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レビュー論文が原著論文を破壊している

▼ 文献情報 と 抄録和訳

創造的破壊;科学的キュレーションの構造的帰結

McMahan, Peter, and Daniel A. McFarland. "Creative Destruction: The Structural Consequences of Scientific Curation." American Sociological Review 86.2 (2021): 341-376.

[ハイパーリンク] DOIGoogle Scholar

[背景] 科学的知見の伝達は、学術的な議論の基本。本論文では、解釈的な学術成果の典型的な形態である学術的なレビュー記事が、その要約を目的とする研究コミュニティを実質的に変化させるキュレーション作業を行っていることを示している。

[方法] 何百万ものジャーナル記事のコーパスを用いて、学術的な注目の指標である引用と共同引用に焦点を当て、レビュー記事が引用する出版物に与える影響を分析した。

[結果] 分析の結果、一方では、正式なレビュー記事に引用された論文は、一般的に将来の被引用数が大幅に減少することがわかった。

[考察] 一般的には、レビューで言及された特定の論文ではなく、レビューが引用される。一方で、レビューは、研究テーマに関する文献を精選し、統合し、単純化する。ほとんどのレビューは、研究の明確なクラスタを特定し、トピックを全体として統合する模範的な橋を強調している。これらの橋渡しとなる作品は、レビューに加えて、今後のトピックの略語的な特徴となり、不釣り合いなほどの注目を浴びることになる。このように、公式レビューは創造的破壊を行うことで、ますます拡大し、冗長になっていく知識体系を明確にし、理解しやすくしている。

▶︎この論文に関して、Scienceがレビュー記事を出している

McCartney, Melissa. "Creative destruction by review papers." Science 372.6539 (2021): 251-252.

[ハイパーリンク] DOI, Google Scholar

[レビュー内容] レビューは、科学者が個々の研究成果をキュレーションし、合成し、単純化して、特定の分野の首尾一貫した概要を示すものである。しかし、いったんレビューが利用可能になると、個々の研究成果自体はどうなるのだろうか。McMahanとMcFarlandは、何百万ものジャーナル記事のデータを分析し、レビュー記事が引用された出版物に与える影響を調べた。一般的に、レビューはその中に含まれる特定の研究結果ではなく引用され、その結果、個々の論文が将来的に引用されることはない。また、レビューは、重要な知見やそれらの間の関係に注目が集まり、結果的に知識の領域が大幅に単純化されてしまう。著者らはこれを「創造的破壊」と表現し、科学を行う者が科学を要約する者の影に隠れてしまうことを意味している。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

原著論文はレビューされることで、ある種の「フォルダ」に入れられてしまう。そのフォルダに一旦入れられてしまうと、省みられる機会が減ってしまう。1つの原著論文は、たくさんのシナプスを持っていると思う。その一端だけをレビューされた後、使われにくくなってしまうというのは確かに弊害だ。だがフォルダに入れて1個の概念を形成することで、さらに高次な概念が形成されることも大事だ。その部分への個人の認識と、個々の原著論文のシナプスを解剖するまでしっかりと読み込み、記録し、データベース化しておく努力が求められる。