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【微ホラー】あの日のあれはなんだったんだろう #102

未だに「あれってなんだったんだろう」と心に引っかかっていることがあります。

当時私は27歳。友人に誘ってもらって始めたフットサルが楽しくなってきた頃で、その日は、少しでも体力をつけようとランニングをしていました。
夕方、陽が沈みかけ、空は濃いオレンジと紫色のグラデーションが美しい時間帯。
家からスタートし、田んぼ沿いの道をのんびり走り抜け、車通りの多い道路沿いを走った後は用水沿いの道を通って家に帰る、というのがいつものお決まりのコースでした。

最後の直線コースは用水沿いの道となっており、途中、左手に用水を渡るための小さな橋、その向かいに位置する形で右手に神社がある場所があります。

ランニングする際は必ずその神社のそばを走り抜けることになるのですが、その神社のあたりはあまり明かりがなく、常に静かで、正直、ちょっと不気味だなと感じていました。

その日もだんだん陽が落ちてきていたので、「早くあの神社の前を走り抜けよう」とラストスパートをかけていました。

徐々に橋と神社が近づいてきたとき、ソレが見えたのです。
遠目には、橋の向こう側に女性が立っているように見えました。

顔と体は私の方を向いていて、見ようによっては誰かを待っているような雰囲気。
ですが、すぐに違和感を感じることに。

その女性は、私が走って近づく間、微動だにしなかったのです。
私の走るスピードなんてたかが知れていますが、その間一切動かない。顔もずっとこちらに向いている状態。
そして、近づけども近づけども表情がはっきりしないのです。
当時私は乱視持ちだったので、夜になるとあまり目が効かないということもあり勘違いだった可能性は否定できません。
でも、顔のあたりがモザイクがかかったように見え、どんな女性かが全く分からなかったのです。

サーっと一気に血の気が引いた私は、荒い呼吸を繰り返しながら、その橋の前を全速力で駆け抜けました。
そして100mほど駆け抜けた後そーっと振り向いたその先に。
女性はもう、いませんでした。


時間帯的に、子供の帰りを待っていた女性の可能性は否定できませんが、あの日のことを思い出すと未だに心がひんやりするのです。
あれはなんだったのでしょうか。

それではまた、ごきげんよう。

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