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短編『忘れん坊』

「しまった。鍵がない‥」

 玄関の前で立ち尽くす僕。

「あっ、パパ」

 息子は明らかに僕の顔ではなく、足元を見ている。 

「しまった。靴を履いてない」

息子は鍵を開け、ドアを開けた。

「ママー、パパが」

 奥から、妻が眉間にシワを寄せながらやって来た。僕は慌てて言った。

「いや、鍵を忘れちゃって。あと、なんでだろ、靴も忘れちゃったみたい」

 妻は本当に嫌そうな顔をして言った。

「それで、離婚したのも忘れたって言うの?」




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