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生きてるうちにアーティスト転生 ~ライアー奏者編 後編~ 

主婦からライアー奏者になった三野友子さん。

前編では、三野さんがどんなきっかけでライアーに出会い、その魅力にどっぷり浸かり、どのように表現の場に飛び出していったのかを伺ってきました。
ここからは、どのようにプロとして活動されるようになったかをお聞きしたいと思います。

ー実際ご自身がプロ意識を持ったと思った瞬間はありましたか?

三野「初めて、自分の直接知らない人が演奏を聴きに来てくれたときでしょうか。最初はmixiとかホームページに書き込んで『いついつこの場所で演奏をします』というような告知をしていたんです。例えば、小さな喫茶店とかそういう場所での演奏です。それに、全く知らないお客さんが来てくれた時には、もうこちらの方がびっくりしてありがたいという気持ちになりましたよ! そしてそこから長いこと応援してくれる方たちもいらして、、、心底嬉しかったですね。少し自信がつきました。でも今思い返せば、その頃はまだまだという演奏だった気もするのですが(苦笑)」

ーそこからプロとして続けていけると思った瞬間はありましたか?

三野「それまではいろいろなところに「弾かせてください」とお願いしていたのが、『三野さんに弾いていただきたいのですが、いくらお支払いすればいいですか』と聞かれたときでしょうか。『あ、何かが変わった』と思いました」

ーライアー奏者で生計をたてるという道筋はどのようにたっていったのでしょう。

三野「楽器で生計をたてるというのは演奏会だけではないんです。例えば、ライアーを弾きたい方に教えること。これはきっと皆さん一番思いつきやすい方法なのではないかと思います。でも教えるとなったらそのためのメソッドの構築も必要で、それも手間暇をかけて研究しました。これもプロ意識のひとつかと思います。他にも、メジャーな楽器と違ってライアー用の楽譜ってそんなにたくさんあるわけではないんですね。でもライアーという楽器の性質に沿ったアレンジの楽譜は必要なんです。そこで作成した楽譜をまとめて出版もしたりしました。これはかなりご好評いただいてたくさんの方に手に取っていただいて2冊目も出版することができました。お仕事として成立させるためにはいろいろ手だても必要ですよね」

心に直接響いてくる音色です

ー演奏家として努力されたことにはどんなことがありますか?

三野「私はもともと自分のために弾くのが好きなんです。自分の好きな曲をアレンジして好きなように弾くというのが。その延長として、ソロで弾いてちゃんと音楽性をもった表現のクオリティ、つまりミュージックにするということが大きな課題でした。音楽的な土台というのが元々なかったですから。ただ弾くのとミュージックにすることの間には大きな崖があるんです。そこを越えるにはクオリティの高い音楽を聴いて学ぶしかないと思って、そこには時間をかけました。ライアーではソロをメインに活動してる方は当時少なかったので、ほかの弦楽器でソロで活動している方がどういう聴かせ方や見せ方をしているのかということを研究しました。例えば、ギター、二胡、ハープとかのステージを見に行ったりCDを聴いたり。リュートの先生のところにはライアーを持って何年か通って、音の繋ぎ方や音の作りかたの技術を学びに行きました。自分の中に音楽性が足りないと思った時、それを身につけなければこれ以上先には進めないと思ったので」

ーたくさんの努力をされているのですね。

三野「でも、それが不思議と楽しいんです。嫌なことではないのですよね。楽器の演奏技術の習得ってとても時間がかかるもので、地道な作業が多いんです。でも、その楽器が好きでみなさんに聴いてほしいって心から思ったら、やるしかないですよね!(笑)」

ーハッとしました。時間がかかっていいんですね。

三野「そうなんです。なんにもないところから始めるのですから。でも、本当にやってみたいことにトライして、ここから10年積んでいったら、今のあなたとはずいぶん違う10年後になっていると思いませんか? 人前での表現ひとつとっても、今のネット社会、やりたいと思ったら出させてもらえるステージを探すことも以前よりずっと楽になっていると思います。積もうと思えば経験を積む機会は実はたくさん転がっていますよ。いつまでも『ステージに立てたらいいなぁ』とふんわりした夢につかっているのも結構楽しいというのは私も知っているので(笑)否定はしないですけれど、本当にやると決めれば場所はあるんです」

三野「夢はワープできないものなんですよね。でもその経過を歩くことさえ好きなことです。好きなことだからこそ『何で私、冷や汗かきながらこんな恥ずかしい思いをしてるんだろう』なんてへこんだりする日があっても25年間やってきたのでしょうね」

にこやかな笑顔の中にも強い決意と力強さを感じ、芸術と向き合うということについて真摯に語ってくださるお話はどれも興味深いものでした。

実はインタビュー後に演奏を聴かせていただける贅沢な時間をいただきました。至近距離で演奏風景を撮るべくカメラを構えたのですが、間近で奏でられる音の魅力に、撮影などすっかり忘れ、直接心を撫でられるような演奏に時間を忘れてしまいました。

「叶えるなら歩き続けること」その大切さを伝えていただいた三野さんのストーリーでした。

#三野友子 #ライアー #プロになりたい #アーティスト #転生

ライアー奏者三野友子さんのホームページ


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