人間関係と人生とは-『イニシェリン島の精霊』#映画感想
本作は第90回アカデミー賞で6部門7ノミネート・2受賞を果たした『スリー・ビルボード』のマーティン・マクドナー監督が自らのルーツであるアイルランドの孤島を舞台に、壊れゆく人間関係をサスペンス仕立てに、時にはユーモアも持たせながら、行き着く先を全く予想させないストーリーで描いています。
今年のアカデミー賞では主要8部門9ノミネートと大注目の作品となっています!
作品詳細
主要賞レース
本作の邦題は『イニシェリン島の精霊』ですが、原題は『The Banshees of Inisherin』となっており、直訳すると「イニシェリンのバンシー」。
バンシーとは、アイルランドおよびスコットランドに伝わる妖精で、
人の死を叫び声で予告すると言われているそうです。
そんなバンシーが漂う孤島で、パードリック(演:コリン・ファレル)は親友のコルム(演:ブレンダン・グリーソン)より突然絶交を告げられます。
そこから始まる物語に、マーティン・マクドナー監督が伝えたかったこととは。
親友の仲違いから写しだすもの
舞台は、1923年アイルランドの架空の島、イニシェリン島。
当時のアイルランドはイギリス独立後、内戦が行われていました。
孤島のイニシェリン島は内戦とは無縁ですが、遠くに見える本土からは、爆発音や銃声が響いてきます。
孤島の住人は、まるで他人事の様に見ている内戦ですが、パードリックとコルムの仲違いを写す、写鏡になっているんですよね。
特にイニシェリン島は、人口も少ない全員が顔見知りの島ですから、二人の仲違いはすぐに知れ渡り、他の住民にまで巻き込んでいきます。
まさに「戦争」も人間関係の小競り合いが、国レベルに変わったものです。
時には関係ない人たちも巻き込みます。人間関係が与える影響はあまりにも大きいのです。
温厚で純粋な性格のパードリックの変わり様には心が悲しくなります。
人生の目的とは
コルムの絶交したい理由には、共感できる部分があります。
(正直、絶交はしなくても・・・とは思います。笑)
これはコルムだけでなく、パードリックの考えにも共感・同意が出来る点があり、どちらに傾くかでその人の人生観が見える面白い作品にもなっています。
人間関係から始まり、人生の生きる目的という大きな問いかけも我々に投げかけてきますが、マーティン・マクドナー監督は決してそこに対して答えを提示するような作品にはしていません。
インタビューでも「これは、破局の話。その辛さを正直に語ってみたかった。」と答えていました。
この難しいテーマを実力派俳優で固めた訳ですから、そりゃ賞レースに大きく絡んできますよね。
アカデミー賞、今年も楽しみです。
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