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29. 小説MCH - フレア「ラルフの大穴」(修正ver.2 2024/4/19)

 炎の村には、村の真ん中に、ま〜るい大きな広場がある。毎週末に子供たちが集まって、村長の紙芝居を聞いたりするあの広場だ。

 この村は、その広場を中心に広がっていて、大人が三人も集まり両手を広げたら、簡単に指先が触れ合う程度の、少し手ぜまなメイン通りが、その広場から何本か、放射状にまっすぐと村の外れまで伸びていた。

 広場から道沿いに、そのまままっすぐ西の外れまで歩いて来ると、その先には見渡す限りの赤茶(あかちゃ)の大地が広がっている。
 それはまさに、フレアがラルフとアオを見送った、あの時見ていた風景そのものだった。周囲の家々と大差なく、赤茶のレンガで作られた彼の家は、ちょうど広場からメイン通りの一本を、真西に向かった一番外れに建っていた。

 ——— なんで村外れなのかって?そりゃあ、見晴らしがいい方が、気持ちいいからに決まっているだろう?

 フレアが理由(ワケ)を尋ねてみると、そんなラルフらしい返事が返ってきたのは、まだ記憶に新しい。

 西の外れの家から村を出て、さらに少しだけ西に向かうと、誰もが知るある名所にたどり着く。
 そこは、赤茶色の土が隆起した小高い岩場で、狭い小道(こみち)を奥に進むと、すぐに行き止まりの高い絶壁に突き当たる。
 その絶壁は、大小さまざまな丸いくぼみが影を織りなし、中でもひときわ大きく口を開け、色濃い影を産み出す大穴が、そのゆるがない存在感を示し続けている。この場所自体が「ラルフの大穴」の愛称で親しまれている理由は、あえて言うまでもないだろう。

「よ〜し、今日もがんばるぞ〜!」

 フレアがここにやってくるのは、彼が自分で決めた日課の1つだ。

 ——— 早く父ちゃんに追いついて、ヴィランズをたくさんやっつけないと

 相変わらずの彼のまっすぐな正義感には本当に頭が下がる思いがする。

 フレアはそっと目を閉じると、右の手のひらを上に向け、そこに意識を集中する。

 ——— ... Knoah : (ノア)

 静かに発した呪文に呼応し、フレアの手のひらがまばゆい光に包まれる!......かに見えたのも束の間で、

「あ〜...やっぱりダメかぁ〜...」

 どうやらフレアは母に似ず、属性術がまだまだ大の苦手なようである。

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