【雑記】ちいかわシールコンプリートへの道/30歳男性

収集とは魂の補完だ

はじめに

 突然だが、これを読んでいる皆様は何か集めているものはあるだろうか?
 試しにネットで検索してみるといろいろな収集家が画像やエピソードを披露している。好きなアニメ・漫画のグッズを集めている人もいれば、壁中にアイドルのポスターを貼った部屋に住んでいる人もいる。大家族かっ!?ってくらいスニーカーだらけの玄関に住んでる人もいた。高価なお酒を開栓せずに保管している人もいた。私なんかはお酒は呑むものだろうという薄っぺらい考えで生きてきたが、その人にとっては呑まずに手元に置いておくことに価値があるのだろう。
 いま紹介したケースに共通しているのは、好きなものがあると、それをもっと、もっと知りたくなる。もっと、もっとその世界に深く入りたくなるという思いなのではないか。みなさん多種多様な価値観の方がおられ、一概に決めつけるのは難しいが、好きな気持ちが「もっと、もっと」とエスカレートし『収集』という行為に走るのではないか。
 しかし、それとは別に『収集』をしている人もいる。それは『収集』という行為そのものに魅せられてしまった人だ。あまり興味がないものでも気まぐれで集め始め、自分でもなぜこんなものを集めているのかわからない。ただ、ダブっては嘆き、なかなか出ないレアものに悲嘆し、それでもコンプリート出来た時の悪魔の快感を求めて収集を続ける。集めては次のもの、集めては次のものと収集を求めて収集を続ける『収集アンデット』、それが私です。この夏、私はまったく知らない『ちいかわ』のシールを集めるために、丸美屋のお子様向けカレーを食べまくった。ちいかわが何かわからない。漠然と「そういうアニメか漫画があるらしい」という程度の認識の私がだ。

今回のターゲット

可愛いキャラクター達がこちらを見ている。どの子がちいかわなのだろう?

ちいかわ カレー〈ポーク&コーン甘口〉
内容量 160g
商品説明
やわらかなポークとコーンをメインに、4種類の野菜(じゃがいも、にんじん、玉ねぎ、トマト)を合わせました。ポークベースのまろやかなカレーにりんごの甘味をバランスよく加えて、辛さが苦手な方や小さなお子様でも食べやすい辛さ控えめなマイルドな味 に仕上げました。温めなくてもおいしく召し上がれます。

丸美屋HPより

 これには一食につき一枚、オリジナルキラキラシールがついている。全20種類、それが今回のターゲットである。各シールには右下に通しNoがついている(下画像参照)。つまりこれを1~20番まで集めれば無事コンプリートとなる。

赤い〇の中が通し番号。

ちいかわシール収集スタート

さあ、始めよう。これは私の戦いの物語だ!

 記念すべき第一食目だ。どんなシールが出るのか?どんな味のカレーなのか??ワクワクするというか、血が騒ぐ。収集経験を集める収集家としては、相手が手強ければ手強いほどコンプリートした時の快感が大きいためだ。さあ、私を楽しませてくれ!

 記念すべき一食目はNo.2が出た。縮尺が分かりずらいですが、名刺を少し短くしたくらいの大きさ。キラキラシールだが画面越しにはあまりキラキラしていないように見えるかもしれない。安心してほしい、肉眼で見てもあまりキラキラしていない。近くで見て角度を変えたりすると少しキラキラする。キラキラシールではあるが、期待していたほどはキラキラしなく、少しがっかりしてしまった。

 これがちいかわカレー。辛さは全くない。スパイス感もほぼ感じない。大人が食べ続けるにはちょっときつい。正直、どのへんがカレーなのかがわからない。具はコーンが入っているのでシャキシャキした歯応えが良いアクセントになっている。こいつを食べ続けていく。いつまでかって?それは私にもわからない。キラキラシールに聞いてくれ。

 序盤はすいすいと進んだ。まあそうだろう。ダブり始めるのはシールが出揃ってきた終盤だろうから。2日目より3日目、3日目より4日目とどんどんダブる可能性は高くなっていく。停滞するのは時間の問題だ。とはいえ、この勢いは大切にしていきたい。最初の勢いでどこまでいけるか。

 スタートから5日間、一日2食ずつ食べ続け、No.10、9、1、15、6、16、13、12、11をダブりなく集めることができた。10/20、つまり半数を一気にクリア。順調すぎて恐いくらいだ。たった5日間で折り返しを迎えることができたのは嬉しい誤算だった。「なんか15日くらいでクリア出来ちゃうんじゃない?」と楽観的な気持ちになっていた。
 その反面、怪しくなったきたのはカレーへの『飽き』だった。この商品はお子様向けに作られたカレーだ。当然、辛みは抑えて、具も小さめにしお子さんが食べやすい味になっている。しかし、私は30歳だ。辛みだって好きだし、具が大きくてもへっちゃらだ。お子様カレーへの物足りなさは初日から感じていたが、最初の3日間程で飽きが始まり、5日目ともなると嫌で嫌で仕方ない。自分で自分の口を無理やり開いて、スプーンで突っ込むような過酷な食事になってきた。これが最低でもあと10食分続くのか?ダブったりしたらいつまで続くかわからない?早くもうんざりしてきた。この飽きへの対策が喫緊の課題として浮かんできた。

