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「創薬における旧モダリティの低分子医薬について」/オワコン?、復権?

いつも紹介している、AnswersNewsのコラムに私の敬愛する黒坂宗久さんが、創薬の分野で旧モダリティ―になった低分子医薬の将来性を議論しています。

化学にとって、とても有益な議論なのでここで紹介しておくとともにつたない私の見解も少し述べてみたいと思います。

黒坂さんの記事/低分子は決してオワコンではない

黒坂宗久さんのコラム記事「「低分子の底力」について講演したあと、参加者と話して感じたこと|コラム:現場的にどうでしょう」
は以下になります。

この中で、Evaluateという黒坂さんお勤めの調査会社の資料を用いて、2028年までの予想でも、低分子医薬品の売り上げは伸び続け、全医薬品中のシェアも5割をキープすると示しています。
これは、昨年2022年2月の黒坂さんの過去コラム「低分子はまだまだオワコンではないと言える理由|コラム:現場的にどうでしょう」においても2026年の医薬全体の市場が伸びていく中でその売り上げの五割以上を低分子医薬品が占めるという予想と軌を一にしています。つまりその2年後の2028年においても低分子医薬は重要な位置を占め続けるとしているということです。

近々のコラム「「低分子の底力」について講演したあと、参加者と話して感じたこと|コラム:現場的にどうでしょう」では、ProductDeal(製品申請ということでしょうか?)を2012年から2022年で徐々に全体の割合は減少している風ではありますが、50%以上をキープしていることは低分子医薬の力を業界が証明しているように見えます。

低分子医薬の今後

さらに黒坂さんは、
近々のコラム「「低分子の底力」について講演したあと、参加者と話して感じたこと|コラム:現場的にどうでしょう」で、
「核酸医薬(バイオジェンのスピンラザ)、遺伝子治療(ノバルティスのゾルゲンスマ)、低分子医薬品(ロシュのエブリスディ)が三つ巴の競争を繰り広げている脊髄性筋萎縮症治療薬の市場では、低分子に軍配が上がりそうだという予想もお話させていただきました。この話題は特に皆さんの興味を引いたようで、低分子の可能性を信じつつも一方ではその将来に不安も覚えていることが肌で感じられました。」
という事実を上げています。
また、過去コラム「低分子はまだまだオワコンではないと言える理由|コラム:現場的にどうでしょう」では、
「脊髄性筋萎縮症では核酸医薬や遺伝子治療が先行したものの、そこに最近、SMN2遺伝子のスプライシングを調整することで意味のあるSMNタンパク質を作らせる低分子薬が登場しました。利用方法は高度化しているとは思うものの、まだまだ低分子の利用範囲は広いと思っています。」
ということも述べておられます。

低分子医薬の技術的側面から(調査予定)

私の技術者としてのオリジンは有機化学です。その有機化学の側面から言わせていただくと、
そもそも有機化学ベースの物質世界の広がりの特徴は、三次元的に見た時、その数学的広がりの無限性にあります。また、機能面から見た時、複合化をはじめとした手法論による多様性にあると言えます。

また、昨今の、バイオ医薬の登場によって却って生命現象の理解が加速し、その明確化したメカニズムによってフィードバックを受けた医薬開発手段の活性化こそ、低分子医薬のリバイバルを勢い付けているところがあると、わたしは踏んでいます。
これについては、今後近いうちにさらに具体的に調査を行い、可能ならばこの場で紹介できればと思っています。

また、中分子医薬開発の活性化というものが、低分子医薬のレベルをあげていくことになるだろうとも推察されます。
これは、中分子の代表格のペプチドが、細胞内ターゲットに向けての医薬であり低分子と同様の経路で作用し得るモダリティであることから、間違いなく低分子医薬開発を活性化するだろうと考えられるからです。

以上上げたように、いくつかのエビデンスらしきものがありますので、今後の低分子医薬の市場における再活性化というものも十分期待できるのではないか、と思っています。

今後、このようなことに関して、技術的な解説なども本コラムで記していけたらと思っております。よろしくお願いいたします。





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