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絵本を学ぶ📘続き

夏の音 
暑さを凌ぐ工夫をしながら夏を楽しみたいと思う。日本の懐かしい風景や音に涼しさを感じることがある。
絵本の夏も楽しみたいなぁ・・・

絵本探究講座③

オンライン絵本会代表 東洋大学准教授竹内美紀先先生ことミッキーの絵本ゼミ。

絵本の学びを広げるために・・・

・基本的なコンセプトを知っておくこと、道具を持つことは強みとなる。
・多様な読み方をしていくと多様な本を紹介できる (ミッキー先生より)


前回のゼミ課題では4つの分類を意識して絵本を選び、今回は技法に注目し絵本を選んだ。どんな技法が使われているのか?絵本の絵とテキストを読む。

【技法が特徴となる絵本】


道具として技法の専門用語を学ぶ。
今まで何となく面白い構成だな、と思っていた絵本が技法を知ることで作者の表現したいことがより伝わってくる感覚を覚える。

『絵本の絵を読む』
ジェーン・ドゥーナン
正置友子・灰島かり・川端有子 訳 玉川大学出版部


『絵本の絵を読む』より

芸術は科学ではないため、用語の多くは、使われかたにも意味にも幅があります。
したがって、この用語集は、ひとつの目安として使ってください。(中略)知っていれば、絵本をしっかり見ようとするとき、また話し合いをしたりレポートを書いたりするときに役立ちます。
役に立つ用語集(p.134 引用)

絵本を見る際に役立つ専門用語の説明を、ミッキーさんの絵本の解説を聞いた後に用語集を見返すことで、専門用語が絵本の中で何を示しているかよく分かった。

今回学んだ技法、専門用語の中から

・タイポグラフィー
使われている活字の大きさ、形、種類、レタリングの配置、行間の幅など1冊の本
の中の文字に関するデザインのこと。

・裁ち切り
1枚の絵が絵本のページをはみ出して見える場合、「絵が裁ち切られている」という。裁ち切りが使われていると、描かれている世界がページの境界を超えて広がっているように感じられ、読者は描かれていることをただ観客として見ているというだけでなく、絵本の世界にもっと入りこめるようになる。

・ノド
見開きの真ん中、本の綴じ目の部分。ノドの辺りはページが綴じてあったり、のりでくっつけられているため絵が隠れてしまう部分が出る場合があるので、この部分に大切なものがこないように構図的に工夫が必要になる。

・ビネット
独立した小さなデザインやイラストのこと「カット」

・版型
本の大きさと形状のこと。一般的には縦長版と横長版。

絵本にどんな技法が使われているのか、その技法によってどんな効果が出ているか、
それぞれに選んだ絵本をグループで発表した。
私の選んだ絵本は2冊。

『がっこうにまにあわない』
ザ・キャビンカンパニー 作・絵
あかね書房 2022年 6月

『よいひ わるいひ』
ローレンス&キャスリーン・アンホールト ぶん・え
ほしかわなつこ 訳
童話館出版 2013年 2月

『がっこうにまにあわない』

(使われていると思われる技法)
・裁ち切り・はみだし・タイポグラフィ・判型

寝坊してしまった主人公。学校で金環日食を観察する時間までに到着をと学校へ急ぐ。とにかく全速力で真剣に走る表情、力いっぱい地面を蹴って走る様子を「裁ち切り」「はみ出し」により強調させている。顔、足元がクローズアップされ迫力とスピード感を感じる場面になっている。

学校までの道のりがいつもよりも遠く長く感じて焦る気持ち、学校に到着するまでの心境と時間経過がタイポグラフィで表されている。時刻の数字は大きな文字で強調され、走って学校に到着するまでのことば、文章は判型(横長)の絵本の下に帯のように書かれている。文がこの位置にあることにより、めくっていくと時間の流れを感じる。


『よいひ わるいひ』

(使われていると思われる技法)
・ナラティブ・見開きの使い分け(レクト:右ページ/ヴァーソ:左ページ)・コマ割り

日常の様子がコマ割りで描かれている。

見開きの使い分けにより、呼応させている。
「かぞくには、よいひもあれば、」ヴァーソに家族それぞれのよかったことに対して
「わるいひもあるものです。」とレクトには家族それぞれのよくなかったことが描かれる。

