看護師から養護教諭になって数年経ったので経過と所感をまとめてみる(後編)


前回、様々な経歴を経て養護教諭育成機関までたどり着きました。
ここでもう一つ問題です。働きながら養護教諭養成機関の入試を受けなければなりません。

1.進学先の選び方、色々。

現在選択肢は4つ。うち3つは仕事をやめて進学することを想定しています。

1)仕事をやめるかやめないか

まず
やめるパターン
1、養護教諭特別別科(就学期間1年、取得免許状:一種)
2、養護教諭専門学校(就学期間2年、取得免許状:二種)
3、大学三年次編入 (就学期間2年、取得免許状:一種)

やめないパターン
4、通信制大学三年次編入(就学期間2年、取得免許状:一種)

こうして並べるとどう考えても特別別科一択かなと思いますね、今見てみると。ただ当時は
・三次救急のバリ多忙で疲弊していた
・そんな中勉強スケジュールと試験スケジュールが組めない(休み希望的な意味で)
・本当に地元を離れて学費生活費賄えるのか?

という懸念がありました。よく考えれば多分大丈夫なんですけれど、自分があまり地元を出ない人間だったので、ちょっとだけそこにためらいがあったのかもしれません。山形とか北海道の雪生活自分できるのかな…とかね。

なので早々に1を捨てました。あぁ、もったいない…今なら選んでいたかも…。
さて残るはみんな同じ就業期間2年。

◇取得免許状◇
大学三年次編入≧通信制大学>>専門学校

◇学費◇
通信制大学(安)>>>専門学校>>大学三年次編入(高)

◇入試難易度◇
専門学校(易)>>通信制大学>>>>>三年次編入(難)

とこんな具合でしょうか。まあ選ぶ大学にもよるんでしょうが…。ともかくすべてを検討し、ない時間を捻出してオープンキャンパスにも行ったりいかなかったり…(編入者用の説明ってそんなになかったりする)
しかも、大学3年次編入は看護学科に入学することになりますが「編入学者には保健師資格に係る授業の履修をさせない」としているところが少なくありませんでした。ですのでどの大学でもいいというわけではなく、編入学者にも保健師に係る講義を受講させてくれる大学を調べ、受験しなくてはなりませんでした。

2)進学先の決定

で、結局どれを選んだかというと

仕事をやめて専門学校進学

でした。今考えると正解かは難しいところですが、間違いではありませんでした。

なぜこの決定をしたかというと
1、実家から通える
2、学費が払える金額
3、再び学生をやるとなった時にあまりに放置されるとサボりそう
4、評判

などを総合的に判断した結果です。
1・2は想像できるとして、3、は総合大学に通ったことのない私には大学生がどれほど大変でどれほどサボれるのかが想像できなかったのです。せっかく仕事を辞めてまで勉強するならがっつり向き合ってもいいんじゃないかと思い、面倒見の良さ的なところを売りにしている学校を選びたかったのが第一です。4にも繋がりますね。

なので、上の比較ではどうしても選ばれそうもない専門学校を選びました。ちなみに看護師経由でこの専門学校に来ている人は他にもいたので、ない選択肢ではないと思います。

そしてあまり慰留されることもなく(悲しい)、救命センターを退職。夜勤バイトしない?と言われましたが丁重にお断りし、4月を迎えました。

2.いざ専門学校入学!自分の悪いところが明け透けになる辛さ


いよいよ養護教諭になるべく専門学校に入学しました。ここの就業年数は2年です。看護師資格を持つ人も持たない人も等しく同じ授業を受けます(後述しますが、免除になった科目は何個かあります)。

同級生は高卒ピカピカ18歳から私のように社会人経験したアラサーミドサーまで様々。みんな養護教諭になろうと入学したかと思うと経歴も違って面白く見えます。

最初の自己紹介で看護師業界で生きてきたイメージのまま喋ったらギャップがすごかった…
気の強い人の多かった看護学科の女子たちのイメージのままいたけれど(それはそれで大好きだった)、養護教諭の学科の人たちって優しいんですよねみんな。そりゃ保健室の先生目指すんだからそうなんだけど、優しさのベクトルが違うというか…。

なのでそのテンションでいたら自分がめちゃくちゃ嫌なやつみたいで入学早々へこみました。(みたいじゃなくて事実)

それでもやっぱり同級生たちは優しくて、こんな私を見放さずに仲良くしてくれました。結果すごく楽しい2年間でした。

就職してから思いましたが、当たり前だけど養護教諭って優しいだけじゃなれません。もちろん人として当たり前にできる優しさは大前提です。でも言うことは言う、ダメなことはダメ、そして何より数百人単位の学校で独りぼっちみたいな職種である程度意見したり保健室を経営しなくてはいけません。優しさだけでは務まらない仕事とだと思います。

