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#7 Addict.

a.
わたしを不幸たらしめる其れについて
わたしは其れを壊さなくてはならない
幸福になると約束した

ヒトタビソレニ触れたなら
抜け殻になってしまう
ヤムニヤマレズ味わったなら
何者にでもなれてしまう

其れをわたしは壊さなくてはならない
わたしは幸せにならなければならない

抜け殻を夢で削り
真っ白い雪で埋め
赤々しく染まっては
やがて肌らしく色づいて
春には土へ溶けるのに
いつも 心至らない

わたしは幸せになる必要がある
わたしは其れを壊す必要がある

雪が、わたしを覆うから

世界の一片に
わたしのかけらを放り投げた
一面の銀の原に
幾千ものかけらは吸い込まれて
微かに汗ばんで 見つけた結晶
滴って 額を流れ落ちる
わたしのせいで

b.
ワタシは少しずつ枯れていく
程よい暖炉の消えた晩に
あなたが温かい水をくれたから

眩い灯りの消えない夜に
蒸留水の香りを与えてくれたから

真ん中の太い根だけを残せばいいと、
小さな地中のワタシに言い聞かせて
春にはまた葉を伸ばすから、と
遠くの葉脈に語りかける

何かの卵がワタシを蝕んでも
あの人の煙に巻かれれば
夢の中で雲を歩く
セカイジュウノ
花や実を空から眺めて

アラユルホシノ
雨や日射しを見下ろして
ワタシによく似た 土影を過ぎる

あなたは水差しを揺らして
ワタシの土影を、通り過ぎる

火のない夜の ヒトリ遊び

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