「たのしいひも あれば、」ヴァーソ 
「かなしいひも あります。」レクト
「はたらくひも あれば」ヴァーソ  
「あそぶひも ありますし」レクト

と続き日常の様々な出来事は、よい日もあればわるい日もある、どんな人にも他の人と同じ日はないことが、コマ割りで表されている。


先日、幼稚園の子どもたちに絵本を読んでいた時に効果的に技法が使われていると思った絵本

『じゃぐちをあけると』
しんぐうすすむ さく 福音館書店 2004 4月

『じゃぐちをあけると』

(使われていると思われる技法)
・裁ち切り・ノド・視点

じゃぐちをひねる場面から始まり、ページをめくると、裁ち切りで水道が描かれ実物を思わせる大きさ。ノドに描かれた蛇口から勢いよく水が出てくる。蛇口から出てくる水を指でさわったり、水を両手でたたいてみたり、コップやスプーンを充てる。すると水のしぶきは形を成す。蛇口から出てくる水がノドに描かれることで、まっすぐ下に勢いよく水が出る様子が強調されている。その直線的な水の勢いに対して、触ることでできる水しぶきや形、水の変化もわかりやすい。
裁ち切りの技法、聞き手の視点で、水道が自分のすぐ前にあるように感じる。

絵本を読んでいる途中、子どもたちが手を伸ばし「おみず、さわりたい」と呟いていた。
本当にじゃぐちから水が出て見えていたような子どもたちの様子、呟きに水の冷たさをも感じられるようだった。

【子どもたちはどのように絵本読むのか】


・語りと絵本
語りは耳で聞いてお話を膨らませる、想像してお話の絵を描き記憶に残す。
絵本のように絵があるとお話を想像して膨らませた後に、また絵を見ることで想像の世界から戻ってくることができる、語り(素話)と絵本ではこのような違いがある。

・主体性を持って読む絵本
子どもが主体的に読む絵本は、絵が子どもたちをひきつけ、絵を読む子どもたちのつぶやきが聞こえる。複数のギャップをちりばめた絵本は子どもの主体性を育てる。

・絵本と文字
自分で文字が読めるようになると絵を読むことが退化してしまう。
読み聞かせをたくさんしてもらった子どもは文字が声で聞こえてくる。
読んでもらった人の声(お母さんの声)が聞こえる。文字を見ると映像で浮かんでくる。

この絵本と文字の関係で長野県の「ちいさいおうち」主宰の越高一夫さんからお聞きした娘さんのお話を思い出した。娘さんが著書を出版されるきっかけにもなったこととして、児童、幼年時代の読み聞かせをしてもらった体験が根本にあるそう。親に読んでもらい耳から入った想像力は文字が読めるようになった時に記憶としてよみがえり、何度も読み聞かせしてもらったことで、自分で本を読めるようになった時に、文字を追っていても絵が自然に頭に浮かんできたそうだ。

読んでもらっていた時の声は記憶に残っていて、おはなしと共に聞こえてくる。本を自分で読めた!と喜びに繋がる。

『絵本のつぎになに読もうか?幼年童話と過ごした日々』
越高綾乃
かもがわ出版 2022年6月



【絵本読み聞かせの記録】

ミッキー先生ご自身の子育て中にお子さんに読み聞かせをしていた時の記録から当時読んだ絵本と子どもの様子をお話してくださる。幼い頃の不安な気持ちが揺らぐ幼少期から成長期、大好きな母親、絵本の存在は大きかったことだろう。ミッキー先生のお話に思い出す我が子のこと、家のこと、絵本がきっかけになって記憶をたどれることもある。

私はそこまでの記録をしていなくて残念なのだが、とにかく夜寝る前の毎晩の絵本時間は欠かせず、今も大事に思う時間だ。あの時間があったからこそ、と思うことが幾度となくある。また、記録は何に対しても大事だなと痛感。


子どものそばに絵本があることで、経験が継続したり、意欲をかき立てたり豊かな時間を生み出すことになったり、その子にその子によって違うところが良いと思う。
絵本がそばにある暮らしの良いところ、絵本の魅力をゼミの学びを通して子育て中のお母さんたちに伝えていきたい。

次回のゼミの課題は「読者年齢と絵本」
絵本は子どもから大人まで誰でも楽しめるが、子どもはどのように絵本を読むのか自分の体験を含めて考えてみたい。

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