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〇年前の小説大賞で講評をもらった黒歴史とのご対面記録

Q.ハア……ハア……動悸が止まらねえよ……これが、恋……!?
A.いいえ、それはストレスです。

ネタバレという程でもありませんが、オチから書くと一次選考で落選しました。もらった講評・作品の公開もありません。ただただ私が当時を振り返りながら当該黒歴史を読み返し生暖かい目から血涙を流している記事です。

日々広大なネットの海に黒歴史のデジタルタトゥーを更新している私ですが、先日、某投稿サイトのアカウントにメッセージを頂きました。ざっくり言うと「続きが読みたい」という大変ありがたいものです。シリーズの一話のみを公開しており、残りはと言えば一時期二次創作界隈を賑わせたパクリ問題(黒猫さんのあれ)を経て全て非公開にしていました。
騒動の現在の動向はあんまり把握してないけど、そこそこ時間経ったし再公開しても良いかな………………

ここで私は非公開にしていた自作品を読み返す。

やっぱりだめだ!!!!!

恥ずかしいオブ恥ずかしい。羞恥の赤と疼きだした傷口から流るる鮮血に染まりしレッドカーペットでできもしない側転を繰り返す。再公開したところで未完だし時間が経ちすぎて続きを書ける気もしない。
でも私もオタクなので「あの話もう一回読みたい!」気持ちは痛いほどわかる。再公開はないと思います、と書いているのに未だにコメントやフォローを頂いているんだから本当にありがてえし申し訳ない話です。

とかもだもだやってるうちに思い出しました。

そういや昔新人賞に提出した怪文書あったな

自傷が趣味なのかなって自分でも不安になるスムーズさで引っ越し以来クローゼットで玉手箱状態(マイルドな表現)になっている段ボールを開拓し、昔使っていたUSBを発見。びっくりするくらいあっちゅう間に見つかった。我ながら物持ちが良すぎる。歴史保全を尽くした当時の私、天晴れ。文化財修復技術者にでもなろうかなハハハ。
ああ~~こんなことあったな~~とごちゃ混ぜになっている画像ファイルや音声ファイルに埋もれ該当のWord文書と講評PDFを発掘。
ちょっと読んでみようか(更なる自傷)

と、いうところで本題です。


ところで前回までの堅ッ苦しい偉そうな語り口はどうした?って感じですがこっちが素なのでウルセーしょうがねえ!!がアンサーです。
自分で自分の傷口を抉りそれを放逐するだけの簡単なお仕事に勤しんでいるのにそんなところまで気を使ってられっかボケナスが。

遡ること〇年前、〇はお好きな数字を入れてネって感じですが5年以上10年以下ってところですね。年齢がバレるのでね。当時の私はスマホもなく薄汚い大人の薄汚い現実を知らない純情な学生さんでしたね(ほぼバレ)。
お世話になった出版社がこちら。

現在第16回が開催中。私が出した頃はこの数字はまだ一桁でした。時の流れって早い。

冒頭で二次創作がなんだのと軽く発言していますが、元々私は一次創作クラスタであり、現在は一次メイン、二次は読み專、ジャンルや推しの人口密度によっては生産もするってレベルの文字書きです。一次の公開は現在していませんが永遠に自ジャンルで反復横跳びを繰り返す元気な限界オタクです。余談ですが一次創作(オリジナル小説)は小学生の頃からやっています。

大賞応募の理由は一次選考落ちでも作品の講評がもらえると言う一点。当時家族が知人から譲られたパソコン(WindowsXP)がネットも(安定性とセキュリティ的に)碌に繋げられず、マインスイーパーくらいしかやることがねえので早々に箪笥の肥やしになった鈍器をこっそりパクって書いていました。多分普通にバレていたと思います。これも余談ですが譲ってくれた知人のエロファイルがあったことを今思い出しました。ロックがかかっていたけどファイルの名前で中身がお察しだった。なんでそのまま人にやったんだ。そしてもらったんだ。あの人今も元気かな……。

怪文書

さて問題の怪文書ですが提出したタイトルは「月の兎と月に行った僕」。
当時の年齢から考えても、人生経験値・創作に関するインプットとアウトプット量から考えても内容はお察しなので頑張って褒めるところを探しながら振り返りたいと思います。

片田舎の村の村長ハルキが月からやってきた銀髪けもっこミユリと出会い、城に幽閉されている彼女の双子の姉ユウを助けるべく月へ行くボーイミーツガール。タイトルそのままじゃねえか

六万字ちょっとの異世界ファンタジーですね。ぽんぽんカタカナが出てくるけど「十年前の”焔の災厄”以来俺の右腕に封印した”漆黒のアルカナ”が疼きまくって仕方ねえ、それもこれもあの忌々しき”マラディクション”のせいだ!一般人に危害が及ぶ前に”神託のフォルトゥナ”を見つけないと……!」みたいな痛々しさはないのでまだマシでしょう。
どちらかと言うと児童文学じみた(なんせ書いてる本人が児童)、のんびりした雰囲気の話でした。

