太宰治『走れメロス』を読み終わって

最後の「帰去来」と「故郷」は一気に読み切ってしまった。やっぱり色々ムラが出て来ますね。「駈込み訴え」と「走れメロス」の間に、妙に長いブランクが出来てしまったり、とか。

そのせいか、『走れメロス』が終わったら読もうと思っていた『新樹の言葉』と『きりぎりす』がどこかにいってしまった。探している。どうしてなくすのか。私の永遠の問題である。

1935.10 「ダス・ゲマイネ」

〇パピナール中毒で入院
〇初代の不貞を知り、二人で自殺未遂、のち離婚
〇作品を書かなくなる
〇御坂峠で小説を書き、婚約

1938.9「満願」
1939.2「富嶽百景」
1939.4「女生徒」
1940.2「駈込み訴え」
1940.5「走れメロス」
1941.1「東京八景」
1943.1「故郷」
1943.6「帰去来」

このような時系列である。太宰の8年間。

この間を埋めるような作品は『新樹の言葉』『きりぎりす』という短編集に所収されている。ただ、そこからはみ出す作品もある。それが「HUMAN LOST」の前に書かれた短編コント「あさましきもの」だ。新潮文庫では、初期短編集『地図』に、所収されている。

短編集『走れメロス』は、やはり名作ぞろいだ。作家になりたい自意識との葛藤、含羞と人へのやさしさ、キリストへの仮託、山梨や青森との関わり、翻案的作風、女性の語りの採用、だいたいが含まれている短編集で、さすがによく編まれていると思った。

ただ、「ダス・ゲマイネ」がある意味で一番読みにくいので、それはもういっそ『二十世紀旗手』の中に入れて、この文庫は「満願」からスタートしてしまうのも、手ではないかな、と思った。あるいは、「I can speak」を入れてやるというのも、いい。

今回、「満願」から齋藤孝、「女生徒」から有明淑の日記、「駈込み訴え」からユダの福音書、という感じで、副読本がパラパラ出てきた。こういう副読本を読みながら、スローに読んでいくしか、もうない。

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