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1泊2日サイコロきっぷ餘部の旅

大阪市内発着で西日本のどこかに往復5千円でいけるサイコロきっぷがあると知り購入してみた。尾道ならしまなみ海道、東舞鶴なら伊根の船屋、白浜でパンダを見るのもいいなぁと考えながら画面上のサイコロを振ってみる。餘部だ。まさか兵庫県内とは、博多が出たらあわよくば実家に帰れるなどと甘い考えだった。しかし餘部鉄橋へは行ったことがないし城崎で途中下車もできるので気を取り直して計画を練ることにした。宿泊先を探してみたが一人で泊まれるような宿はそう多くない。さらに全国旅行支援も重なって空きが無さそうだったので日帰りで行こうと時刻表を調べてみた。特急に乗れるのは城崎温泉駅まで、城崎温泉から餘部までは鈍行だ。その城崎温泉から西に向かう時刻表の中に見つけた鳥取の文字。行くしかない。

1日目

08:09 新大阪発 こうのとり1号 城崎温泉行
 ↓
10:58 城崎温泉着
11:56 城崎温泉発 JR山陰本線 鳥取行
 ↓
13:54鳥取着
14:10鳥取発 日の丸運行 砂丘行
 ↓
14:31砂の美術館前着

16:50鳥取砂丘ビジターセンター前集合
 ↓ 鳥取砂丘ミステリーナイトウォーク
19:30

前日仕事から帰ったのが深夜12時。洗濯と荷造りをして3時就寝。6時20分に起床して出発。新大阪から城崎までの3時間は殆ど寝て過ごす。城崎温泉に到着したら脇目も振らずに大幸商店へ向かい海幸丼を食べる。駅に戻って鳥取駅行きのオレンジ色の汽車に乗り込む。ここからのお供は小川糸のライオンのおやつという本だ。途中餘部駅で停車すると車内のほとんどの乗客が降車して行った。近くにいたおじさんが驚いて何故こんなにこの駅で人が降りて行くのかと聞いてきたので、サイコロきっぷについて簡単に説明した。おじさんは不思議そうに席に戻って行ったので再び本を読む。鳥取駅まで一気に読んだが色々な思いが巡る内容で不覚にも泣いてしまった。このご時世柄マスクをしているので周りの人にも気づかれまいと鷹を括って泣きながら読んだ。側からみたら女一人の傷心旅行とも思えるヤバい女に映ったであろう。
鳥取駅に着いたら駅の観光案内で砂の美術館の割引切符を買い、丁寧なバスの案内を受ける。バスに揺られ砂の美術館へ、砂で出来ているとは到底思えないほど作り込まれた繊細な模様や人物の表情に驚かされた。今日のメインであるミステリーナイトウォークまで少し時間があったので一足先に砂丘に向かうことにした。砂丘へ向かう階段をおりると辺り一面の砂。砂が多すぎる。馬の背を目指して歩く、最初は少し下って平らな道だが、頂上への坂は急で砂に足を取られて歩きづらい。秋にしては暑い日だったので汗だくで登りきった。最高の眺めと強い風がとても気持ち良い。残りの体力に不安を残しつつお土産屋さんに戻り、梨ソフトを食べる。
集合時間になったので鳥取砂丘ビジターセンターへと向かうと年配の夫婦に声をかけられた。聞くと2人はツアーガイドで参加者は私1人だったのだ。事前のメールで本来ならば2人以上の参加しか受け付けていないが特別にと言ってくださっていたので、他の参加者もいるのだと思い込んでいた。申し訳ない気持ちでいっぱいになったが、せっかくここまで来たのだから存分に楽しませてもらう。サンダルに履き替え砂丘へと向かう。砂丘の風紋や植物、虫の説明を聞きながら砂丘を歩き沈む夕日を眺めた。日が沈み暗くなるとシートを敷き寝っ転がって星を眺める、最初は雲がかかっていたが、だんだんと星が見えてきた。満点の星空という訳には行かないが普段見えない星まで見えている。星取県と謳っているが中々星を綺麗に見るのは難しいらしく、この日は運が良かったのではないだろうか。日中は暑かったが18時を回ると冷え込むのでフリースを1枚着込んで出してくれたコーヒーを飲む。なんて贅沢な時間なんだろうか、このまま何時間でもこうしていたいと後ろ髪を引かれながら砂丘を後にする。足を洗い、車で鳥取駅まで送ってもらう。道中鳥取城や餘部鉄橋のウンチクまで教えていただいた。なんでもジオパークのガイドをやっているので詳しいらしい。駅でお別れして晩ごはんを食べに駅近くのくさかべというお店に。お目当てのモサエビを注文すると刺身と焼きの半々で用意してくれた。ハタハタや自家製豆腐の冷奴を食べていると店主が蜂の子の佃煮を出してくれた。ザビーハイブというカプセルホテルに宿泊。シャワーを浴びて1時前に就寝。