「でもミユリ、村に入りたいです。決めました、入りたいです」
「駄々っ子か君は」
 気絶して零時に間に合わなかったことを根に持っているようだ。
「帽子、持ってますので。これで耳を隠します。拒否したら『このひとのせいでにんしんさせられちゃった』と大声でわめき散らします」

児童文学じみたのんびりした雰囲気とは?????
ありがたーい保健体育の授業もちんぷんかんぷんのお子様が語感で言葉を並べるのはやめなさい。妊娠の仕組みもろくすっぽ分かっていなかっただろうが。これだから日本の性教育はクソ。そうです私が耳年増です。

ちなみにこの月から来た兎の少女、というのも簡潔ながらそこそこ練られていました。設定厨の片鱗はこの頃から既にあった模様。
あまりに自分勝手に世界を消費する欲深い人間にブチギレ人間から無作為にいくつかの動植物を取り上げた「神様」。その中の一つが兎で、人間世界を脱した彼らは月に住処を移し、そこで独自の文明を築き今に至っている。月は平和な世であったが、双子の姫が生まれてから状況は一変。災厄の証であると予言された双子の存在をどうするかで月は大わらわ。
まあよくあるやつだけど分かりやすくて良いんじゃないですかね。この双子というのがヒロインとその姉、ミユリとユウ。
人間から引き離すために取り上げたのに自治統治させたら人間みたいになっちゃったって訳。人間が欲深いのではなく、強欲を形にしたいきものの名前が人間なんですね。へえ。この設定は嫌いじゃないです。

そんな感じで純情少女が頑張って考えたお情け程度の上辺の色気を並べつつ月へ来た二人。一応お姫様なのにパパ王に盾突いて勘当され下宿住まいのヒロイン。謎に倒れたり喧嘩売って勝ったり負けたりしながらヒロインを絆していく主人公。うーん、完成度を抜きに考えれば王道といえば王道なのか。

最近のライトノベルは良くも悪くもバッと通った転生トラックが僕を引き摺って異世界へ、チート能力で俺TUEEEEEEけどスローライフしたいので波乱は結構です、という印象が強いけど、ボーイミーツガールもギャップ萌えも定石だよね。ギャップを狙える程の下地がまるでなってないけど

ちなみに当時波に乗っていたライトノベル作品と言えばSAOが印象的です。キノの旅イリヤの空デュラララあたりも学校にあった気がする。ダブルブリッドとか好きだったな。私の周囲は時雨沢恵一一強だった。
さらにちなみに、私が当時めちゃんこ好きで今も好きなライトノベル作家は鏡貴也ハセガワケイスケ南房秀久も好き。もうちょっと広く児童文学に寄ると草野たき。海外文学はほとんどノータッチだったけどバーティミアスはアホ程読み直しました。
どんどん話がそれていくが、ここまで読んでいる物好きがいるならぜひこの作品も読んでください。これは私のバイブル。夏が来る度読み返し、今でも思い出すハードカバーの児童文学。どっちも市の図書館で出会いました。


閑話休題。傷を穿り返す作業があまりに辛い。
ばーっと斜め読みしていくと夏祭りデートをしていました。ところで場面転換でもないのに台詞強調のために改行するのやめなよ。ケータイ小説じゃねえんだぞ。

「それ、なんですか?」
 紅くぴかぴかと輝いている。大きさは子供の拳大くらいで、丸い。それが細い木の棒に刺さっていた。
「なんだボウズ、満月飴も知らねェのか」
「まんげつあめ? それが名前?」
「ハ、ハルキさんは田舎から来たんですよ。――林檎を飴で包んだお菓子のことです。朱い月になぞらえて満月飴って呼ばれてるんです」

あ~~~~~こういうのは嫌いじゃねえぞ!!!!なんせ今現在、私が完全異世界ファンタジーを書けないのは設定厨すぎて「ハンバーガー」の一つも出せねえからだ!異世界にハンブルグはねえからな!!
作中ではなんでかよう分からんけど兎が月に住んでから月が赤くなったらしいので、リンゴの赤と揃えて命名しているのもナイス。
で、おデート珍道中の半ば絡んできた貴族も田舎育ちで喧嘩慣れしていないはずの主人公がワンパンで解決。花火の光でヒロインの孤独の涙があらわになるのは良かったです。花火でお約束の突発性難聴がなかったのも個人的にグッド。
終始はよ姉ちゃん助けに行かんの?と思っていたものの、後半デートスポットがちゃんと姉ちゃん救出のギミック要素になっていたのも良かったです。幽閉されてる王城地下が月の街をそのまま縮めたものになっており、いちゃついた公園にあたるポイントに姉ちゃんがいたそう。え、なんで???

