結婚式。

 方々走り回ってると腰入れとか、結婚式とか見たりする。
そんな中でも特に心に残ってる物がいくつかある。

 その1。
長閑な農村といった風景を車で走ってると、何故かパトカーがトロトロ走ってる。
その先に子供とスーツをビシッと着た大人。
子供も心なしお洒落な服装。
そんな集団が片側道路一杯使って歩いてる。
何だこりゃ、何かの活動家ってやつか?
一応追い越しも追い抜きも出来る道路だったから見晴らし良くなったらパスしようと待ち構えてると箱乗りになった後部座席のお巡りさんが
「お嫁さんが腰入れしてるところだから、静かにね」
そんな事を言ってニコッと笑う。
少しして直線になると、成程、思ったより長い列の先に神輿みたいに担がれてる白無垢着てるお嫁さん、その先に長い穂先に恐らく家紋。
その周りを紋付袴で練り歩く男衆、和服で楚々と歩く女衆。
これは抜けないし、騒がしく通り過ぎる物でも無いなとギアを一段上げて静かにパトカーの後に着く。
さっき箱乗りしてたお巡りさんが窓から手を出して、ありがとう、のサイン。
そこから暫くパトカーの後ろに付いて腰入れの様子を眺めた。
パトカーもサービスなのか左べったりで走り、私は右の方に寄せて走ってたから最後、お嫁さんがお婿さんの家に着いた所まで特等席で見る事が出来た。
パトカーも一仕事終えて脇で止まると後続車にお礼の仕草してた。
これは良い物見れたなとお巡りさんに手を振って走り抜けた。

 その2。
美味しい物を食べるのも好きだが、その次ぐらいに好きなのが寺院巡り。
地元の人しか知らないような神社とかも良く行ってた。
その日もフラフラバイクで走った先に神社がありちょっと参拝していこうと中に。
小ぢんまりした境内を巡り参拝も終わり、茶屋もあったので団子とお茶でも貰おうかとそちらの方に移動すると
「もしお暇なら少しお付き合いしてくださらんか?」
おじさんからナンパされ?
「暇ですけど、どうしました?」
「今日ウチの者が結婚するんじゃ、よければあそこで拍手して欲しいんだが」
おじさんが指さす方向を見ると何人か集まってる。
周り見るとおじさん、おばさんがあたり構わず声を掛けてる。
いいですよ、と返事し集まってる人の方に。
すると多分新郎のお親戚と思われる人が
「ここ、こんな感じで新郎新婦が歩きますから、ここに並んで下さい」
L字に並んで待つ事しばし。
木戸が開いてお爺さんの後に続き緊張気味の新郎新婦が静々と続く。
細い人の作った道に新郎新婦が歩き、拍手が湧き上がる。
緊張する新郎、少し目を伏せ口元に笑みを浮かべる新婦。
ほんの数十メートルだったが万雷の拍手に見送られて本殿の方に歩いて行く。
その姿が見えなくなると拍手も止み、並び方を指示してたおじさんの
「ありがとうございました」
の一礼で親族以外は良い物見れたとホクホク顔で散る。
私は少し興味が出てそのおじさんに話を聞くことにした。
「珍しい風習ですね」
きょとんとしたおじさんが
「そうなのかい?ここじゃ普通の結婚式だよ」
「そうですか、親族以外の人が入るのが珍しいと感じたんですが」
「なるほどね、ここじゃ多くの人を集められて拍手が大きければ大きいほどいいんだよ。ホントありがとね」
忙しかったようでもう一度ありがとね、と言って本殿の方に走って行った。

 その土地その風習で色々な結婚があるんだなとそんな事を思いながら帰る。
そして次回に何が見れるんだろうと胸を高鳴らせる。

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