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「年末12/20の黒坂宗久さんの記事」について/化学と薬学関係に関して、ニーズとシーズに関して

黒坂宗久さんについては、本ブログでたびたび推奨しています。創薬関係の研究者で、現在はデータコンサルタントとして、主に製薬企業に対して戦略策定や事業性評価に必要なビジネス分析を提供されている非常に有意の方です。そしてこのnoteでも種々発信活動をされています。

また、同様に創薬関係の情報元として、創薬業界で働く人のメディアとしてそれ以外の業界の私のようなに技術者にとっても有益な情報を発信しているサイトである、AnswerNewsについても紹介しました。

今回取り上げるのは、このAnswerNewsに黒坂宗久さんが最近出されたコラム記事についてです。

昨年の12/20に出た記事で出た時から、このnoteでコメントしたいと思ってなかなか手がつかず今日1/22になって漸く書いていることになります。
12/20に出た黒坂さんの記事は以下になります。

なかなか面白い記事ですのでご興味のある方は是非ご一読いただけるとよいと思います。

今日、私のこのブログで取り上げたいと思うのは、二点です。
1)一つは、黒坂さんのコラムで昨年のニュースで最上位一番に掲げられた、「IBMがヘルスケアの分野でのワトソン事業を断念したという昨年初めに起きたこと」についてです。
2)二つ目は、ニュース順位四位にランクされている、
ブロックバスター、買うかつくるか。過去20年のブロックバスターの3分の2は大手15社の製品で、自社品が増加しているのを見ると大手の内部研究力が向上していることが示唆される」という記事についてです。

まず先に2)について述べてみたいと思います。

◎「ブロックバスター、買うかつくるか。過去20年のブロックバスターの3分の2は大手15社の製品で、自社品が増加しているのを見ると大手の内部研究力が向上していることが示唆される」

ここ20年のブロックバスターの三分の二は大手15社の製品で、自社品が増加しているを見ると大手の内部研究力が向上していることが示唆される、というものですが、これは、ベンチャーこそがこれから新薬を創出するリソースに他ならないのだとの過度の行き過ぎたマインドや投機スジの動きにそもそも違和感を感じていたものとして素直に嬉しい動きなのではないかと思っています。
大手の創薬企業もきちっとマネジメントすればよいものを出せるのだというトレンドが出て来ていることはあるのだろうと思い、今後の日本法人にも期待したいと思っています。
また、そのことが事実とするならば、どういうことがそうさせたのか、の分析もされると他業界にも蔓延るある種の偏見を払拭できるのではないかと期待しています。

次に1)についてですが、

◎「IBMがヘルスケアの分野でのワトソン事業を断念したという昨年初めに起きたこと」

IBMのワトソンについては、私の会社でもマテリアルインフォマティクス、MIの推進をある経営上位層が飛びついて、わたしの知人もIBMとの連携タスクに取り組み、その内容を聞いていました。
さも、わけのわからない経営層が飛びつきそうなネタです。
もちろん、わたしはMIが役する開発のツールとしての意味合いを否定するものではありません。開発効率を上げることに意味は大いにあると思います。これまで、カンコツ経験にしか頼れなかったマテリアルの開発を開発下層でその加速のために利用することは今後不可避になってくるのは間違いありません。
しかし、一方でなんでもかんでも特にクリエイティビティ―の必要とされる創造領域の技術開発に関してもMIを使って効率化してやろう、というのは馬鹿げていると思います。

このニュースはそのことが図らずも検証されたのではないかとの印象を持ちました。
当たり前ですが、最先端のMIがあるからと言ってIBMが創薬を出来るわけではないのです。
第一にシーズを知悉している人間の発想があって初めて創造が始まるわけです。材料科学の実際を知らないIBMのワトソンが勝手に求めるブレイクスルーを自然に出してくることなどあり得るはずがないのです。

得体のしれないニーズ指向とシーズ回帰について

誤解を恐れずに言えば、この二、三十年言われてきたニーズ優先と言うのもシーズなしに製品が差別化できて利益を挙げれるような誤解を与えてきたことだと思います。

IBMとロッシュが組めばいい薬が開発できるかもしれませんが、IBMがワトソンでヘルスケアを牛耳ることなどできるわけがないのです。

わたしは、そういう意味でこれまで各企業が時代の流れに流されて、シーズ技術に対する認識を劣位に置いてきたツケが回ってくると思います。
逆にシーズ技術を大切にしてきた会社にチャンスが巡ってきやすい状況が生まれるのではないかと思っています。
その非常に良い例が中外製薬です。かれらは度重なるR&D説明会で、中外の強みはそのシーズ技術ですと言っています。シーズからニーズを捉えてブロックバスターを作ってきたと言えます。

インフレ経済へのパラダイム転換がシーズ指向に変える

このことについて、もう一つの視点を加えて、本稿を閉じたいと思います。
今後シーズ技術が相対的に重要になってくるのは、デフレ経済からインフレ経済への世界的パラダイム転換がそうさせるだろうからです。
このことを十分語る紙幅がありませんので簡単に述べますが、インフレ経済下ではこれ迄30年続いたデフレ経済下と違い、新技術による差別化無くして企業の発展は望めないからです。


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