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10. 小説MCH - フレアと父「村長さんの紙芝居」(修正ver.4 2024/1/2)

「あ!村長さんの "紙芝居" はさ、本当におもしろいんだよ〜!

 "いきます!いっきま〜す!"
 とかいいながら始まってさ。そこには父ちゃんも出てくるし、ボクの友達もみんな大好きでさ。いつもみんなで広場に集まって、一緒に見るのが楽しいんだよね〜」

 それまで真剣に父の言葉に耳を傾けていたフレアは、急に思い出したように、毎週末の楽しみを父にうれしそうに報告した。

「おっ?あの村長の紙芝居に、最近はオレも登場しているのか?それは知らなかったなぁ」

 父は少し照れたように笑いながら、息子に向かって言葉を返した。

「うん。父ちゃんの子供の頃の話に、今でも少しずつ描き足していってるみたい。

 こないだなんてさ、"わしは、10,000枚まで描くぞ〜!" とか言っちゃってたからさ、
  "さすがにそんなにあったら、全然話が終わらなくなっちゃうじゃん!" って、みんなでツッコんできたとこ。
 それでもさ、村長さんの紙芝居はとにかくおもしろいから、ずっと聞いていられちゃうんだよね」

 笑いながら楽しげに話すフレアの表情を見ていると、この村長が、子供たちにどれほど愛されているのかがよくわかる。

「"...そんなある日、ラルフの 『しずく』が、首元から、ふわっと浮き上がり、真紅のひかりを解き放つ!"

 "そうだ!それこそまさに、新しい 『炎のヒーロー』が誕生した、まさにその瞬間さ"

 "ゆけ!炎のヒーロー、ラルフ!
 飛べ!ボクらの英雄(ヒーロー)、ラルフ〜!"」

 フレアは、高く掲げた右手の握りこぶしを仰ぎ見るように、天井を見上げてポーズを決めた。

 ——— 決まったっ!
 満面の笑みで見事にそのラストシーンを再現しきったフレアは、興奮気味にさらに言葉を続けた。

「父ちゃんのこの最後のシーンが、めちゃくちゃカッコよくってさぁ。いつも最後は、村長さんの掛け声に併せて、みんなでこのポーズを決めて大合唱するんだよ」

「お〜い、村長よ〜い!
 あなたは子供たちを集めて、なんてことをやらせているんだ〜w」

 ——— いやそもそも "飛べ" って言われたところで、実際に俺は空を飛べないしなぁ...

 突然、紙しばいの出演者に抜擢されたラルフ本人は、思わず吹き出しながら、小さくツッコミをいれる。

「えー、父ちゃん、空飛べないの〜!?ずっと空を飛べるんだと思ってたw」

 笑いながらフレアは父の顔を覗き込む。まさに村長の創作のたまものである。

「...まぁでも、お前たちが楽しんでくれているんだったら、それでもいいか」

 少しだけ間をおいたラルフは、結局笑ってそう言葉を返した。

「うん、確かにね!」
 
 フレアもまた満面の笑みでそう返す。

「ただまぁ、実際に俺が空を飛べるようになるかどうかは全くわからないけれどな」

「えー!いつかは飛んでみせてよね〜!」

 ——— 細かいことは、まぁいっか
 父は笑いながら、またいつものようにあごヒゲをくるくるやっている。

 "この父にしてこの子あり" とはよく言ったもので、フレアが生まれもったこの能天気さと明るさは、やはりまさにこの父親ゆずりだったことがよくわかる。

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※この小説My Cool HEROESは、ジェネラティブNFTコレクション「My Cool HEROES」の背景に流れるストーリーをまとめた中編小説です。

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