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長野、VOTANO WINE、シャルドネ、2020

松本に住みはじめたのは2003年くらいから。最初は、川の側のマンションだったが、築年数が古く、部屋も狭めだった。風呂の設備なども、若干くたびれていた。

一度、お湯を個別の貯水槽にため、そこで湯を沸かして給湯する仕組みのマンションだったせいで、引っ越してきた初日に風呂に入ろうとしたら、お湯が出ないという状況に泣いた。

その川は、少し前に「白線流し」というドラマの舞台となっていたと聞き、興味深くはあったが、かと言ってそのようなことをやっている姿を以後も見なかった。考え違いを自分はしていたのだろうか。

住むと言っても、最初は、週の一部を東京で過ごし、週の終わりに松本に帰るという、スタイルだった。今は、そういうスタイルも普通になっているが、当時はまだ、お金もったいなくないですか?と言われたものである。

都会の喧騒と距離をとって、というのは言い訳であり、そういうところでの仕事を割り当てられたからでもあるが、週末は時間ができた。週末にはなかなか東京ではできないことをやろうとした。まともな蕎麦を食べに行ったり、新鮮な野菜を買いに行ったり、ワイナリーを巡ったりするようになった。

最初は、近隣の酒屋を回ることから始めた。酒は、ここにしかないものがある。それで、松本市でしか味わえないもの、という基準で探したら、日本酒やワインに導かれていった。

松本市には、山辺ワイナリーがあったし、隣の塩尻市には、井筒ワイン、五一ワイン、信濃ワイン、(株)アルプス、そして、新興の城戸ワイナリーが建設中だった。当時の中信は、メルローの好適地として注目されていたけれども、それほどワイナリーが多かったわけではなかった。2003-2004のシーズンのことである。

当時は井筒ワインのシルバーが美味しい、というくらいなイメージだったが、2005年、2006年くらいに城戸ワイナリーのコンコード、ナイアガラを飲んで、美味しいと思った。その後、井筒、五一ともに、日本ワインの注目度が上がるにつれ、ラベルを変更し、テロワールや原料を明確にするようにつとめるようになった。(株)アルプスも、ミュゼドヴァンのシリーズをバラエタルでリリースするようになり、日本ワインの変化を感じたものである。

購入したものを並べる、長野ワイン

そういう中で諏訪に引っ越したりなんだりして、松本に戻ってきたとき、塩尻に新たなワイナリーができるという話を聞いた。VOTANO WINEというらしい。坪田さんという方がやられているという話だった。

村井という地域にあるヤマザキショップに擬態した丸山酒店という不思議な店がある。そこに、VOTANO WINEの2009年のケルナーが並んでいたのを初めてみて、うち一つを無理に言って購入した。

かなりオリが発生していて、丸山さんも、もう売り物じゃなくて、自分で飲むつもりだったんだよなあ、と苦笑していたが、ケルナー、ダメージもなく美味しかった。それで、翌年、ケルナー2010、そしてメルロー2011と購入した。まだ、委託醸造のころのラベルである。

自社醸造をされたのは2012年からだったのではないか。

VOTANO カベルネソーヴィニヨン 2012

このVOTANOさんのカベルネ2012は、酸化しちゃったので、割安で譲ってくれると言っていただいた一本を、どの程度のものだろうと味見した時の写真。懐かしい。時間の経過とともに果実味が頭を出してきた。もう一本は、まだ寝かせてある。

これ以降、収穫年の翌々年1月から3月の間に定期的にリリースされておられ、毎年購入させてもらっている。最初引き取りに行っていた時は、自宅兼醸造場に伺っていたが、2011年ごろにキレイなワイナリーショップもできた