2日目

08:05鳥取発 岩美岩井線 岩井行
 ↓
08:44島めぐり遊覧船のりば前着

9:30
↓ 浦富海岸島めぐり遊覧船
10:10

10:47島めぐり遊覧船のりば前発
 ↓
11:26鳥取着
13:19鳥取発
 ↓
14:26餘部着
16:21餘部発
 ↓
17:01城崎温泉着
18:53城崎温泉発
 ↓
21:44新大阪

5:20起床、身支度を整え5:45にチェックアウト。歩いて30分鳥取城へ向かう。本当は本丸まで行きたいのだが時間がないのと熊注意の看板に恐れをなして天球丸を目指す。霧がかった市内が一望でき気持ちの良い朝だ。今日も天気が良い。急いでホテルに戻ってホテルに併設のすなば珈琲でモーニングを食べる。駅へ向かって3番乗り場から33系統に乗り込む。この時点で遊覧船の運行状況を確認したがまだ更新されていなかった。前の週は波や風の影響でほとんど運行していなかったが到着するとどうやら今日は大丈夫らしい。だが船に乗ると少し不安になった。日本海の波に耐えられるのだろうかと、なんだか少し気持ち悪い気がしてきた。酔い止めを持って来れば良かったと後悔しつつも出発の時間になった。今日の波は40センチと船長が言うが喜んで良いのか分からない。そんな不安をよそに船はどんどんと進んで行く。日本海の荒波に削られて出来た奇岩は迫力満点。そしてなんといっても透き通る岩美ブルーの綺麗なこと。底まで見えるその水深は5メートルもあるのだとか。時より横から波を受け、船が大きく揺れるが遠くを見てやり過ごした。荒れやすい秋の日本海で遊覧船に乗れたのはとてもラッキーだったとウキウキしながら鳥取駅に戻り、駅近くにある村上水産で鳥取よくばり定食を食べる。いかにも観光客向けのメニューだが、モサエビとノドグロ、白イカが食べられて満足した。お土産を買っていよいよ餘部へ向かう。鳥取から餘部へ向かう乗客は多くはなかったが乗り込む人の行列が駅で待ち受けていた。ホームへと降りると日本海と広い空が広がっている。スケルトンのエレベーターで下まで降りる。展望台へと続く階段を登り、14:56にやってくる浜坂行きの汽車を待ち構えて写真に撮った。オレンジ色の車体が映えてとても格好が良い。展望台を降りて道の駅あまるべに向かう。イカや魚の独特な顔出しパネルがいくつも設置されている。餘部の滞在時間は2時間弱、時間を持て余すかなどとの心配は無用であった。建物の中には山陰のお土産物や喫茶スペース、餘部鉄橋の解説コーナーがあり、それらをゆっくり見てまわると時間はあっという間に過ぎた。駅に戻り同じくサイコロきっぷでここまで来たであろう人たちと電車を待つ。そろそろ旅も終わりを迎える。城崎温泉駅に降り立ち、賑わう温泉街を横目に柳湯へと急ぐ。料金を払うと、湯が熱くて深いがそれでも良いかと確認された。それを目当てに来ているので無論問題ない。身体を洗い湯船に浸かる。熱い湯が疲れたからだに沁みる。ゆっくり温泉を楽しんだ。帰りの電車の時間が近づいてきたので、駅弁を買って車内で楽しもうと柳湯を出て駅へと向かう。先程まで賑わっていた温泉街は人もまばらで店もほとんど閉まっていた。駅に着き、売店を覗くと弁当は売り切れていた。まさか晩ごはんを食べ損ねるなんて、私は昔から詰めが甘いのだ。いや、これまでの旅程が順調すぎたのかもしれない。次はどこへ行こう、夏の山陰も悪くなさそうだと考えながら帰路についた。 

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