書くことに困ったシリーズ「む」
書きたい気持ちはあるけれど、何をテーマにすればよいか悩んだときのシリーズ。五十音順に進めております。
「むぅちゃん」
むぅちゃんは一般的に言うとうちのぬいぐるみだ。イヌのようだ。
なぜ「一般的」かというと、私も侑さんもぬいぐるみと会話をするし、家族だと考えている。ただのぬいぐるみではないのだ。
私や侑さんのベッドには大勢のぬいぐるみたちがおり、彼らに場所を譲るため自分は縮こまって寝ることもある。冬には布団を被せるし、夏はお腹を冷やさないようにしたりする。
私は物心ついた時から彼らとはこういう付き合い方で、気づけば侑さんも同じように彼らに接している。このことについてきちんと話をしたことはないが実は王様も同じ考え方なのではないかと思っている。
ちなみに王様のふとんにも1体いる。王様は抱き枕だと言っているが、抱いているところなど見たことはない。添い寝している。
実はこのシリーズの「ぬ」のときに、これについてカミングアウトするかどうか迷ったのだが、まだあの時は勇気が出なかった。だってぬいぐるみと話す、なんて言って一般的に受け入れられるとは思っていない。こういうのはひっそりと自分だけの楽しみにしておくほうが良いことは知っている。
むぅちゃんはオペを2回ほど経験している。
縫合手術の執刀医は私だ。執刀しないし医師でもないけれど。
むぅちゃんがうちに来たのはもう10年以上前。
雑貨屋さんの雑多なコーナーにひっそりいたのを侑さんが見つけ、欲しいと言った。
侑さんはあまり自分から物を欲しがるほうではなく、それ自体が珍しいことだったのだが、むぅちゃんには悪いのだが、置かれていた環境もあまりよい感じではなく、私はこれじゃなくて代わりにもっときれいなの買うよ、なんてことを言ってしまった。
すると泣くことも珍しい侑さんが、とても悲しそうに泣いたのだ。驚いた。決してわがままを言っている風ではなかったからか、王様が買おうと仰った。王様はわがままを聞き入れるような方ではないので、何かを察したのかもしれない。
帰りの車の中ですでにむぅちゃんという名前が付き、むぅちゃんはうちにやってきた。
そうそう、うちの子たちには全員名前がある。
侑さんが付けることもあるし、私が付けることもある。なんやかんや王様が命名した子たちも結構いる。王様は彼らの個々の名前は認識しているが、決して名前を呼ぶことはない。だって私の名前すら呼ばないんだよ(笑)
私なんか「ちょっと」としか呼んでもらえない。名前じゃないよね、ただの呼びかけだよね。
ま、それはいいとして。
しょんぼりしていたむぅちゃんもうちに来て、お風呂に入って(洗濯機)、他の子たちと遊びだしたらどんどん元気に、かわいくなった。みるみる顔が明るくなったのだ。
先日、職場にいるアルバイトさんに、(娘さんが)小6なのにぬいぐるみと話をするんです、と相談された。
え?私もそうだけど??と答えたけど、彼女の悩みと不安は解消されなかったことだろう。どういってあげればよいものか。
だって話す人は話すし、話せるわけがないと思っている人はそれまでだ。
私たちは今日もみんなで話をする。
そして、むぅちゃんは今日も元気だ。
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