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#聴いてみた Beethovenのピアノ・ソナタ「告別」

NHKFM「音楽の泉」の Beethovenのピアノ・ソナタ「告別」 を聞き逃し配信で聴いてみた。

曲目

ピアノ・ソナタ 第26番 変ホ長調 作品81a「告別」
イゴール・レヴィット(ピアノ)
作曲: ベートーベン(15分22秒)
<ソニー・ミュージックエンタテインメント SICC 30533-41>
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ピアノ・ソナタ 第24番 嬰ヘ長調 作品78
イゴール・レヴィット(ピアノ)
作曲: ベートーベン(9分29秒)
<ソニー・ミュージックエンタテインメント SICC 30533-41>
告別とほぼ同じ時期に作曲されたピアノソナタ第24番嬰ヘ長調をお送り致します。
アダージョ・カンタービレと記された序奏からしてこの上なく美しいソナタ。
Beethovenは古典派では珍しいこの嬰ヘ長調によるソナタで、モチーフ、動機の展開から離れ、カンタービレ様式を極めました。
歌心を大切にしたわけです。
楽章は2つ。リート、歌曲のような調べが聴こえてきますが、劇的な推進性の魅力となります。
曲は弟子の1人、テレーゼ・フォン・ブルンスヴィックという伯爵令嬢に献呈されたことから、「テレーゼ」と呼ばれることもあります。

ピアノ・ソナタ 第25番 ト長調 作品79
イゴール・レヴィット(ピアノ)
作曲: ベートーベン(9分9秒)
<ソニー・ミュージックエンタテインメント SICC 30533-41>
続いてBeethovenがソナチネと呼んだピアノソナタ第25番ト長調をお送り致します。
先程のソナタ第24番、今日最初に聴いて頂いたソナタ第26番「告別」とほぼ同時期の作品です。
Beethovenにはいくつかソナチネとして親しまれているソナタがありますが、彼自らソナチネ、愛らしいソナタ、優しいソナタと命名したのはソナタ第25番ト長調だけです。
第1楽章にPresto alla tedescaという珍しいイタリア語が記されています。
ドイツ風のプレストと言う意味です。
テンポの速い3拍子のレントラー舞曲が聴こえてきます。
カッコウの鳴き声を思わせるフレーズもあり、それでこのソナタは「カッコウ」と呼ばれることもあります。
曲はドイツ風舞曲の第1楽章、舟歌のスタイルによる第2楽章、あっという間に終わる楽しい第3楽章からなっています。

ピアノ・ソナタ 第8番 ハ短調 作品13「悲そう」から 第3楽章
河村尚子(ピアノ)
作曲: ベートーベン(4分39秒)
<Sony Music Labels SICC 19041>
最後にBeethoven若き日の肖像とも言うべき、ピアノソナタ「悲そう」のフィナーレをお送り致します。
「悲そう」はBeethovenが付けたタイトルです。

曲解説(奥田佳道先生解説からの抜粋)

🖊今朝はBeethovenのピアノソナタ第26番変ホ長調「告別」をお送り致します。
(♪~)第1楽章の主部アレグロが始まった所を少し聴いて頂きました。
第1楽章はアダージョの序奏とアレグロの主部で構成されています。
Beethovenはこの楽章の自筆譜に次のように書き込みました。
「告別」1809年5月4日ウィーン、敬愛するルドルフ大公殿下の出発に際して、
そしてBeethovenは第2楽章に「不在」、
第3楽章に「再会」敬愛するルドルフ大公殿下帰還、という言葉を添えました。
「告別」「不在」「再会」、これらは優れたピアニストでBeethovenの作曲の唯一の弟子でもあったウイーンのルドルフ大公が戦乱を避けてウィーンを一時離れたものの帰ってきた、彼と再会したという敬意を示すものです。
ルドルフ大公はBeethoven最大のパトロン、2人は深い絆で結ばれていました。
Beethovenはピアノ協奏曲第4番ト長調他をルドルフ大公に献呈しています。
1809年春、ナポレオン率いるフランス軍がオーストリアや現在のハンガリーに進軍、ウィーンの貴族はそんなナポレオン軍から逃れる為、地方都市に避難し始めます。
ルドルフ大公も1809年5月4日に皇族一族と共にウイーンを出発しました。 ピアノソナタの第1楽章に記された「告別」はこの曲がルドルフ大公のウイーン出発直後に書かれた事を示しています。
因みにBeethovenは当時の習慣に沿ってこのソナタを『性格的なソナタ』と呼びました。
『性格的』とはどういうことでしょうか。
Beethovenは自作の交響曲第6番「田園」について、『性格的な交響曲』又は『田園生活の思い出』、絵画的な描写ではなく、感情の表出と説明しましたが、ピアノソナタ「告別」でも出来事を具体的に描写するという訳ではなく、個人的な感情の発露を大切にしたのでした。
尚、1809年5月にウイーンを離れたルドルフ大公は、戦争終結後の1810年1月にウイーンに戻っています。
「再会」と記された第3楽章を少し聴いてみましょう。
(♪~)この愛すべきソナタは1811年にライプチヒの音楽出版社から初版の楽譜が出ましたが、出版社はBeethovenがドイツ語で書いた「告別」「不在」「再会」をフランス語に置き換えて出版しました。
フランス語表記は当時の出版の慣例とは言え、Beethovenはルドルフ大公への想い、献呈の言葉はドイツ語でこそ活きると、出版社の書き換えに抗議しています。
彼はドイツ語の「告別」”Das  Lebewohl”という言葉は1人の人間に対して心を込めて言う言葉、それに対しフランス語の「告別」"les adieux"という言葉は集まった多くの人々に向け街中に発する言葉である、意味が異なると抗議したのでした。
3つの楽章からなるピアノソナタ「告別」は交響曲第3番「英雄」、ピアノ協奏曲第5番「皇帝」と同じく変ホ長調を基調としています。
5線譜にフラット記号3つの調で、変ホ長調は平行調のハ短調と共にBeethovenの勝負キーでした。
因みに「告別」と同時期に書かれたピアノ協奏曲第5番「皇帝」もルドルフ大公縁の作品です。
大公はこのコンチェルト「皇帝」を弾くほどのピアニストでした。
作曲家としては室内楽曲や変奏曲が知られています。
それではBeethovenが敬愛するルドルフ大公に捧げられた個性的なソナタをお送り致しましょう。
第1楽章「告別」第2楽章「不在」Andante espressivo ハ短調、そして
第3楽章「再会」です。
Beethoven作曲ピアノソナタ第26番 変ホ長調 作品81a 「告別」
ピアノ:イゴール・レヴィット
2018年の録音、全3楽章、15分ほどのピアノソナタをお楽しみください。

🖊Beethovenのピアノソナタ「告別」を聴いてみて

Beethovenの名曲をイゴール・レヴィットのピアノで聴く。
作品の大切なエッセンスを実に精緻に軽やかにそして多幸感と共に伝わってくる。
クラシック音楽の良い所は昔の出来事がまるで今起きているかのように想像できる、共有できる所だと思うが、それも名演奏家あってのこと。
彼の演奏を他にも沢山聴いてみたい。






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