飽きへの対策・子ども向けカレー研究

 ちいかわカレーと食べ始めて6日目でカレーへの飽き対策に乗り出した。ちいかわカレーは辛さが足りない。スパイスの辛さと複雑な香り。これがカレーの美味しさではないか。子どもにはわからない大人の味わいだ。

業務用スーパーで購入

 私はハリッサに目をつけた。唐辛子の辛さ、パプリカの風味、食欲をそそるガーリックの香り。これは子ども向けカレーに足りないものをすべて補完出来るといっても過言ではない、のではないかと。

やや、多すぎるくらい入れるのが調度いい

 思ったより辛そうな見た目になった。ただ、辛いだけではない、旨味がきちんと足されている気がした。嬉しい収穫だった。辛みを足せばある程度食べられるということがわかった。ただ、今後、長期戦になった場合にこれだって飽きる可能性がある。さらなる研究が求められる。これはキラキラシールコンプリートの物語であり、子ども向けカレー研究の軌跡である。

 シールもダブりなしのNo.7をゲット。幸先がいい。

地獄の入り口

 恐れていたことが起きたのは6日目の朝食だった。開封したカレーから出てきたのは既出のNo.10だった。

 いつかは起きること、覚悟は出来ていたはずだった。ただ、実際に直面してみると胸が詰まるような、息苦しい感覚があった。この面白みのないカレーと一日長く付き合わなければならないことが書面(シール面)で通知されたのだ。

 ここからは一進一退の攻防が続いた。No.14、ダブり、No.4、No.8、No.3、ダブり、ダブり、ダブり、自分の運が試されている。自分の力ではどうすることもできない、大きな運命とでもいう存在との戦いだ。一度負けると、子ども向けカレーの苦行が一日追加され、一度勝とそれが終わりに近づく。ヒリヒリする。平凡な社会人が出来る精一杯の戦いがこれじゃないかと思う。
  その間、飽きとの戦い、カレーをおいしく頂くための研究も同時に進めます。とりあえず、冷蔵庫の中にあるものを焼いて乗っけてみました。豚ロース、目玉焼き、鶏もも、豚しゃぶ肉、どれもどう食べてもおいしいのですから、カレーに乗せてもおいしいに決まっています。研究の結果、カレーに辛さがなく、ぼやけた味になっているので、塩コショウを少し強めに振るのがポイントだとわかりました。

続くカレー生活、まったく進まない。

 10日目の昼食で5番をゲットする。ダブり続けるとなんだか息苦しい気持ちになる。5番を引いたときはやっと息継ぎが出来た気分だった。しかし、ここからさらに水中を潜り続ける羽目になる。ここで思うのはスーパーでちいかわカレーの隣に並んでいるポケモンカレーは全40種類もある。そっちを選ばなくて本当によかった。そっちを選んでたら命がなかったかも知れない。

久しぶりに見た新シール。

 そこから地獄の18連続ダブりを記録する。7日間18食のカレーを食べ、一度も新種が出ない。最初のうちは「こんなこともあるか」くらいに思っていましたが、徐々にカレーを見るのも嫌になりました。朝食で出た7番のシールが昼食でも出たときは会社の休憩時間にも関わらず、「嘘だろー、なんで?なんで?ねえ、なんでー?」と叫んでしまいました。おかげで同僚からはちょっと疲れている、近々問題を起こしそうな社員認定をされてしまいました。でも、叫ばずにはいられなかった。この気持ちは吐き出さなきゃいけなかった。そうすることでギリギリ正気を保っていられたんだ。
 そんなわけで、どんどん既出のシールが増え続け、2番、7番のシールに至っては5枚ずつになった。

どうだい?同じシールが5枚もあるなんてかっこいいだろう??

 このダブり地獄の間、カレー研究・飽き対策部の方はめちゃくちゃになっていた。子ども向けカレーの奥行きのない、だるい甘さ、それを食べ続けなければいけない。それに加えて一向に新しいシールが出ないストレス。そんな状況に対抗するためトッピングがどんどん豪華になっていた。ベーコンエッグ、ソーセージエッグ、スーパーで半額になっていた山盛りのから揚げに冷凍餃子。こうして、トッピングでごまかすことでなんとか正気を保っていた。そうしないと心が壊れてしまうから。次の一枚、次新しいシールが出れば救われるはず。収集の道は険しければ険しいほどコンプリートしたときの快感が大きいのだ。

 ちなみに、新たな発見もあった。前日鍋を食べたときにつみれ用の魚のすり身が余ったため焼いてみた。いつもはパックからスプーンで丸くしてそのまま鍋で煮るのだが、この日は油をひいたフライパンで焼いてみた。ほんの気まぐれだったが、これがなかなか美味しかった。

鍋の時につみれは欠かせないよね。でも、量が多くて余ってしまうことってありますよね。そんなときはフライパンで焼いてカレーに乗せてみてください。表面はパリッと、中はもちっとで新たな発見がありますよ。食感はハンバーグとはんぺんのあいだくらいで新感覚です。ぜひ、お試しください!これで、もう魚のすり身が余っても心配ありませんね。

ビクトリーロード突入か?