「そっか。ちなみに僕は、青が好きかな」
 ハルキは上を見上げた。そこには、変哲のない迷路の壁が続いている。けれど彼は、天井の、さらにもっと上を見上げるようにして、つぶやく。
「青は、透明だから」
「透明……」
 つぶやきを聞き取ったミユリが、繰り返す。
「透明なものって、この世にふたつしかないんだよ。なんだかわかる?」
「え……と、なんですか?」
「空と、人の想い――つまり心。どんなに濁っていたり曇っていたりしているように見えても、このふたつは、透明なんだ」
「空と、心……」
「汚れやすいっていうのは綺麗な状態に戻し易いってことだと思うんだ。空も心も、どんなに汚くて醜く見えても、いつかまた、絶対に透明になる」

この辺は歳相応のピュアがあって良いですね。今の私からは絶対出てこない考え方だと思う。人の心は空じゃなくて水だから、一回濁ったらもう戻らねえよ。珈琲が混じっても泥は泥だけど、珈琲に泥混じったらもう飲めないもんな。
ちなみにこの数ページ後主人公はパパ王に向け拳を振りかざし「殺されたくなかったら二人の前に二度と顔出すな」的な脅しをかけます。その主張で「人の心もいつかまた綺麗になる」はギャグでしかない。多重人格者の方ですか?虫も殺せないような初登場をキメていたのは幻覚だったようだ。

で、なんやかんやしてパパを倒し姉ちゃん連れてハッピーエンド!行く場所もないから主人公の街に帰ってお世話になろうかな、みたいな感じの終幕を迎えていた。
あとなんか一回二回しか登場のなかった街のエキストラたちが「週刊漫画の最終回にありがちな怒涛の結婚ラッシュ」の類似ケースを踏襲していた。いや誰だよ。そういうのはシリーズ通してしっかりキャラを立てて、そうして最後にやるのよ。何もかも足りねえのよ。

まあ設定も荒いし一字下げるところが二文字分下げちゃってたり話も荒いしキャラも荒いしもう「荒い」に尽きる話だったけど、一応ライトノベルを目指しただけあって会話文と地の分の割合は良かったと思う。でも話の簡潔さはライトどころじゃなかった。薄味にも程があるぞ。

講評

GA文庫さんでは希望者には「評価シート」が配布される。一次で落ちてももらえる。現在もやってるっぽい。今の文章力でもう一回出して評価欲しい。

「設定について」「キャラクター」「ストーリー」「作品構成力」「文章力・表現力」の五段階評価、A~Eのランク分けに加え総評までついてくる至れり尽くせりぶり。こんな怪文書に時間を割いてくださりありがとうございます。〇年ぶりに読み返してありがたみに泣いています。

各項目の評価は2~3、作品ランクは「物語としての体裁は整っているが、つたない部分が目立つ」C評価でした。えっこれCで良いの???うれC

総評をざっと要約すると

・おとぎ話的な優しい雰囲気が良かった
・過度なエロやアクションが多い昨今のラノベの中で、こうしたほのぼのした作風はかえって新鮮かも
・でも技術的にはまだまだ未熟
・舞台の設定やキャラの心情が具体性に欠け、説得力に欠ける

せやな!!!!(赤べこ)

「辛めの評価になったが」とありますが全然辛めじゃないです。自分でもそう思う。めっちゃ頷きながら読んだよ。見解が一致して嬉しい。
特に最後の舞台の設定やキャラの心情が具体性に欠け、説得力に欠けるという点、もらった時もめちゃくちゃ頷いて赤べこしたのを思い出しました。主人公の動機や性格がふわっっっふわなのはよくわかるし、具体的な設定を明記しなかったのは「あえてそうしなかった部分」「技術不足で表現できなかった部分」があるっぽい描写でしたが、そもそも使い分けができていない時点で明快さが足りない
でもこの部分、今は結構改善されていると思う。現在の書き方というかポリシー的なモノの一つとして「過去に裏打ちされて現在がある」という考え方があるので、舞台・人物ともに設定をしっかり作って書くようにしている。実際できているかは別として、特にキャラクターの行動動機はめちゃくちゃ考え込んでいます。怪文書を提出して評価シートをもらった得た成果は確実に今まで繋がっています。過去に裏打ちされた現在、図らずも自分で回収できたネ。はあと。

講評の最後に「小説を一本最後まで書き上げるというのはそれだけでもすごいこと」という旨の一文がありました。これを胸に精進したいと思います。
雑になってきた文章でお分かりかと思いますが現在私は満身創痍です
半日潰して黒歴史掘り返してこのザマよ。供給が自分しかいない創作物で狂えるのはマゾか変態だけってばあちゃんも言ってた。やっぱり私もそうかもしれない。貴重な休日を潰してなんてものを発掘してしまったんだ。

まあそれが私なんだからしょうがないよね!(白目)
ハルキ、銀髪けもっこヒロインと仲良くやれよ!できればもうあんまり会いたくないがそっちはそっちで元気でな!アデュー!

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