その後は毎年、その年の経済状況に応じて購入している。ちょうど確定申告の時期で、すべてのワインを買うと怒られてしまう額になるので、ひと箱程度しか買えない。

凝縮したワインで、酸、タンニン、アルコール分等があり、ボディがしっかりしているので、寝かせている。したがって、実は飲んだものは少なかったりする。

VOTANO カベルネフラン 2012

古いところでは、お歳暮で一本を別の人に送ったカベルネフラン2012。これは、酢酸もなく、凝縮感のある重厚な味わいだった。ラベルに、「O」の文字が書いてあって、新樽と古樽(O)の区別があった。私が飲んだのは古樽。穏やかなバニラ香が追っかけてきて、美味しかった。もう、このビンテージは、おそらくカベルネ・ソーヴィニヨンしかない。

VOTANO メルロ‐G 2014

この年は、メルロが三種リリースされた年。契約農家さんのメルロを使ったメルローAi、垣根仕立てのメルローV、カーテン仕立てのメルローG。もしかするとVだけ残っているかもしれない。Aiは軽快、万人向け。Gは、もう少しおいてもよかったが、凝縮しており、長期熟成に向く。

シャルドネに関しては、2016を飲んだ。このシャルドネは、カベルネ・ソーヴィニヨン2012と同様に、酸化気味ということで安くリリースしてくれたもの。

VOTANO シャルドネ 2016

この年のシャルドネは、かなり瓶での個体差があったのかもしれない。醸しに近いオレンジ色をしたシャルドネは、開栓当初は、酢酸系の香りが強く、ああ確かにと思わせるものだったが、デキャンタして1時間、6時間、1日・・・そしてグラスを変えて、色々試した結果、

1日目もまだ。2日目から、果実味が舌の中で現れてきたものの、アタックのアルコールの刺激は好みを選ぶ。3日目、4日目になり、ハッサクや完熟りんご、ハチミツといったニュアンスがハッキリ現れ、アタックのアルコール感も弱くなり、じんわりとした果実味がゆずのような旨味を伴った苦味が感じられるようになりました。アフターにアンズやオレンジ、出汁感が感じられ、いい意味でのケレン味が後引くようになったと思います。私としては、4日目に瓶に残った液体を、大ぶりのピノグラスで18度が、ポテンシャルを引き出せたような気がしました。

と当時の記録には書きました。

で、今回、久々にシャルドネを購入しました。

塩尻ワイングラスに注ぐと、熟成感のある黄金色。樽をかすかに感じるも、意外に冷涼感のある香りと味わいで、おっと美味いぞ・・・と思いました。

VOTANO ケルナー 2013

個人的には、このケルナーが大変美味しく、飲んだのは2020年11月だったのだが、ここまで寝かせておいてよかった、と思ったもの。

遅摘みのおかげで、良い熟成がされています。ハチミツの香りにオイリーなニュアンスが少々。白い花の香りも後から。酢酸系の香りは全くない。味わいで、際立つのは、ミネラル感です。硬いとか、鉄っぽいとか、そういうんじゃなく、岩塩ぽいニュアンスが感じられます。牡蠣にかけたレモン汁をそのエキスとともに味わった感じ。そうでありながらアタックはハチミツのような厚みのある味わいで、じんわりとコクもある。

とメモには書いてある。

シャルドネは、収量が少なくて、ブレンド用にされたり(2017、2018など)、酸化気味という記載があったり(2016、2019など)となかなか苦戦されているが、2020年はやっとシャルドネ単体で出た!と思ったので、満を持して購入した。

シャルドネは、結構、年によって造り方が変わって、2010年代の前半は、もっとスッキリ系だったと思います。今回、醸しを入れて、かなりじんわりと旨味が染み出す味わいで、2日目は徐々にそのポテンシャルが出てきています。

外観はやや熟成感のある枯れた黄金色。香りとして、アプリコット、リンゴの蜜のような甘い香り、少し青いハーブ、VOTANOのシャルドネらしさが感じられます。アタックに、熟したリンゴ、カリンを甘くつけたもの、オレンジピール、湿気のある沼の周辺のような湿った感じ。独特です。ほんの少しオフも感じられるような気もしますが、これは好みの次元で、アフターにはミネラルを強く感じます。

というわけで、長野ワインとの付き合いは、VOTANOワインさんのワインとの思い出でもあるので、長々と書いてしまいました。

VOTANO シャルドネ 2020


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