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『ローマ人の物語Ⅲ 勝者の混迷』/帝国の盛衰の歴史、現代と変わらず

三次にわたるカルタゴとのポエニ戦役に完全勝利し、地中海の覇者となったローマに混迷が訪れる。

ハンニバルとの闘い、強者カルタゴとの闘いにはローマが全力を振り絞って戦い抜き、勝利したものでその後の混迷はある意味必然と言えるものがある。
日本の歴史で匹敵するものととしては、日露戦後の状況に似ていると言えるのではないか。

一方でこのローマ帝国(まだ歴史上普通には帝国となっていない)の混迷は、大英帝国、米帝国のそれを重ねて重厚に思い浮かべられるほどに類似性がある。特に米国の現代史、あるいは21世紀の歴史との親和性は非常に高い気がしながら読んだ。

『ローマン人の物語Ⅲ 勝者の混迷』はちょうどそういうときのローマを描いている。

グラックス兄弟、いつも志ある見通しの利き、先手戦略を実行するものには必ず守旧勢力による徹底的な抵抗に会うものである。しかしその改革は次の世代には実施され定着する。見通しの利く先行者の悲劇であろう。

そして権力志向のマリウス、スッラによってそれらが実現されていったのだが、彼らもまた先の見通しを持っていなかったことが明らかになる。
それゆえ混迷が深くローマを襲う。

その混迷の中でも、若い帝国ローマの力はイナーシャをもって域内域外へと勢力を広げていく。

そうした中で、次の時代を構築する人物たちがいよいよ登場し始める。
ポンペイウス、クラッスス、カエサル。
このⅢでは、ポンペイウスの絶頂までが描かれる。

次なるローマにはいよいよ英雄カエサルが登場する。


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