11. 小説MCH - フレアと父「しずくの光」(修正2024/1/2 vol.6)
「あっ!」
その時ふと、ぼんやり赤い光をまとった輝きが、フレアの視界に飛び込んできた。
「あー、やっぱり父ちゃんの "しずく" はカッコいいよなぁ」
父の胸元で、淡く輝く紅色のあかりに吸い寄せられながら、思わずフレアは言葉をもらした。
「父ちゃんの "しずく" はさ、母ちゃんのやつとも全然違くてさ。やっぱり、この光ってるところがすごくカッコいいんだよなぁ!
だから、ずっと眺めていたくなっちゃうんだよね〜」
フレアは父のしずくに手を伸ばし、そっと指先で触れながらそう言った。フレアが "しずく" と呼んだのは、勾玉のような形をしていて、父の首にかけられている宝石のことである。
「ボクの "しずく" も、父ちゃんのみたいに、早く光り始めてくれたらいいのになぁ…」
自分の胸元のそれと見比べて、フレアは少し寂しそうな表情をうかべた。
「なぁに。お前はそんなにあせる必要はないんだぞ。その "しずく" が、オレのように光を放つ日がくるとしたらな。それは、そいつがお前のことを "ヒーロー" と認めた時だ。それはお前も知っているだろう?」
「うん。それは、村長さんも紙しばいでも言ってたけどさぁ... 。それでも、もし光るんだったら早い方がいいでしょ〜?」
フレアは父を見上げてせまってくる。
「いやいや、しずくにヒーローとして選ばれるのは、そんなに簡単なことじゃあない。まして、お前みたいなチビ助が、そんな簡単に "しずく" を光らせちまったらよ。このオレが、ここにいる必要がなくなっちまうだろ」
父は笑いながら言葉を続ける。
「それにな、フレア。同じ時代に、同じ村からヒーローに選ばれるのは、いつも一人だけなんだぞ」
「あ、それも紙しばいで見たよ!」
どうやら村長の紙しばいは、子供たちにいろんなことを教えてくれているようだ。
「だから、お前の "しずく" が光る日が来るとしたらな。それはきっと、オレがあの世にいっちまった後になるんじゃねぇのかなぁ」
父は冗談まじりに笑いながらそう言った。
「えー?そんなに待っていたらさぁ、ボクもすっかりおじいちゃんになっちゃうよぉ」
フレアは少し口を尖らせながらそう返す。父は、そんなフレアの頭をそっとなでると、ゆっくりと諭すようにこう続けた。
「安心しろよ、フレア。お前も大きくなって、いつか自分の "しずく" に認められる日がやってきたらな。その時はきっと、オレの "しずく" のように、しっかり紅色の光を放ってくれるようになるからな」
父は、未来の息子の立派に育った姿を "信じて疑わない" 。そんな表情で、フレアの目をじっと見つめ返した。
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※この小説My Cool HEROESは、ジェネラティブNFTコレクション「My Cool HEROES」の背景に流れるストーリーをまとめた中編小説です。
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