余談ですが、同級生で最終的に養護教諭として就職した人、今も続けている人は、優しいだけではなく努力家だったり芯があったり。幹の太いしなやかな人が多いと思います。

3.学習内容について

あくまで通っていた専門学校の話ですが、誤解を恐れず正直に書くと「少し物足りなくてかなり心配」ということです。


私は看護師免許+実務経験を持って入学しました。その後「基礎看護1」の授業を受けます。信じられますか?私はマジで信じられなかった。笑

1)少しもの足りない

ベッドメイキングも包帯法も一からやり直しです。ここが授業に対する物足りなさの正体です。そりゃやったことあるならそうだよね。
(ちなみに私はオタクなので、転生主人公ってこんな気持ちなのかなとかキモいこと考えながらやり過ごしていました。へへ)

高卒の子に合わせ、しかも社会人経験もある。若干の物足りなさは仕方がないと思います。しかも看護学科と違って
・ベッドメイキングに並々ならぬ熱量を注いだ授業ではない
・包帯法の基本的な事しかしない
など、評価が甘めだなあとも思いました。わかんない、単に自分が学生していた時との時代の変化かもしれないけれど。

看護学科の時みたいにペーパーペイシェントを徹夜で12項目アセスメントしてふらふらになりながらミミズの這ったような字を解読するなんてことはありませんでしたので、専門学校の授業はそんなに難しくは感じませんでした。
現に在学中、成績優秀者として表彰もされました。まあ学ぶ範囲が被ってて2度目らなそりゃそうでしょう。むしろプライド的に絶対取りたかったのでほっとしました。

2)かなり心配

これも誤解を恐れずに思ったことを書きますと、養護教諭って一人職なんですよ。時に重症の対応もイニシアティブをとって管理職を動かしたりしなくてはいけません。そのための学習って本当にこれだけで大丈夫?と思わなかったかと言えば嘘になります。
いいんです、養護教諭は医療職ではないので医学的な知識がそこまで求められないのもわかります。でもね、やっぱり知らないじゃすまされないこともあるんです。
前述のとおりペーパーペイシェントと死ぬほどアセスメントしたり、なんてことがあまりなかったので、実際に保健室でアセスメントをしなければならないとき(受診は必要なのか、様子を見ていいのか)には少し足りないんじゃないかなと思ったのが率直なところです。
これがこの学校生活で思ったかなり不安な学習内容ということです。でももうこれは現場に出て嫌でもやりますので、自分と子どもたちを守るためにも自分で身に着けるよりほかありません。日々学習です。

3)看護師(+再入学)だったために免除された授業

※これは学校によるのできちんと確認することをおすすめします

私の通った学校では免除される講義(単位認定)が何個かありました。
1.看護師免許を持っているため免除になったもの
 ①基礎看護実習(5日間)
2.短大・大学を卒業したために免除されたもの
 ①体育
3.教員免許を持っているために免除されたもの(他の同級生の事例)
 ①日本国憲法
 ②体育
 ③外国語コミュニケーション
 ④情報機器の操作

(私は夜勤バイトをしていた関係でどうしても体育が受けたくなかったので、文部科学省に問い合わせをして相互単位として認められるとの返答を受け学校に申請しました。それでもその時に文部科学省の担当者からの返答は「単位認定するかは学校によるので、教務に確認してください」との返事だったので、相互単位として認められたとしても必ず単位認定されるわけではありません。)

といった感じで2単位(90分の授業1コマ)免除されて卒業しました。ラッキー。
ちなみに3.の場合の同級生は「中高の他の教科の教員免許を持ってから入学した人」でしたので、もし他の教科の教員免許状をお持ちで他大学で教職に必要な4科目の単位を取得済みの場合、認められる可能性があります。

4.就職について

1)新卒の採用試験(公立)について

他の業界に比べて、教職は新卒にそこまでのブランド力はありません(多分)。既卒でもフリーター(採用試験受けるために非常勤で食いつないでいる人も含む)でも力があれば受かります。

養護教諭を目指すうえで忘れてはいけないのが「就職のむずかしさ」です。これはどこの都道府県、私立学校でもそうだと思いますが、養護教諭とは全校児童生徒に対して1人か2人です(超マンモス校なんかは除くとして)。主要教科の教員と比べ圧倒的に少ないです。
ただし、注目すべき点として『女性が圧倒的多数を占める職種』でもあります。どうにかして養護教諭のキャリアを積みたい、雇用形態は問わない、そしてゆくゆくは常勤になりたい(ぶっちゃけると教員業界これが正攻法というか、圧倒的多数を占める就職方法な気がします。ソースはないです)という気持ちで就職試験を受ける必要があり、また一発常勤になれないと思っている方がいいと思います。

