「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」を観てきました

はじめに

 というわけでして、「インディ・ジョーンズと運命のダイヤル」を観てきました。

 インディ・ジョーンズに関しては一応シリーズは全部見ております。スピルバーグの旧作は何度も見ているくらい見ておりますし、ヤングインディジョーンも、テレビでやってたぶんは見ていると思います。まあ正直その時はX-Fileのついでで見ていたものではあるので記憶に残っている部分は少ないのですが、少なくとも90年代後半までインディが生きていることは確定しているのでね。まあ、あれを正史とすると目をつむらなければいけないところはいくつもありますが。

 他方、クリスタルスカルも見てはおりますが、あれはあんまりはまりませんでしたね。
 突然宇宙人が出てくるのはどうか、という意見があるのはあるのですが、そもそもレイダースの頃からして、殺人光線を放つ聖櫃が見つかるという、随分ファンタジーな設定ではあるのでね。その後も、トリックなしの呪術を使う魔宮に迷い込んだり、本物の聖杯で不老不死になったり、「そんな非科学的なものはない」というインディのセリフが白々しいほどには、ファンタジーなアーティファクトが見つかりますので。
 ただまあ、それを経た上でも、急に宇宙人に腰を抜かすのはわからなくはないです。
 クリスタルスカルがはまらなかったのはそこではなくて、全体的にわくわく感に乏しかったかなと。最後の聖戦から時を経た新作であることもあり、期待と実像のギャップがそう思わせたのかな、と思います。あれが最後の聖戦の3年後くらいにやってた作品だったら、宇宙人が出てきたとしてもここまでがっかりしなかったと思います。凡作扱いはされていたでしょうが。

 そのようなインディ遍歴であります。さてさて、「最後の冒険」と銘打たれている今作。むしろクリスタルスカルが最後じゃなかったのか、というところでもあります。
 リベンジしたかったんですかね。
 最後と銘打たれたのは、ハリソン・フォードの年齢なども考えてのことでしょうか。
 そう考えると、彼は非常に恵まれた役者なのではないかと思います。
 彼のフィルモグラフィーで有名どころというと、ハン・ソロ、インディ・ジョーンズ、リック・デッカードというのが思い浮かぶと思いますが、そのどれもが、近年新作が作られ、その上でしっかりと引退できている。非常に幸福だと思います。
 中には、他の配役はそのままなのに、その人だけ呼ばれないとかありますからね。エドワード・ファーロングとか。9割自業自得ですが。

 というわけで、「運命のダイヤル」のレビューです。

(ネタバレ注意!)









どちらかと言えばよい点


 端的に言ってしまえば、「あの時の80年代の、無謀で雑だけどパワーのあるアクション映画」を見ている感覚でした。
 とはいえ、自分は80年代はたぶんリアルタイムで見てないんですよね。最後の聖戦くらいは劇場で見た気になっていました。いや、見たのかな? ゴールデン洋画劇場とか、金曜ロードショーでは死ぬほど見てて、実際何回かは死んでたと思います。
 まあまあ、その時のわくわく感は、確かにありました。前作のクリスタルスカルと比べて、そこは明確にパワーアップしている、というか、正当に回帰している、と言えると思います。最近の作品によくある「破壊が派手すぎてどうでもよくなる」現象はギリギリ回避できてて、それゆえに「派手な大立ち回りをしている」と認識できるのです。「マン・オブ・スティール」で街を破壊しながら戦うスーパーマンとゾッド将軍に、全く気持ちが入らないのと逆の現象と言えるでしょう。
 あらすじについても、比較的最後の聖戦に近いながらも、最後の聖戦や他の作品ともまた違った味付けがされていてよいと思います。全く新しい冒険、というには、過去作も含めてやや既視感はありましたが、まあそこを気にするような作品でもないので、ここはOKでしょう。むしろ、ヘレナという新しいヒロイン像はなかなかによかったのではないでしょうか。
 そういう意味では、クリスタルスカルのヒロインがマリオンだったのも、ややクリスタルスカルの評価を下げていた原因でもあったのかな、と思います。
 そもそも、レイダースのマリオンよりも魔宮の伝説のヒロインの方が、よっぽどいい感じになっていたような気がしますが、マリオン推しなんですよね。
 まあまあ、そんな感じでヒロインもよかったし、展開もよかったです。

どちらかと言えば不満点

 過去作への目くばせについてですが、クリスタルスカルよりも抑えめで、個人的には好感触でした。クリスタルスカルは時を経た新作であったので、過去の思い出を引っ張り出すのも心地よい所はありましたが、フラッシュの時も触れましたが、最近はそれも食傷気味ではあるので、このくらいの抑えめでもいい気はします。
 ただ、これを「最後の」というのであれば、どうしても語ってほしいことがあり、そこが完全にノータッチであったのが、上記とは矛盾しますがやや不満かなと思います。
 どこかと言いますと、それこそラストですね。インディがアルキメデスのいた過去に戻り、帰りたくない、と言いだすところです。
 こちらが推測できる「帰りたくない理由」として、舞台の中で語られているのが「自分のいた時代にいる理由がない」ということ、そして「今時空を旅してきたこの世界はずっとあこがれてきた世界である」ということ。
 ただこのどちらも、あの場面では腑に落ちなかったんですよね。
 インディはなんだかんだでアンティキティラの捜索を楽しんでいたし、あの博士からアンティキティラを守ることにも意義を見出していたようなので、それなりに充実していたようには見えたのです。
 なので、あそこで帰りたくないという理由がすぐに見えず、何ならよくわからない駄々をこねているようにも見えるのです。それこそ、直近でフラッシュで触れたように「時間の改変はNG」が現在のポリシーであるので、インディのわがままを受け入れる視聴者もいないわけですよね。
 最終的にこのシーンでは、ヘレナに殴られて気を失っている間に現代に連れ戻される、という、ややコメディタッチな演出で昇華されたのですが、できれば、ヘンリーのことを思い出してほしかったなと。
 聖杯に固執したインディをヘンリーが止めたシーンが、少し想起されると思うのです。最後でないなら、この演出もなくはないと思うのですが、最後であるのなら、今は亡き父を思い出し、考古学者として自分の意思で現代に帰る、というサプライズを見せてほしかったなぁと。
 もともとのこの演出のしっくりこなささも相まって、ちょっとそこは物足りなさがありました。
 実際、オープニングでは若いインディを映像で見せていたこともあり、ある程度は何とか出来た気がするんですけどね。でも、故人を出すのはやっぱり難しいのかな? アーカイブでも全然いいんですが。

総評

 というわけです。
 総評としましては、「あの頃のインディ・ジョーンズがまた観られた。不満はなくはないが楽しめた」と言ったところでしょうか。
 ああ、あと字幕で見たのですが、翻訳がなっちでした。こだわりのない方には一旦吹き替えを見ていただくことをお勧めします。まあ今回は致命的な失敗はなかったので見逃してあげます。相変わらず文脈無視した雑な訳は多いんですが。
 インディ・ジョーンズもこれでおしまい、という所ですが、まあ前作からも時間が空いているし、喪失感はそんなにないですね。
 こんな能天気なアクションがこの2020年代にまた観られたことに満足です。そして、またこれからも同じように見ていけると嬉しいですね。

 

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