高血圧二次性スクリーニング
こんにちは、Dr.パテラです🦴
最近内科外来にも慣れてきて、ふと降圧薬を処方している人たちに、この人たちは本当に一次性高血圧でいいんだろうかという心配が出てきました😣
と言うわけで、今回はそれぞれ鑑別すべき二次性高血圧を考えていき、最後に行うべきスクリーニングをまとめていきます。
最後までお付き合いいただけると幸いです。
腎疾患由来高血圧
腎実質性高血圧
検査項目:
・尿検査(尿蛋白、尿沈渣)
・血清クレアチニン
・GFR
鑑別疾患:
・慢性腎臓病(CKD)
・糸球体腎炎
・腎炎症候群
- **概要**: 腎臓の実質障害によって高血圧が生じる状態。腎機能低下や尿蛋白がみられることが多い。
- **代表的な疾患**: 慢性腎臓病(CKD)、糸球体腎炎
- **特徴**: 持続的な高血圧、浮腫、尿異常がみられることが多い。
腎血管性高血圧
検査項目:
・腹部エコー
・腎動脈エコー
・MRA(Magnetic Resonance Angiography)
・CTアンギオグラフィー
鑑別疾患
・腎動脈狭窄症(動脈硬化性、線維筋性異形成)
- **概要**: 腎動脈の狭窄や閉塞により腎血流が低下し、レニン-アンジオテンシン系が活性化されることで高血圧が発生。
- **代表的な疾患**: 腎動脈狭窄症(動脈硬化性、線維筋性異形成)
- **特徴**: 突発的な高血圧発症、降圧薬に抵抗性を示す場合が多い。
内分泌性高血圧
クッシング症候群
検査項目:
・血中・尿中コルチゾール
・血中ACTH
・デキサメタゾン抑制試験
- **概要**: 副腎皮質ホルモン(コルチゾール)の過剰分泌により高血圧が生じる。
- **特徴**: 満月様顔貌、中心性肥満、皮膚の菲薄化、易出血性
原発性アルドステロン症
検査項目:
・血中アルドステロン
・レニン活性
・アルドステロン/レニン比(ARR)
・カプトプリル試験
- **概要**: 副腎皮質のアルドステロン産生過剰により、ナトリウム貯留とカリウム排泄が増加し、高血圧が生じる。
- **特徴**: 低カリウム血症、代謝性アルカローシス
褐色細胞腫
検査項目:
・血中・尿中カテコールアミン
・メタネフリン
・MIBGシンチグラフィー
- **概要**: 副腎髄質からのカテコールアミン過剰分泌による高血圧。
- **特徴**: 発作性の高血圧、頭痛、発汗、動悸
甲状腺機能亢進症・甲状腺機能低下症
検査項目:血中TSH、遊離T4
甲状腺機能亢進症
- **概要**: 甲状腺ホルモンの過剰分泌により心拍出量増加し高血圧が生じる。
- **特徴**: 動悸、体重減少、易刺激性、振戦
甲状腺機能低下症
- **概要**: 甲状腺ホルモンの不足により、末梢血管抵抗が増加し高血圧が生じる。
- **特徴**: 倦怠感、寒がり、体重増加、浮腫
副甲状腺機能亢進症
検査項目
・血中カルシウム
・PTH
- **概要**: 副甲状腺ホルモン(PTH)の過剰分泌により高カルシウム血症と高血圧が生じる。
- **特徴**: 骨痛、腎結石、倦怠感
睡眠時無呼吸症候群(SAS)
検査項目
・終夜睡眠ポリソムノグラフィー(PSG)
・簡易睡眠検査
鑑別疾患
・閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)
- **概要**: 睡眠中の気道閉塞や低換気により、間欠的な低酸素血症と交感神経活性の亢進が生じ、高血圧を引き起こす。
- **特徴**: 夜間のいびき、日中の眠気、起床時頭痛、肥満との関連
薬剤性高血圧
確認すべき事項:患者の服用中の薬剤リスト
関連薬剤:
・NSAIDs
・ステロイド
・エリスロポエチン
・経口避妊薬
・デコンジェスタント(含フェニレフリン)
・カフェイン
大動脈縮窄症
検査項目:
・胸部X線
・心エコー
・CT/MRI
鑑別疾患:
