ジャニーズ性加害問題 子どもを守るため参考にすべき「ニューヨーク州児童実演家に関する規則」

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要約
・芸能活動を行う児童を保護する法律が海外ではいくつかあるが、そのうちニューヨーク州のものを紹介する
・細かい規定があるが、特に重要だと思ったのが「管理者の設置」と「親の責任の明記」
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1 ニューヨーク州児童実演家に関する規則

ジャニーズ問題をきっかけに弱い立場にある年少タレントを守る方法が社会的課題として上がっています。

日本では児童を雇う時の規定については基本的に労働基準法の規定が適用されますが、それ以外の特別な法律は見当たりません。

一方海外にはエンターテイメントに従事する児童のための特別な法律が存在する自治体があります。

今回はその中でも「ニューヨーク州児童実演家に関する規則」(12NYCRR186)を紹介します。

この規則は数十ページにわたって、児童に芸能の仕事に従事させる際に守るべき基準が細かく決められています。


2 「管理者」の設置

数ある規定の中でまず目を引いたのが「管理者」(§186-4.6 Responsible person)の存在です。

管理者は労働時間中に常に児童に同行してその安全を監視します。
管理者は基本的に保護者が選任するか、保護者自身が行うものとされ、保護者が選任を行わなかったときには使用者が管理者を提供するものとされます。

この規定はかなり画期的かと思います。常に第三者が同行して監視が入るわけですし、親が選んでいる以上客観性が担保され、プロデューサーに気を遣って物が言えないという心配もありません。

もちろん、管理者の給料は誰が出すのかといった現実的問題はありますが、「相談窓口を設ける」といった方法よりはかなり強力な措置にはなりそうです。

3 保護者の責任の明記

驚いたのが、この規則、法律の目的・用語の定義など基本事項の後、最初に出てくる項目が「保護者の責任」についてなんです。

そして保護者は労働局長の許可を得なければ子どもを芸能活動に従事させてはいけないと定められています。

日本の労働基準法では、年少者を働かせる場合、使用者が官庁の許可を得なければなりませんが、保護者が許可を得なければならないという項目はありません。

保護者と使用者、双方が労働局の許可を得なければならないという点がニューヨークでは大きく違います。

前述のように親が管理者を選定するという規定もありますし、子どもを働かせる上で親にも責任を持たせていることが日本の法律とニューヨーク州の法律の大きな違いの1つと言えます。

昨今の報道・世論は、ジャニーズ事務所やメディアの責任追求に主眼をおいているように見えますが、本当に子どもを守りたいと思うのであれば、保護者が負うべき役割について考えることも必要だと思います。

4 児童の芸能活動について法整備

以前の記事でも述べましたが、ジャニーズ問題は児童虐待というよりは一種の労働問題であると私は捉えています。

そして
①大人と子どもの力の差
②売れるかどうかがプロデューサーの一存に大きく左右される
という2つの要素が重なって被害が発生しやすい業界であったということが言えます。

ですから、労働環境の整備にあたって、通常の大人の労働環境より強度な保護を法律に求めることが必要であると考えられます。

そのための1つの例として、海外の法律も1つの参考になるのではないでしょうか。


この問題に限らずですが、社会で何か問題が起きたときに、「権力者」を叩くことに報道・世論が傾くのをよく見ます。

社会問題の原因を誰かに求めて、その人を叩くことで問題の解決に導くという思考回路になっているように感じます。

もちろん責任追求も必要なのでしょうが、それだけで社会が良くなるようにはどうしても思えません。

報道・世論にはもっと建設的な議論を求めたいです。

そして自分もその建設的な議論の一角を担う存在になれるように、これからも法律をはじめ学問の研鑽を積んでいきたいと思います。




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