映画「ブライアン・ウィルソン約束の旅路」を、音楽無知が観てみたら。

音楽についての知識や体験は、きっと社会一般の平均をそこそこ下回る身だと思う。
ただ30年ほど前、古いめのロックとかを熱愛する人達と同じ研究室で過ごしたことから
昨今の(伝説的)ミュージシャンの記録映画なんかには、音そのものに妙になじみを感じる、そんな私が
ブライアンウィルソンとかいう人の映画をみてみた。
(ビーチボーイズというグループ名くらいは、かろうじて知っていた)

あぁ良かったなぁと、じんわり胸にしみて
なかなかその感触が去らない作品だった。

まず、音そのものをしっかり「聞けた」という満足感。
(音楽無知なので「聴く」という字は、とても使えません)
おそらく生のライブには及ばないのだろうけど、ラジオなんかの音とはやっぱり格段に違います。
昔の写真や映像とともに流れる当時の音は、ややこもりがちなセピア色っぽい印象。
一方、近年のライブやレコーディングの映像では、ぱあーー☆っと啓けるような華やかめな音。
それが体の芯にどっしり届く、これだけで嬉しいし
現在の著名なミュージシャンが、ブライアンウィルソンの才能がどれほどスゴいか、あふれる熱意で語ってくれるのも
素人にとっては(解説書みたいで)ありがたい。

現在のブライアンウィルソンその人が、正面から画面に大きく写り
誘導役のインタビュアー(気心の知れた親友だとか)と車内で語るシーンが多かったのも、私には良かった♪
その画面展開の少なさは、いかにも造りましたよ!盛り上げましたよ!的なエンターテイメント性とは別物で
複雑(だったのだろう)彼の人生の経緯が、こと細かに明らかにされないのも
それを目的としていない私には違和感はない。

ひかえめにポツポツと語るブライアン。
今にも不安が噴き出しそうに.見えるのは、現在かかえる疾患からか、昔の感情(あまり思い出したくない)に触れているからなのか。
表情変化が少なめなのは、なんらかの後遺症だったり治療の影響だったりもするのだろうか。
時折、その表情に痛みが走る瞬間があり、そのたびにこちらも心がチクっと痛くなる。
ブライアンウィルソンという人はきっと、純粋で誠実で、そして極めて繊細で優しい人なんだろう。
そして、そんな彼をその空気ごと受け入れて痛みを和らげているかのようなインタビュアーの様子に、ホッとする。

その優しさは、インタビュアーだけに限らない。
近日のレコーディングやライブの様子からも、彼と同じチームの人たちが
みんなブライアンのことが好きで好きで、一緒に演奏できることが楽しくて嬉しくてたまらないんだろうなと思われたし
周りの人たちがそう思わずにいられないキャラクター(と、もちろん才能も!)ブライアンは持っているんだろうと感じた。

そしてこれだけの人たちに囲まれて、現役で音楽できて
でも失った人たちを想う悲しみや、過去現在のさまざまな辛苦は
生きている限りゼロにはならないんだなぁと
何やら人生の諸行無常さも感じたりした。

そういうの全部みた上で、何より素晴らしいと感じたのは
今の彼の歌声!!
歌い出すと急に、明るいパワフルなエネルギーが放たれる!
え?これ、さっきまで不安そうに、いかにも高齢者に見えてた人だよね?
ホンマに?って感じ。
ステージでは別人って、よく聞く表現だけど、まさにそれだと思った。

あぁそうそう、若い頃のブライアンの写真、鋭い視線がカッコ良かったことも書いておこう。
レコーディングスタジオでミキシング(っていうのかな?)してる様子とか、優しい顔立ちなのにカッコいいんだぁ♪

以上、映画「ブライアン・ウィルソン約束の旅路」を音楽無知が観てみた
その感動を、つたない表現で言葉にしてみました☆

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