・先天性大動脈縮窄症
・高安動脈炎
- **概要**: 大動脈の一部が狭くなる先天性の異常により、狭窄部位の遠位で高血圧が発生。
- **特徴**: 上肢と下肢の血圧差、胸部の雑音、運動耐性の低下
その他の原因
血管炎症候群:ANCA関連血管炎、巨細胞動脈炎など
神経疾患:頭蓋内圧亢進、急性ストレス反応
血液検査:
・電解質異常
特に低カリウム血症(原発性アルドステロン症、クッシング症候群)
高カルシウム血症(副甲状腺機能亢進症)
二次性高血圧の疫学
二次性高血圧の疫学については、全体的な高血圧患者の中で二次性高血圧が占める割合や、各原因疾患の頻度に関するデータが知られています。
二次性高血圧の全体的な割合
- 高血圧患者の約5-10%が二次性高血圧であるとされています。したがって、ほとんどの高血圧患者は本態性高血圧(一次性高血圧)ですが、特に若年者や高血圧の進行が急速な場合、または治療抵抗性高血圧の場合は二次性高血圧の可能性を検討する必要があります。
各原因疾患の頻度
腎実質性高血圧
最も頻度が高く、二次性高血圧の中で約2-5%を占めます。慢性腎臓病(CKD)は、特に進行した高血圧患者で高い頻度で認められます。
腎血管性高血圧
二次性高血圧の1-2%を占めます。特に動脈硬化性腎動脈狭窄は高齢者で、線維筋性異形成は若年女性で多く見られます。
内分泌性高血圧
原発性アルドステロン症
二次性高血圧の5-10%を占めるとされ、以前よりも多くの症例が診断されています。治療抵抗性高血圧では頻度がさらに高くなります。
クッシング症候群
稀で、全高血圧患者の0.1%以下ですが、肥満や糖尿病を合併している場合に疑うべきです。
褐色細胞腫
非常に稀で、二次性高血圧の0.1%未満を占めます。しかし、発作性の高血圧を呈する場合には重要な鑑別疾患です。
甲状腺機能亢進症・低下症
二次性高血圧の原因としてそれぞれ1%未満と考えられます。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)
高血圧患者の30-50%にSASが存在すると報告されており、特に肥満や夜間の血圧上昇が顕著な場合には注目すべきです。
大動脈縮窄症
先天性疾患の一つで、全高血圧患者の0.1%未満ですが、若年者の高血圧で疑うべき疾患です。
薬剤性高血圧
明確な頻度は報告されていませんが、NSAIDsやステロイドなどの薬剤が高血圧を引き起こす可能性があるため、薬剤歴の確認が重要です。
年齢や性別の影響
年齢
若年者や高齢者での高血圧発症は二次性高血圧の可能性が高いとされています。特に30歳未満の高血圧患者では、その約10-20%が二次性高血圧である可能性があります。
性別
原発性アルドステロン症や褐色細胞腫では、女性にやや多い傾向があります。一方、動脈硬化性腎動脈狭窄症は男性で多く見られます。
最後に
二次性高血圧のスクリーニングは、病歴、身体所見、および基本的な検査結果から疑われる場合に行われます。高血圧の治療に反応しにくい場合や、若年での発症、急激な重症化、身体所見や症状が二次性高血圧を示唆する場合には、これらの検査を考慮します。
スクリーニングすべき検査まとめ
血液検査
・カリウム
・カルシウム
・PTH
・血清クレアチニン
・GFR
・血中アルドステロン
・レニン活性
・アルドステロン/レニン比(ARR)
・血中TSH、遊離T4
・血中・尿中コルチゾール
・血中ACTH
尿検査
・尿蛋白
・尿沈渣
(・1日塩分量も出しておくとBetter)
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・腹部エコー
・腎動脈エコー
(・心エコー)
その他
(・簡易睡眠検査(肥満体であれば))
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