一つの超過人口の消滅を人口論的な現象によって隠忍すること。つまり、国家の政治的・領土的状態に何も変更を加えないで危機を超克するということである。二つ目は、超過人口を養うという目的を何が何でも達成するために、社会構造を変転させること、あるいは超過人口を養うための領土を軍事的手段において拡大することである。


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