「円安について/4月以来論じてきたここと」
本年2022年4/13以来円安について論じてきたことを掲載します。
1)円安
円安に関する議論が喧しい。これらの議論を見ていて国内に覆われている”弱気の虫”の存在は存外に根が深いと思う。これは一つには中共やロシア方面から吹く風に靡くマスメディアに原因があると言える。
しかしそれにしても政府までが弱気過ぎないか。もし円安が危機だとしても、私のように還暦にもなり幾ばくかの人生経験を経たもの皆が持っている感覚として”危機”というのはチャンスそのものである、との鉄案から導き出して今後の糧としてもらいたいと思う。そうでなくとも円安そのものは国内の投資環境を好転させる大きなファクターであるのに、この惨憺たる論壇のありさまは何だろうと思う。このチャンスを活かせば必ず日本は復活する。マクロな国際環境はこの上なくよろしい。安全保障を基軸に自助、自存の哲学を貫きさえすれば未来は必ずや拓けるであろうことは間違いない。
こういう世情や世論形成に関して、私自身はもう10歳ほど年上の世代、つまり団塊の世代には全く期待していない。我々より下の世代、特に40代より下の若い世代に大いに期待している。有意の若人も出て来ている。最近知った論客として、白川司氏などは非常にシャープな論説を展開していると思う。
円安はチャンスである。左翼が展開する脱カーボン、ポリティカルコレクトネスや過度のSDGsなどに惑わされない、国益を軸にした中身のしっかりした積極策を展開しよう!民間有志よ、企業よ、政府などに頼らず自らの力で未来を切り開け!!
2)再び円安について
飽きもせず、為替に関してトレイダーや日経関係の記者がしたり顔で日米の金利差による円安基調を日々の紙面を空しく賑わせている。そして日本の景気や物価に与える悪影響をさも不幸そうに将来不安を煽っているかのようだ。確かに当面日銀は金利を上げることはなく、FRBは将来に向けて利上げの意志を明確にしてはいる。しかし、そんなことは昨年秋口からわかっていたことでその時からもし少しでも円高なら裏を返したように将来不安を煽るような記事を書くのだろうと思う。
現今、ウクライナの関係で、というより昨年4Qあたりからであるが、原油値上がりしており、基幹物資に相当する原油であるから日本の経常収支に与える影響に鑑みて、円の実需が細るということはあるのだろうとは思う。ただこのような情勢判断は容易に逆回転し得るもので、例えば金利を言うなら実質金利を見たとき、アメリカの物価上昇に対する金利を見たときその実質金利は大幅なマイナスであり、それに比べて日本は未だデフレであり実質金利はプラスである、ということを見たとき、円高に振れても何ら可笑しくはないと言える。そんなことより、日本にとって円高が良いか、円安が良いか、と言われれば現段階でも円安の方がいいに決まっている。
これまでバブル崩壊以来三十年、円高により雇用が外部流出したことが決定的要因となって日本の景気を冷やし続けてきたのであり、この数年の米中冷戦によってまたホン近々ではウクライナ戦争によって、重要物資、基幹物資あるいは戦略技術に関して安全保障経済法なる立法処置まで成立し、なおさら経済界の国内投資が有利な状況が生まれている中、どうして円安が悪者視されるのか、少なくともメディアの中で一方的円安悪玉論が展開されていることは全く理解に苦しむ。国民はなぜメディアや政府に対しこの状況を唯々諾々と黙っているのであろう、それこそ「これをチャンスとし、国内投資を活性化する政策の議論を活性化せよ、そして賃金を抜本的に向上せよ」等々もっともっと声を上げるべきではないか。
私は、この円安は断然チャンスであると思う。個々の産業、企業そして上は政府、経産省、厚労省、与党並びに心ある野党はこのチャンスを生かし日本産業の再生へと導いてほしい。その手段は仄聞するところ自民党の政策案の中に十分存在している。
繰り返すが今最も大事なことは、このウクライナを機会と捉え、水を漏らさぬ安全保障体制の構築を行い、合わせて日本産業の再構築へと導く施策をダイナミックに打っていくこと、これに尽きると思う。
3)三たび円安について
4/28(木)午後の日銀黒田総裁の記者会見を聴いた。急激な為替変動に関してはこれまで通り好ましくなく注視していく、円安に関して全体としてプラスという考えを変えたわけではない、等の発言を受けた市場の反応だろうか、20年ぶりの円安1ドル130円台をつけた。
財務大臣のうろたえぶりから見て、黒田総裁の落ち着いた態度は非常に好感が持てた。
そうなのだ、私の言いたいことも円安、現段階で全体として日本経済にとってプラス、資源輸入国として物価が上がれば、国内投資をして上がった物価に見合うモノやサービスを創り、国内需要、海外需要に応じていく。これを賃金の上昇と共に実現していく、消費も増えていく。その過程では当然企業は利益を得てそれをさらに投資して生産性を上げ、売り上げを上げていくというサイクルを回していく。この循環を創ることが経済成長であり、国民全体が豊かになっていくのである。
それをこれまでは、バブル崩壊この方、低賃金アジア諸国へ生産を移転して、ただ低賃金をいいことに帳簿上の利益だけをむさぼっていたということなのだ。極端な言い方かもしれないが、富を流出していたことは間違いのない事だ。
このような理解であるからこそ、黒田総裁は「円安は全体としてプラス変わらず」と言ったのである。企業、政府はこの機会こそ逃さず、富の創生に歯車を回していかなければならない。国民においても個人個人がこれまでと違う一層の努力をしていく必要があると思う。
4月の株式相場でどうのこうの、ということではないが、そのエネルギーがプラスに向かっている一現象として今日の相場上昇があるということであり、戦時下で予断はもちろん許さないのであるが、中長期的に日本株は買いという私の見解は変わらない。
4)四たび円安について
5/29〈日)産経新聞5面「日曜経済講座」で、「円安に甘え弱まった日本経済力/”安いニッポン”の犯人は日銀か」という記事に同感だ。
記事の中身的には、金融、金利情勢上日銀の政策が変わらない限り円安は当然だが、現今の円安は、経済界は「過去の円高で生産拠点を国内から海外に移しており、輸出によるメリットは昔ほどない。むしろ輸入資源の高騰などで日本経済にはダメージがある」(川崎重工金花芳則会長)と不安の声がある、もっともリーマン後そして大震災後円高になったときは円安と騒いだのは他ならぬ経済界で、その後円安になったが成長投資も成長戦略もそして賃上げすら無く円安による利益だけをただ貪ったではないか、ということを書いている。
まさに同感とする所以である。
ここにわざわざ記事としても、本欄としても川崎重工業の金花会長の名前を具体的に引用したのは意識的である。もちろん愚かな経営者だったのは彼だけではないが、当然責めを負うべき立場の人であるからだ。
これまでも再々に渡って論じてきているが、経済界は、すなわち経営トップ層のことをもちろん名指ししているつもりだが、もうそろそろ小手先の、保身のみを考えた数字づくりに決別し、本当に社員と一体となって成長戦略を実施すべきである。その実行に、この円安状況はまたとないチャンスであるというのはこれまでも本欄で繰り返し述べてきた。国内投資と賃上げとを両輪に各社の特色ある成長戦略をビジョンアップし、従業員に呼びかけ、共に必死になって実行していく、これこそが今経営トップに求められるものである。
経営トップという立場は、成功報酬ではなく、将来への重い責任なのである。