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「加山雄三の唄」/『僕の妹に』『海その愛』と岩谷時子

 加山雄三に「ぼくの妹に」という曲があります。彼の曲の中で最も好きな曲です。40年以上前になるでしょうか、高校生の時に東芝日曜劇場の確かドラマの題名も「ぼくの妹に」(昭和51年1976年から不定期で10作ということです)ではなかったかと思いますが、そのドラマの主題歌を聴いて感激したことを覚えています。当時デビュー間もない可愛かった中田喜子が妹役でドラマとしても良く出来たものでした。
 加山雄三の曲の過半は、越路吹雪の親友でありプロデューサーでもあった岩谷時子が作詞をしていますが、「ぼくの妹に」の詞は、簡にして要、本質を伝えていながら暖かい衣を優しくまとっている。そして何より加山雄三が歌うことを想定して、メロディーと完璧なまでに符牒を合わせこれ以上はない美しい日本語で綴られています。本当に素晴らしい日本の名曲だと思います。
 加山雄三の曲はちょうど私自身のキーと声質に合っていたため、若い頃からカラオケでそしてお風呂でそれこそ無数と言えるくらい歌い続けてきました。それは仕事やなんやかやのもやもやをいつも吹き飛ばして、すごく気持ちよい爽やかな素直な心を呼び覚ましてきてくれました。聴くのもよいですが、唄うのもまた一層格別です。
 加山雄三の曲の中心をなすのは、メロディーはもちろんですが、やはり岩谷時子の詞であろうと思います。私は越路吹雪も大好きですが、詞の力というのはもう本当に心の奥まで届く届かないの大きなファクターです。岩谷時子へは加山雄三がお願いして作ってもらうことが多かったみたいですが、越路吹雪を愛していたように岩谷時子は加山雄三が可愛かったに違いないと思います。でないとあんな素晴らしい詞は書けないだろうと思います。
 最近気付いたことですが、加山雄三の楽曲は、やはり昭和51年のこの「ぼくの妹に」から明らかにぐっと胸に来る曲が続きます。つまりミュージシャン加山雄三、弾厚作にとって画期となった曲と見ることができるようです。「海 その愛」、「光進丸」、「湯沢旅情」、「愛する時は今」等々忘れがたい曲が「ぼくの妹に」の後に続いて作られています。これは、加山雄三の経歴から推して、膨大な借金返済に追われた苦労をやっと終えた頃というのがちょうど昭和51年くらいと重なっているのと不可分ではないでしょうか。 

 やはり人間はその人生のすべてが、傾注するその仕事の中に顕れ、深い経験を経て出てきたものにこそ、ヒトの胸を揺さぶる力強いなにかがあるものだと思わせられます。

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