同級生でも多かったのですが
①卒業見込みで採用試験を受ける→不合格
②登録会に参加して非常勤、臨時的任用として働く(職歴として教員採用試験で使えます)
③必要年度分臨時的任用、非常勤職員として働いたのちに、一次試験免除で採用試験を受ける

これが一番手っ取り早いのではないでしょうか。公立のことはよくわかりませんが、現場経験も積めるだろうし、非常勤なんかだと相方の先生がいて指導を受けながら仕事できるし。
公立の教職員になりたい場合こういったルートもあるよということを念頭に採用試験に望んでみて下さい。詳細は各自治体の試験内容に書かれています。これは入学してから確認するで構いませんし、入学した学校の先生が一番詳しいと思いますので、試験受けるくらいの時期にある説明会とかガイダンスをよく聞いておくといいと思います。
あと教育学部だと出張登録会と言って教育委員会の採用担当の方が出向いてくれてこちらから県庁等に行かなくても待機登録できることもあるのでよく確認してみてください。

私の場合は本っっっ当に運よく退職で空きが出た私立学校から求人票が来ており、ありがたいことにそちらとご縁があり新卒で私学専任として採用していただきました。これもまた一個の道筋かもしれません。

2)私学への採用について

前述で「看護師免許を持っているのにもかかわらず二種免許しか取得できない専門学校に入学した。この選択がのちに大きくかかわります」と書きましたが、ここに繋がります。

私学の求人票をよく見るのですが、そこに良く書かれている文言があります。
「看護師免許状を所持していると尚可」
これです。しかもこれ書いている学校は少なくありません。私学の養護教諭が集まる部会なんかに参加しても体感7割ぐらいが看護師免許とのダブルライセンスでした。

つまり免許状としては二種で弱いかもしれませんが、状況によっては大卒の人を蹴散らして優先される場合があるということ。

学校自体の偏差値が高い所(や、そもそも養護教諭免許状の取れる専門学校の存在を知らない?所)などは「大卒以上」が採用試験の要件だったりしますが、そうでなければ私学は未だに看護師免許が重宝されます。
私が受かった私学で看護師免許状がどれほど効力を発揮したかは知りませんが、私学の採用を視野に入れるにあたっては養護教諭の免許状が二種である(学歴的な)マイナスよりも、看護師免許を持っていることがプラスに働く場面があるかもしれません。

私学の採用はこういったタイミングや持っている資格、そもそも学校自体のレベル等で就職のむずかしさは変わります(研究内容の提出、理想の保健室等の小論文試験、独自のペーパーテストなど、私学により採用試験の内容は様々です)

というわけで私はあの時選んだ専門学校に来ていた求人票のおかげで養護教諭として名乗れているわけです。感謝ですね。

余談ですが、公立の教員採用試験でも自治体によっては所持資格(看護師)により明確な加点もあります。調べてみてください。

5.養護教諭として働き出してからのギャップ

1)人が優しい


これめちゃくちゃ語りたかったんですけど、同僚がめちゃくちゃ優しくて驚いきました(マジ)。
確かに自分の社会人経験を経てからの再就職的なところはあるので、そもそものマナーとか社会人としての振る舞い(報告とか業務の組み立て方とかね)は新卒に比べて違ったのかもしれません。でもそれにしても。
まずこれ終わってない、あれ終わってない、勉強不足すぎる、ルート汚すぎるとか何もかも怒られ続けた3年間は何だったんだろうと思うくらい入職してから叱られ案件がありませんでした。すごい。

2)5日勤いける?


看護師上がりの人が皆さん不安に思うことだと思います。そうです、5日勤です。
結論:いけます。
そもそも看護師と養護教諭では業務内容が違います。看護師はその日決められたことを時間に追われながらこなしていきますが、養護教諭はそもそもそこにゆとりがあります。11時に血糖を7人分測定してスケールかけてヒューR吸って…なんてタスクはそうそうありません。これは保健室来室者の人数や学校の実態にもよるんでしょうが。朝から5人体拭くとかもないしね。

事務処理など、自分で時間を組み立てて仕事をこなしていくことが多くあります。仕事の仕方が全く違うのです。
似通っている部分は多いです。イメージとしては外来が近いでしょうか。ですが良くも悪くも自分で業務を組み立てられるものが多いので、そういう意味ではあの時間に追われ記録に追われた看護師の時とは体の動かし方や仕事の取り組み方が違うのです。
あと週末に2連休が(公立なら)必ずあります。これがこんなにもモチベになるなんて看護師時代の私は知りませんでした。部活の顧問とかすると劇的に大変だと思いますが。

