見出し画像

2. 小説MCH - フレアと父-1 「父のフード」(修正Ver.3-2024/1/6)


「父ちゃ〜〜ん!今日はどうだった!?」

 まるで三日三晩待ちに待った獲物を、やっと仕掛けた罠にとらえた時のように、家の二階から、今まさに「標的」を目掛けて、駆け降りようとしている少年の、それがこの物語の第一声であった。

 今にも階段から転がり落ちそうになるのを、なんとかこらえながら駆けつけて、いつものようにこの質問を繰り返すのが、この少年の日課のようである。

 この少年が階下を見下ろすと、そこにはいつもの見慣れた大男がたっていた。

 その男は、およそ2mには届きそうなほどの背丈の尺で、この世界の "住人" の中でも、確かにだいぶ大男の部類に入るようだ。

 体つきもずいぶんな屈強で、彼がいま羽織っている "フード付きのローブ" の上からでも、その隆々とした筋肉は、一目でわかるほどに際立っていた。

 どっしりと深みがある深炎色をしたそのローブは、やや厚手の珍しい布で織られたもので、少し大きめの勾玉が、上下に連なったような不思議な模様が、フチに一周ぐるりと刺繍されていた。

 少年は前に一度、その不思議な模様について尋ねてみたことがあったが、

「もらい物だから、よくわからん」と、笑いながら一言言われただけで、それ以上のことは全く何もわからなかった。

 そのローブは、少年がモノ心ついた時には、すでにその男が身にまとっていたものだった。

 しかし、周りを見渡しても、他にこの "ローブ" というものを、身にまとっている大人を、少年はこれまで一人も見かけたことがなかった。

 ——— 他の大人は誰も着ていない。あれはボクの父ちゃんだけのものなんだ!

 自分の父親がいつも身にまとっていたものが、「なにやらずいぶん特別なモノらしい」と気づき始めた近頃、近所の遊び相手に、そんなことを自慢してまわった出来事も、少年がこの大男に対する「尊敬」の想いを、さらに深めるきっかけになっていたことは、もちろん言うまでもない。

 特に小さな少年にとって、自分の父親を自慢したい気持ちは、大抵あてはまるものだったとしても、この少年が抱くその感情は、「憧れ」と「畏敬の念」も織りあわせて、さらに人一倍大きなものだったと言えるだろう。

「父のフード」

#################################

←前話を読む(第1話)        次話を読む(第3話)→


※この小説My Cool HEROESは、ジェネラティブNFTコレクション「My Cool HEROES」の背景に流れるストーリーをまとめた中編小説です。

ぜひNFT「My Cool HEROES」の作品と一緒にお楽しみください。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?