 18連続ダブりを抜けた先に出たのはNo.17だった。日曜日の朝、最高の休日がスタートした。トッピングは超豪華!チーズハンバーグにした。スーパーの冷蔵ハンバーグにとろけるチーズをのせてレンチンしただけだが、ひとたび食べればとんでもなく幸せな気持ちになれる。久しぶりの新種登場を祝うのに相応しいじゃないか。

 さらにダブりを挟んで新種のNo.19を、もうひとダブりを挟んでNo.18をゲット。ここへきてかなりのハイペース。あと1種類、No.20でコンプリートだ!

この可愛くない甲冑もちいかわの仲間なのか?

 ここへきて急にNo.17~19の後半の番号が出始める。おそらく、キラキラシールは工場から出荷されるときNo.1~20まで順番に並んでいるのではないか。それを店員さんがそのまま商品棚に陳列すれば、棚の前は1で後ろにいくにつれ番号が大きくなるのではないか。私は1回に3~5個くらいずつ購入しているが、前の方からばかり購入し、後半を他の客に取られてしまっていたのではないか。だから、前半の番号ばかりダブって17~20を引けていないのではないか?つまり売り場の後ろの方からとっていけばNo.20をピンポイントで引くことも可能なのでは?これはさっそく試してみなければならない。ただ、運にすべてを任せるのではなく、頭を使って勝負するのがスマートな大人だ。

ラスト1種!

 最後にNo.20のシールが残った。最後らしくて良いと思う。そして、売り場の後ろからとる作戦でコンプリートは時間の問題に思える。

 全然出ない!怒りとかを通り越して笑っちゃうくらい出ない。職場でもシールを見た瞬間に「ハハハッ」と乾いた笑いが出てしまった。スーパーでは陳列棚の後ろから3つくらい買うようにしていたんだけど、No.2~4が固まって出た。そこでふと、「店員さんは商品が少なくなったら補充しているのでは?」と思い至った。私もコンビニでバイトをした経験がある。売り場の商品がある程度少なくなったら、バックヤードから商品を補充する。お客さんには賞味期限の短いものからとってほしいから、新しい商品は棚の奥に補充する。たとえ、『工場出荷時には1~20まで順番に並んでいる』という仮説があっていたとしても、売り場ではNo.20のシールは後ろか前へ移動し続ける。そしたら、売り場の後ろからとるという方法は通用しない。現に、全然出ていない。
 そもそも、ラスト1種類は1/20。確率が低いのは仕方ない。小ズルいことは考えず、運に身を任そう。

その時は来る。

 夕食時だった。すでにワクワクはなく、惰性のように開封した。箱を傾けたときにシールが床に落ちてしまった。シールを拾うためかがんだ時に右下にNo.20の番号が見え、そのまま固まってしまった。みんな見てくれ、これがNo.20だ!

 酷い目にあった。手こずらせやがって、この野郎。お前があっさり出ないせいで、そこそこの金額がかかったぞ!職場でも「なんで子ども用のカレーを食べているの?」、「ちいかわのシールを集めてるんです」、「ちいかわ好きなんですか?」、「いえ、まったくわからないです」という会話をした後から不審者のような扱いを受けている。職場近くで児童への声掛け事例があったときは、「お前が『ちいかわのシールをあげるから、おじさんの家においでよ』とか言ったんじゃないか?」と不審者を通り越して犯罪者扱いを受けた。『ちいかわ』は好きじゃないが『ちいかわシールの収集』に興味があるでは、人を納得させることはできないらしい。ちいかわシールを集め始めてから社会的評価を著しく下げた。お前がなかなか出ないから…。

ベーコン、目玉焼き、ハンバーグの欲張りセットでお祝い

おわりに

 これが今回の傷跡だ。よくもまあこんなにダブったものだ。まとめて持つと結構な厚みがある。ほぼ一か月間同じカレーを食べ続け、いまでは甘いカレーを思い出すだけで「うっ」となる体になってしまった。

 以上が私の小さな戦いの記録であり、些細な冒険譚である。シールを集めるためにお金と時間を注ぎ、社会的信用も犠牲にした。だが、私の戦いに終わりはない。また、新たな収集の海にこぎだして行くだけだ、そこに『収集』がある限り!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?