未だに看護師時代の同期同級生に「5日勤とか無理だわー」と言われることがあるのですが、ハイハイと受け流しています。だって仕事が違うからね。

3交替で勤務していた私からしたら「出勤した日に家に帰って来れる」ことがこんなにも素晴らしいことなんだと気づけただけでありがたかったです。はい。

あと、私学は学校によって土曜が出勤でその代わり平日に研究日(休暇)を設けるところもあります。そうなれば5日勤ではありません(週に5回日勤という意味では5日勤ですが…)。何にせよできます、大丈夫です。慣れてしまえば5日勤が普通なので。

4)参考図書の少なさ


これ、もしかして全国の看護師経験者養護教諭は同じ思いなのではないかと思ったことがあります。養護教諭という業界がそれほど大きくないせいか、教科書が圧倒的に少ないと思っています。

例えば子供の外傷の重症度判定を勉強をしたいなと思って本屋さんに行くとします。あるのはこんな本です(タイトルは架空の物です)。

①養護教諭のためのけがの手当てがわかる本!
②看護師必携!外傷処置マニュアル
③研修医当直ER必携

私が悩んだのはこのあたりですが、解説していきますね。

①の本は圧倒的に根拠になる部分が薄い。本当に薄い。言葉も医学的な物は極力使いません、なので、反跳痛の有無とかダブルリング兆候とかの世界で生きてきた私にとっては何のことを指しているかいるのか逆に分かりにくいのです。大まかには分かるけど、掘り下げようとしたら物足りない、そう言った感じです。
保健室ではそこまで求められていないと言えばそれまでですが、救急隊にだってある情報はできるだけ伝えたいしそれが正しい病院選定やひいては救命につながるということは身に染みてよくわかっているつもりなので。

②の本はタイトル通り、処置・手技に特化しています。これも看護師対象ですのであたり前です。外来や病棟で包交や胸腔ドレーン管理ができるようになるために読まなければいけませんからね。
しかし胸腔ドレーンが挿入されている人はまず一般の保健室には来ません。当たり前です。なのでこういうミスマッチが起きてしまうのです。

③は内容としてすごくいいのですが、たいてい『20××年ガイドラインに基づき、CT、採血でのCKの上昇を確認する』みたいなオチにたどり着きます。これも当たり前です。お医者さんがガイドラインに沿わない根拠のない診断をするはずないですし、設備の整った医療機関で必要な事と言えば上記の通りなので。でも保健室でCKの上昇を確認しますか?しませんよね?CTおいてある保健室って何なんだよ、って話ですよね?そう言うことです。

つまり、『医療機関ではないし医療職でもないけれど、根拠をもってけがや病気と向き合わなければいけない』人にとっての情報が少ないのです。

唯一良いなと思った本は『深夜の医療機関電話問い合わせ~こう聞かれたらどうする?どんな質問をする?電話問診マニュアル~』みたいな本です。そうそうこういうの、みたいな気持ちになりました。新卒養護教諭の同級生にも勧めた気がします。

余談ですが上記の悩みを養護教諭関連の本を多く出す出版社から来たアンケートに書いてみた所(養護教諭の本は根拠が薄く、看護師の本は処置の事ばかり、医者向けの本はガイドラインに収束してしまうのでいいとこどりの本が欲しい)、何かに響いたのか抽選で当たるその出版社の本をいただきました。笑
こう思っている2年目~3年目の養護教諭、意外といるんじゃないかなあ。

6.まとめ

というわけで看護師から養護教諭になった経過をまとめてみました。途中ややこしいところもあったかと思いますすみません。
養護教諭の免許状だけではできる仕事は限られます。何せ養護教諭にしかなれませんからね。特例は除きますが。
しかしそこに看護師免許があると選択肢はぐっと多くなります。
看護師の経験+養護教諭の経験があれば福祉施設などに転職しようとしたときに保護者とのかかわり方が理解しやすかったり、教育を学んだ上で看護師に戻った場合、新人教育担当とかになっても力を発揮できるかもしれません。

今看護師免許しかなくて、それでも養護教諭をやってみたいな、仕事をやめて免許を取りたいなと思っている人は、最強の保険である看護師免許状を盾に一歩踏み出してもいいのかもしれません。学費分だけ貯金してね。後は夜勤の看護師バイトとかで何とかなります。笑

看護師としての再就職は正直余裕なので、もしも少しでも挑戦してみたいと思うのであれば説明だけでも聞いてみるといいかもしれません。養護教諭を目指されている方、ぜひ頑張ってくださいね!

おわり


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