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「BSテレ東 『男はつらいよ』第十一作『寅次郎忘れな草』」

何回見ても(おそらく20回以上見ていると思います)、この十一作はいい映画です。
6/17(土)夜飲み会だったので、妻に録画してもらい、18(日)に繰り返して見ました。

六作品あるマドンナ=リリーのデビュー作

浅丘ルリ子演じるリリーがマドンナとなる作品は、この第十一作、第十五作、第二十五作、第四十八作、第二十五作のリメイク版である第四十九作、第五十作の六作品有ります。

その中でも、とりわけ浅丘ルリ子演じるリリーのキャラクターが痛切な哀調を帯びて登場するのが本第十一作「寅次郎忘れな草」です。

これはリリーは売れないレコード歌手からキャバレーまわりのクラブ歌手となった、いわば寅と同じ世界、アウトローに住む人間だからという設定もありますが、わたしはむしろ近代を個人として個性を活かして生きていかなければならない独立不羈の普遍的な人間像をこの設定に落とし込んだところに妙味があると思っています。
難しいことを言っているように聞こえるかもしれませんが、そうではなく、我々一人一人も人生という厳しい近代社会を一人で生きていかなければならない、というリリーと全く同じつらさ、苦しみ、哀しさまた喜びを味わっているのだということです。

そういう人生の哀しさがリリーというキャラクターを通して、第十一作寅次郎忘れな草に一筋に流れています。
そしてそういう中だからこそ、人間は恋をしないではいられないという悲しさと喜びもこの作品では表現されています。

それは、次作(第十五作)、次次作(第二十五作)につながる予兆でもありました。

”とらや”を去るリリーの涙

この寅次郎忘れな草も他のリリー作品と同じく名場面の連続ですが、
ただ一つ場面を挙げろ、いやもうこの場面のためにそれまでの名場面が有ったのだという飛び切りの名場面が、
最終盤の、自分にたかる母に金策を施し絶望してキャバレーの舞台に立ったリリーが客に侮辱され飲まずにいられず酔いどれて夜中の”とらや”に帰って来て寅さんにカラむシーンです。

そして、
「寅さん何にも聞いてくれないじゃないか、嫌いだよ」
と言って”とらや”を去っていきます

大きな目にいっぱい涙をためて、女性の、人間の悲しさをこれほどまでに胸迫る演技で表現したものを私は見たことが有りません。

浅丘ルリ子は真に名女優です。

またしても、今回も胸打たれ鋭いものが突き上げ目に液体が溢れました。


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