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[バビルサ]自らの死を見つめる動物

基本情報

分類:イノシシ科バビルサ属 
学名:Babyrusa babirusa                                
生息地:主にインドネシアのスラウェシ島とその周辺の諸島
   (図中の赤塗り部分)                             
体長:85cm~105cm                                              
肩高:65cm~85cm                                        
体重:60kg~100kg
   体格はイノシシに近め
主な種類:Buru babirusa, North Sulawesi babirus,
                  Togian babirusa, Bola Batu babirusa
     ※正式な和名はついていない

絶滅危惧種として希少なバビルサ

世界に4種しか存在しないバビルサ属の生物であり、4種すべてが絶滅危惧種に指定されています。その希少性ゆえインドネシア国内の法律やワシントン条約発効当時から保護の対象となっており、日本国内の動物園にも飼育されていません。
残念なことにバビルサはワシントン条約で最も管理が厳しい「付属書Ⅰ」に指定されており、バビルサの取引は研究目的のみかつ輸出・輸入国双方の同意が必要となっています。
そんなバビルサは現地のインドネシア以外ではシンガポールの「シンガポール動物園」やアメリカの「ロサンゼルス動物園」などごく少数の動物園で飼育されている姿を見られるようです。動物園の紹介ページを載せてみましたので気になる方はご確認ください。


毒すらも食らう雑食性

基本的には雑食で果物、ナッツ、虫、魚、キノコ、樹皮などいろいろ食べますがとりわけ変わった食性として毒性の青酸化合物のシアン化水素(ヒトならわずか200mgほどで〇ぬ)を含むバンギノキを食べることがあります。
このバンギノキはほかの動物に狙われにくいことや1~2個でバビルサの1日分の栄養を補うことができるメリットがあり、またバビルサはこの毒を泥を食べたり温泉地帯の水を飲むことで中和することができるようです。
ヒトがバンギノキを食べたらただじゃすまないのでマネしないことを強く推奨します。

迷信?バビルサは自らの牙で自らを殺めてしまうのか

バビルサのオスの牙(正確には上アゴの犬歯)は生涯にわたって伸び続けます。この犬歯が伸び続けるのは、バビルサのオスがメスに対して「牙が長ければ長いほどモテて子孫を残せる」という生態による進化の結果であると考えられています。ちなみにこの牙はあまり頑丈でなく、脆く折れやすい牙であるためセイウチのように闘争で用いるなどといった用途ではとても扱うことはできないでしょう。
しかし、牙が伸び続けたことで上の写真のような標本が残されています。
これを見てバビルサは「自らの牙で自身を死に至らしめるのではないか」と思う人もいるかもしれません。ですが現状バビルサ自身の牙が死因となり死に至ったケースは確認されておらず実際の死因となるかは謎です。

だいたいは自分に刺さらずカーブして伸びていくらしいです..

バビルサの迷信の由来

"...but the two upper rise from the upper jaw, rather like horns than teeth; and, bending upwards and backwards, sometimes have their points directed to the animal's eyes, and are often fatal by growing into them."

「上の2本の牙は上あごから伸びており、これは牙というよりもまるで角のように見える。それが上に伸び、そのまま後方へと曲がっていく。稀にこの牙は、バビルサの目に刺さり、そのまま伸び続け、この動物を死に至らしめる」

バビルサの迷信の由来はアイルランドのイギリスの詩人・作家のオリヴァー・ゴールドスミス(1730~1774)の書『A History of the Earth and Animated Nature』に登場する上記の記述が由来とされています。
ですが先ほど述べたように牙が伸び続けてバビルサが死んでしまうことはあくまでごくまれにあり得るかもしれない程度の憶測であり、事実として確認はされていないため信じるか信じないかはあなた次第といったところです。

余談~バビルサを知ったきっかけ~

https://diverse.jp/dvsp-0232/

私がバビルサを知ったきっかけはFeryquitous様のアルバム『白戒』に収録されている「Meltel」という曲の歌詞からです。
この曲はとても詞的で語り掛けるようであり、言葉が、感情が、世界が波のように押し寄せて来る唯一無二の味わいがとても好きです。

参考など


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