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「三十五年越し エピローグ5」/『男はつらいよ』 リリー三部作:寅のアリア=リリーへの至純の恋に重ねて、、、

 「(5) 自立のいとなみと美智子さんへの恋」 の中で、記しました芸や作品の第二弾です。

(「三十五年越し」や「雨と水玉」については上記記事全リストをご覧ください)

 昭和六十二年、あのデートの失敗で破れた恋心を優しく包んでくれた作品に、大好きな『男はつらいよ』リリー三部作が有ります。

 あの昭和六十二年、六十三年とで何回繰り返し繰り返し見たことでしょうか。

1)第一作『寅次郎忘れな草』/寅と同じ渡世に生きるマドンナ、リリーを迎えてシリーズは最高潮に達します。

お互いを知るからこそ引き合い、一方で業をぶつけ合う。

アウトローに生きる哀しいまでの業を痺れるような哀調で表現した第一作(シリーズ11作)『寅次郎忘れな草』。

ラストに近い、深夜のとらやでの、リリーが寅さんに投げつけた心からの叫び、これほど胸キュンとなる場面は他にありません。浅丘ルリ子は真に名女優です。

2)第二作『寅次郎相合傘』/二年後第二作(シリーズ15作『寅次郎相合傘』)は最初から寅とリリーの相思相愛の恋全開、散りばめられた小ネタも秀逸、最後の最後まで心をわしづかみにして離しません。

文字通りシリーズ最高作。

その中でも渥美さん一世一代の名芝居、シリーズ最高の場面と言っていいと思うのが、“寅のアリア”の場面、それはいつまでもファンの心をとらえ続けます。

リリーを仕事場までおくってとらやに帰ってきた寅次郎が、、、、、

『おい、さくら、おれ、がっかりしちゃったよ、ゴールデン歌麿っていうからさ、どんなところかと思ったら、ひでえところでさあ、、、、、、、、、あいつ(リリー)に帝国劇場とか、、、、、で歌わせてやりてえのよ、、、、静かに緞帳が開く、“きれいだな、いい女だな、ほらあいつは目なんかぱっちりしてるだろ、はでるんですよ、、、、、、よ!リリー!待ってました! ♪ひ~と~り~酒場で~、観客は聞き入ってますよ、リリーの唄は哀しいからねえ、、、、、、、やがて歌が終わる、拍手、大歓声、拍手、花束、紙吹雪、、、、、 あいつは泣くだろうな、いくら強気なあいつでも泣くだろうな、、、、、、』。

浅丘ルリ子は仕上げのフラッシュでこの場面を見て慟哭したといいます。泣けたねえ、浅丘さん、僕も泣けました、、、。

アリアを己の恋と重ね合わせた時、愛し合うことは尊いことだけれど人知れず恋ふる相手を思いやる深い心根にもひとが生きるに値する価値があるのではないか、という声が背後から聞こえました。

3)第三作『寅次郎ハイビスカスの花』/さらに5年後第三作(シリーズ25作『寅次郎ハイビスカスの花』)。この作品は大学に入学したその夏にリアルタイムで劇場で見ています。

リリーが病気で入院し、最後に寅に会いたいと、、、、。沖縄の病院での感動的な再会、寅のまごころがリリーの病んだ身体と心にしみわたっていく。

そして回復するリリー、、、、、前半の心打たれる寅の真心は青春のとば口にいた私の恋愛感情の基盤に強くインプットされることになりました。

しかし寅とリリーの仕合せな日々は長くは続かなかった、またも業がぶつかる。そして柴又での再会、やはり結ばれないか、、、、、、、。

でも、素晴らしいラストが最後に待っていた。これでシリーズが終わってもよいと思える最高に素敵なラストだった。寅とリリーは永遠に結ばれた、、、、、と胸に残る映像とともに思いました。

山田洋二がシリーズ終了後の特別編第49作としてこの作品をリメイクしたのもむべなるかな、と心底思います。




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